株式会社ウッド 代表取締役会長 臼井一政氏  「本物を作る。偽物は絶対だめ」が根本理念

株式会社ウッド

代表取締役会長 臼井 一政氏

霊園開発で首都圏NO.1の会社に成長させた株式会社ウッドの臼井一政会長に、弊社の代表取締役社長COOの小林史生が霊園開発の現状と展望についてお話を聞きました。今回のトップインタビューでは、同社の基幹霊園でもある「メモリアルフォレスト多摩」と「日本庭園陵墓 紅葉亭」を中心に開発の経緯等について熱い思いを語っていただきました。

不動産の開発会社が20数年前に霊園開発に。「本物を作る。偽物は絶対だめ」が根本理念、普段は見えないバックヤードもきれいにする。

20数年棚上げ状態の土地の許認可をわずか4カ月で取得

小林:本日は株式会社ウッド様が開発を手がけられた「メモリアルフォレスト多摩」にお邪魔しています。こちらと「紅葉亭」は、御社開発の霊園の中でも非常に人気がありますね。

臼井:ありがとうございます。

小林:臼井会長は、これまで多くの霊園を開発されていますが、霊園を作ると決められたきっかけ、経緯を教えていただけますでしょうか。

臼井:弊社が霊園開発に携わるようになり20数年が経ちました。もともとは不動産の開発会社でして、そちらでは45年くらいの歴史があります。
24〜25年前に、ある方から「この土地に霊園を作りたいのだが、なかなか許認可がとれない。手伝っていただけないか」というお話がありました。詳しく伺うと、もう20数年もの間、許認可がとれずに開発が棚上げになっているということで、「それでは、許認可をとるお手伝いをしましょう」と引き受けることになりました。
そもそも、なぜ許認可がとれなかったのかといいますと、道路が狭かったためで、道路を拡張するには地主さんから土地を売っていただく必要がありました。しかし、その地主さんには20数年にわたって断り続けられている、という状況だったのです。
そこで、私が直接その地主さんのもとへ伺いましてお話をしました。そうしましたら、「臼井さんというのは、こういうところに住んでいて、こういう人ですか」と、その地主さんから聞かれたのです。私は、なぜ私のことを知っているのかと不思議に思いながら「その通りです」とお返事しました。すると、地主さんは二つ返事で「いいよ。土地を売ってあげるよ」とおっしゃってくださったのです。
実は、地主さんの甥御さんが偶然、私の経営する別会社の社員だったのです。彼は勤勉な人物だったのですが、しょっちゅう自分のおじさんの家へ行き、「こういう人にかわいがられている」という話をしていたらしいのですね。その私が伺ったものですから、地主さんは「そういう人にだったら売ってもいい」と考えてくださったのです。この「人との繋がり」が、霊園開発に入るきっかけでした。

小林:許認可を得たのは、会長がかかわってからどれくらい経ってのことだったのですか?

臼井:私が受けてから、4ヵ月で許認可をとることができました。

小林:あっという間ですね。
このお話からは、普段の会長の行いといいますか、そういったものが巡り巡って…というところがあるかもしれないと感じました。会長は、ご縁ですとかそういった部分をすごく大切にされているのでしょうか。

臼井:こういう仕事をしていますから、特にそうですけれども、やはり人というのは縁が大切だと感じますね。

いつも社員には「本物を作る。偽物はだめ」と言っています

小林:そうして参入された霊園開発ですが、開発のコンセプトですとか、会長が大切にされていることには、どういうことがありますか。

臼井:いつも社員に言っていることは、「本物を作る。偽物は絶対にだめ」ということです。考え方としましては「お天道様が見てるよ」というところで、そこに私の根本的な考え方があります。
それから、「バックヤードをきれいにする」というものもあります。バックヤードというのは、お客様が来ないところですね。そこを徹底的にきれいにする、というのがひとつの考え方です。
それから、トイレはとくにきれいにします。というのはですね、お墓を買っていただいたお客様がお墓参りのとき以外にも、たとえば近所まできたからトイレを借りようですとか、そういった状況があると思います。そうしたときのためにも、トイレを徹底的にきれいにする。と、そのような考え方を持っているわけです。

小林:見えているところだけではなく、見えないところも含めてすべてを、いつだれが見ても大丈夫なように整えておくということですね。

本物を作るにはその道の職人・プロに手伝ってもらう

小林:冒頭で触れさせていただきましたが、「メモリアルフォレスト多摩」と「紅葉亭」についてお聞きしたいと思います。
まずは「メモリアルフォレスト多摩」。こちらは、弊社が運営しております「いいお墓」でも大人気で、お客様からのお問い合わせが絶えません。その「メモリアルフォレスト多摩」に対する会長のこだわりや気配りは、どういったところがありますでしょうか。

臼井:こだわりは、先程も申し上げた通り、本物を作り上げるということです。そして、そのために本物の職人やプロに手伝ってもらう、というところでしょうか。
そのために、我々も勉強をしております。たとえば植栽関係には必ず植栽のプロがいらっしゃって、石組のプロもおられます。世の中には、そういうプロと呼ばれる方々がいらっしゃるわけです。その方たちに、我々素人が作り上げたものを「なんだこれは」と言われたくありませんからね。ですから勉強をしていく。そういう部分も、本物を作るということにつながっていくのではないでしょうか。
「メモリアルフォレスト多摩」には、滝があります。やはり石工も日本の最高の名工にたのんで作り出したのですけども、当初は落差5メートルくらいでいいかと考えていました。ところが、作っているうちに「もっと上まで持っていった方がいいかな」ということで、できあがったのがこの落差12メートルの滝です。
正直に申し上げて、予算は当初の倍かかっております。ですが、今となってはこれでよかったのだと思います。滝の水はポンプで下の池からあげているのですが、一般のお客様からは「上に川があるんですか?」と聞かれることもあります。そうしたお話を耳にすると、本物を作ることができたのだと感じます。

京の区から見た「メモリアルフォレスト多摩」の滝

「紅葉亭」は私の最後の霊園開発という思い

小林:もうひとつの「紅葉亭」ですが、こちらは小京都を思わせる佇まい、雰囲気ですけれども、こちらを作られる背景や思い、ストーリーをお聞かせください。

臼井:「紅葉亭」は、名称を「日本庭園陵墓 紅葉亭」といいます。
この霊園は、私の最後の開発霊園にしようかという思いがありました。ですから、「なんとか墓苑」というような名称ではなく、最後にふさわしいような名称にしようというのが、まずありました。
「紅葉亭」は、ある大手ゼネコンに工事をしていただいています。植栽については、日本に所在する外国大使館も手掛けている造園屋さんに依頼しましたが、納得できる構想が出ず、結局は自社にて設計施工いたしました。
「紅葉亭」は、名称の通り紅葉がたくさん植えてあります。あれらの紅葉は、神奈川県内を紅葉の時期に地図を持って訪ねて、紅葉が赤くなっているところを全部チェックした後、葉っぱがなくなった冬に、その持ち主である地主さんに交渉して買い集めたという経緯があります。

小林:そういった部分も、会長が直接交渉などのやり取りをされたのですか?

臼井:そうです。また、大きな紅葉が2株植えてあるのですが、その2株に関してはこちらの地域になかったものですから、茨城県から紅葉を買ってきて植えました。

小林:先ほどおっしゃっていましたが、コストがかかったりですとか、儲かるのかなという心配ですとか、どうしてもビジネス的な視点で考えがちな経営者が多いと思います。会長は、その辺りについてはいかがでしょうか。

臼井:こういう仕事をさせていただいていますから、ただ利益だけで運営していこうとは思いません。開発にしても、損しなければいいと考えています。我々の仕事というのは、最初にひとつ作り上げて、それでいいというものではありません。作ったあとは管理費だけで運営していくわけですから、いいかげんなものを作ってはいけないと考えています。
たとえば「紅葉亭」ですが、あそこの土塀は通常のものと違っています。地中梁といって、地面の中に梁を入れて、7~8メートル間隔で直径30~35センチのH鋼を10メートル地中まで基礎に埋め込んであります。そして、その上に躯体としてRCで塀の打ち込みをして作ったものです。
なぜそのようなことをしたかといいますと、仮に地震が起こって塀が倒れた場合、危険であることはもちろん、管理費だけではとうてい修理ができません。ですから、最初からきちんとしたものを作っていきたいということで、地面の中という見えないところもこだわって作り上げました。

紅葉亭を訪れる人を京都の趣を演出した最上のもてなしで出迎えてくれる

手を合わせるのにふさわしい霊園づくり、お墓づくり

小林:これからの業界についてお伺いします。消費者のお墓に対する意識や考え方は変わっていくと思いますが、会長はこれからのお墓の業界についてどのようにお考えでしょうか。

臼井:日本人の考え方が変わっていっても、いろいろなお墓の形があっても、コンパクトなお墓が好まれても、ご先祖様に手を合わせるという考え方は変わってはいかないのではないかと思います。
手を合わせる気持ちにふさわしいような、お盆やお彼岸といった時期だけではなくて、近くまできたからお墓に寄っていこうか、ちょっと休んでいこうかと思えるような、そういうお墓づくりがいいのではないかと考えます。

小林:最後になりますが、会長から今後の展望ですとか業界の皆様へ一言お願いいたします。

臼井:私どもは、霊園開発においては20数年前に出発した会社ですから、後発組です。皆様方が霊園開発をされてきた中での船出でありましたが、これからも「本物を作る」という姿勢を大切にしていく。そして、お墓を買っていただいたお客様に心から喜んでいただく。そういうお墓の作り方、管理の仕方をしていくことが大切であると考えております。

小林:本日は興味深いお話をありがとうございました。

月刊仏事 3月号に掲載されています

掲載記事

特集 お墓
2022.03.03