人々のもつ樹木葬のイメージを大切に美しい花々を介したコミュニケーションと集客を同時に実現する

樹木葬の人気の高まりから、都内でも樹木葬の競争が激化している。都心に住む人々が求めている樹木葬とはどのようなものか、選ばれる樹木葬を作るにはどうしたらよいのか。多様化する価値観を見定めながら、そのヒントについて考える。

消費者傾向

はじめて樹木葬が過半数を超える鎌倉新書が2023年1月に実施した「第14回お墓の消費者全国実態調査(2023年)」によると、購入したお墓の種類が何かという問いに対し、樹木葬と答えた人が51.8%と過半数を超えた。また、納骨堂も一般墓を上回り、一般墓の購入者はついに全体の20%以下という結果になった。2020年に樹木葬が一般墓の購入を上回って以来、樹木葬や納骨堂のような新しい埋葬へのニーズは高まる一方である。
樹木葬や納骨堂といった新しいスタイルのお墓は、特に核家族が多い大都市圏では人気で、都内では納骨堂、樹木葬ともに増加傾向だ。一般墓だけだった寺院も拡張工事を行って、樹木葬や永代供養墓などを新設するところが多い。宗教宗派は不問、跡取りの必要もなく、檀家制度にも縛られない、誰でも入れる樹木葬や永代供養墓は今後も増えていくだろう。
樹木葬の平均購入金額は70万円前後で推移していて、一般墓と納骨堂と比べても、そこまで大きな金額的な違いはない。樹木葬がここまで人気なのは価格面のメリットよりも、ここ数年、樹木葬のメディア露出が増えて、一般に認知が広がったことが大きい。しかし、一言で樹木葬といっても、その形態は非常に多岐にわたっている。樹木葬というイメージが先行していて、何をもって樹木葬かという定義は曖昧だ。文字通りシンボルツリーの元に墓所を作るものもあれば、芝生の上に墓石や墓石プレートを建てるものもある。
令和4年度第1回インターネット都政モニターアンケート結果によると、お墓に対して重視している点について聞いたところ、「維持管理の経費と手間」(66.6%)が7割近くで最も高く、以下、「お墓に行くまでの距離や交通の利便性」(53.2%)、「お墓の費用(墓石、墓地代)」(36.0%)などと続いている。このアンケートによると自宅からお墓までの平均所要時間は約29分。都心に住んでいれば、自宅から電車で30分以内の霊園を探すと、かなり多くの霊園が候補になる。場所に限定されないので、都内の人々は自分たちの好きな霊園を数多くの選択肢から決めることができる。
都心に住む人々が複数の樹木葬を検索して、いくつも樹木葬を見学に行って、その中から決める場合、選ばれる樹木葬とはどのようなものだろうか。ガーデニング樹木葬の第一人者として、ココ・プランニングが展開している、誰もが笑顔になれる「笑みの樹」を訪れた。

開発実績

日本初のガーデニング樹木葬をプロデュース

都会に生きる人たちにとって、暗い墓地や屋内ではなく、木々や自然に囲まれた空間で眠りたいという想いは非常に強いと思われる。同じ永代供養、管理不要を特徴にしている納骨堂よりも樹木葬のほうが人気があるのは、樹木葬の「自然の中に眠る」というイメージが大きい。しかし、既存の霊園に新しく樹木葬エリアを新設するとなると、面積についてはかなり限定されてしまう。各寺院の事情や住職の考えなどを考慮しながら、試行錯誤して作られる。このような限られた環境の中で、樹木葬の先行した「自然の中に眠る」というイメージをいかに満足させられる樹木葬を作るか、そしてそれをどう販売するかが重要なポイントになる。

「自然豊かな環境」をいかにプロデュースするか、どう人を集めるか。ここに長年のノウハウをもっているのが株式会社ココ・プランニングだ。もともとガーデニング樹木葬を日本ではじめて手がけたのがココ・プランニングの創立者であり、現会長である中本隆久氏だ。中本会長は視察で訪れたスイスで、花が咲き乱れる美しい霊園に衝撃をうけ、日本の暗いお墓のイメージを変えたいという想いで、1995年に日本初のバラが咲くガーデニング樹木葬を千葉県佐倉市に開園した。それ以降ココ・プランニングは日本各地で、ガーデニング樹木葬を数多くプロデュースしてきた。最近では日本だけではなく中国でも上海、長春、合肥、寧波の4か所の霊苑をプロデュースして、非常に好調な販売を続けている。
特に最近ココ・プランニングが関わった霊苑には「笑みの樹」という共通の名称をつけている。「私たちは樹木葬を通じて『誰もが笑顔になれる霊苑』作りを目指しています。『笑みの樹』という名称はその想いから生まれた言葉です。もちろんそれまでの霊苑についてもコンセプトは変わりません」とココ・プランニングの中本大資社長は説明する。霊園デザインは庭園デザイナーの宮﨑邦英氏と甥である宮﨑裕暉氏の2名が担当している。基本設計は宮﨑邦英氏が行い、CADなどでの製図化を宮﨑裕暉氏がメインで行っている。最近は案件ごとにそれぞれが一貫してデザインするようになっているが、ココ・プランニングとしてのデザインコンセプトの実現に変わりはない。
東京都にあるココ・プランニングの霊苑は「秋川渓谷樹木草縁墓笑みの樹」「町田樹木葬笑みの樹」「板橋樹木葬笑みの樹」と港区「瑠璃光寺ふれあいの碑」だ。「町田樹木葬笑みの樹」はバラと桜のハーモニーが美しいデザインになっている。昔からあるお寺の枝垂れ桜と里山の風景をいかしながら、新しくバラに囲まれた樹木葬エリアを新設した。もともと妙福寺のお寺の境内の雰囲気に惹かれてたくさんの人が集まってくる場所。そこに樹木葬を作ることで、自然な集客が実現している。一般墓にお参りに来た人、桜を見にお寺を訪れた人が、入り口から見える場所にバラの花が咲き乱れるエリアがあるので、足を止める。
「板橋樹木葬笑みの樹」は大通りから少し奥まった通り沿いだが、入り口にバラのアーチをつくり、エントランスに花を植えてから、霊苑の前を通る通行人が増えたという。今まで通る必要がなかった人たちが、ウォーキングや犬の散歩のルートを変えてやってくるようになった。また、「板橋樹木葬笑みの樹」は樹木葬から墓石を完全になくすという新しい取り組みを行っている。本来「樹木葬」とは成長する樹木に対して、故人への想いをつなぐというのが原形にある。樹木葬本来の意味を考えて、完全に石をなくして樹木へのシフトを意識している。「墓石を置かない樹木葬という取り組みは非常に前衛的だと思います。見学にいらした方も驚かれますし、どうしても石が欲しくなります。でもその固定概念を乗り越えて、樹木葬の本質を理解してご購入いただいています」。(営業部大川正範氏)

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 6月号に掲載されています

掲載記事

お墓
2023.06.20