コロナ禍でも前年度比で施行件数40%増、単価11%増という驚異的な数字を実現

「小さなお葬式」ブランドで知られる(株)ユニクエストが2020年6月にM&Aをしたライフアンドデザイン・グループ(株)の業績が絶好調である。
2022年3月期連結決算の売上高は、前期比49%増の約130億円、経常利益は同145%増の約36億円を見込んでいる。専門葬儀社の中で、売上高は2位を追い抜きそうな勢いであり、経常利益額は堂々のトップに踊り出そうだ。
業績が絶好調な一番の要因は、売上高の約7割を占めるライフアンドデザイン・グループ西日本(株)の業績が良いことにある。同社の22年3月期決算の売上高は、前期比56%増の88億円に達する見込みで、その主な要因は、前期に比べ施行件数は40%増、単価も11%増と大幅にアップしていることだ。特に単価が2桁増というのは、コロナ禍でほとんどの葬儀社が単価ダウンを余儀なくされている中にあって、驚異的な数値と言えよう。
そこで、ライフアンドデザイン・グループの伊藤健COO専務取締役に、施行件数と単価の同時大幅アップを実現した秘策についてお聞きした。

ライフアンドデザイン・グループ株式会社(東京都中央区)

COO専務取締役 伊藤健氏

御社は、コロナ禍でもかなり好調と耳にしました。今日は、数値状況とその要因についてお聞きかせください。

伊藤:まず数値状況ですが、連結(グループ全体)の売上高は、前期(21年3月期)が約87億円であったのに対し、今期(22年3月期)は約130億円になる見込みです。

売上高は、専門葬儀社の中では前期に3位に上がり、今期は2位を追い抜きそうな勢いですね。

伊藤:そうですね。経常利益は、前期は約15億円であったのに対し、今期は35~36億円の見込みです。
専門葬儀社の中では、トップの決算報告書が出るまで分かりませんが、もしかしたら当社が1位になるのではないかと見ています。当社は専門葬儀社の中で、経常利益でトップになることも1つの目標にしてきましたので、その目標を達成できそうです。

まさに絶好調ですね。その主な要因についてお聞かせください。

伊藤:数字が一番伸びているのは、旧洛王セレモニーのライフアンドデザイン・グループ西日本(以下、西日本)です。今期130億円の売上のうち、西日本は88億円と約7割を占めており、全体の数値を牽引しているのも西日本です。なので、西日本の数字をベースにお話しした方が分かりやすいと思います。
西日本の施行件数は、前期は8,440件であったのに対し、今期は1万1,900件の見込みです。施行単価は、前期は67万円に対し、今期は74~75万円になりそうです。

前期に比べ、施行件数は40%増、単価は約11%増える見込みということですね。コロナ禍にも関わらず、まさに驚異的な数字ですね。

  • ライフアンドデザイン・グループ西日本株式会社 本社ビル(京都)
  • LDG西日本(本社)お客様サロン
  • LDG西日本(京都)直葬センター外観

施行件数アップ策
広告宣伝費を売上高の13%に増額

では、施行件数、単価それぞれについて、どのようにして驚異的な数字を叩き出したのかお聞かせください。まず、施行件数からお願いします。

伊藤:施行件数が増えた要因の1つは、葬祭ホールの新規出店です。ホール数は、前々期48ホール、前期67ホール、今期78ホールとなっています。新規出店数は前々期14ホール、前期19ホール、今期は11ホールです。
前期と今期の計30ホールの出店効果で、今期の施行件数が膨れ上がっています。

施行件数40%増のそのほかの要因は?

伊藤:広告宣伝費を今期から増やし、売上高の13%にしたことです。

葬儀社の広告宣伝費の平均は3~5%と言われていますから、2.6~4.3倍ですね。しかも、88億円の13%ということは、約11.5億円ですから、葬儀社としてはケタ違いに多いですね。それだけの広告宣伝費を何に投入されているのですか。

伊藤:1つはTVCMですが、それは次のような理由からです。洛王は、もともとは京都、滋賀の葬儀社だったのですが、それを大阪、兵庫に広げていっています。その理由は、関西のTVCMは府県単位ではなく準キー局単位になっており、関西準キー局は、京都、滋賀のほか、大阪、兵庫、奈良などまで流れているからです。私は、もともとTVCMが効果的だと思っていましたが、CMが流れるエリアに対し当社ホールの出店カバー率が低かったため、一昨年から大阪、兵庫の出店を加速させました。関西エリアで80店舗近い体制になりましたので、昨年7月からTVCMを流し始めました。これが非常に当たっています。

  • 関西エリアでOA中のTVCM
  • メディアミックス戦略でTVCMと同様のクリエイティブに(新聞広告・チラシ等)

ネット広告費を昨年12月から月6,000万円以上に

そのほか、広告宣伝費を投入しているのは何ですか。

伊藤:インターネット広告です。インターネット広告に関しては、私はこの業界に20年近く携わっていますが、本当の部分での成功パターンが分かったのが昨年です。ですから、インターネット広告は今、ものすごく強化しています。

単刀直入にお聞きしますが、本当の部分での成功パターンとは、どのようなことでしょうか。

伊藤:全てはお話しできませんが(笑)、1つは広告費を大量に投入するということです。西日本でのインターネットの広告費は、今までは月平均4,000万円程度かけていたのを、昨年12月からは6,000万円以上かけています。すると、施行件数は、昨年11月は960件だったものが、12月は1,150件、1月は1,320件位まで増加し、3月は1,400件を超えそうです。1件獲得コストが割高になり、一見効率的でないように見えるのですが、葬儀は利益率の高い商品なので投資対効果はすごく良くて、結果、利益は増えるのです。

でも、施行件数が増えれば、人件費やそのほかの経費も増えるのではないですか?

伊藤:そうならないような仕組みを先につくりました。それまで月1000件程度が限界だったのを、月1,300件を超えても回せるような仕組みを作ってから、広告費を大量投入したのです。仕組みというのは、仕事が増えても、寝台車や霊柩車を含めて外注せずに自社で回したり、件数が増えた際に、社内のオペレーション体制を変更させ、社員全員で動けるようにしたことなどです。この仕組みを2年がかりで作りましたですから、広告費を増やしても労務費や業務委託費などはそこまで膨れ上がらず、売上が増えた分の多くが利益にまわり、12月以降の単月の利益率は、非常に高くなっています。

受注率を落とさないトレーニングを実施

そのことが、今期、経常利益が大幅に増えた要因の1つになっているわけですね。そういう仕組みを作られる時に、難しいことは何ですか。

伊藤:広告を増やすと、当社に依頼することを決めきれていないお客さんからの電話も増えます。そのような入電数が増えると受注率は落ちます。そこで、受注率を落とさないようなトレーニングを継続的に行っています。

どのようなトレーニングですか。

伊藤:受注率が高いオペレーターの応対話法を洗い出し、その対応方法をオペレーターにトレーニングしています。そして、日々の受注率を可視化して、意識づけとトレーニングを継続し続けます。

そのほかに行っていることはありますか?

伊藤:受注率や受注件数だけでなく、広告費に対する入電数もリアルタイムで監視しています。入電数が少ないと、リスティング広告を増やすなどの調整をしています。毎日4時過ぎの朝のこの数値チェックが、私の日課です。

記事の全文は月刊仏事 5月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2022.05.24