伝統的商品の提供と、ライフスタイルの変化に応じた現代的な商品の開発・提案。双方のベストミックスを目指す神戸珠数店は、2023年秋の社内展示会の実績を踏まえ、さらなる発展のために歩み出した。新しい供養のあり方・新しい祈りのシーンにふさわしい数珠づくりについて、同社の神戸伸彰代表に語ってもらった。
商談の充実度を高めるために実施
1918年創業、京都府京都市下京区に本社を構える神戸珠数店の社内展示会は2023年で第12回を数えた。そのきっかけは、同社の神戸伸彰代表の“英断”であった。この展示会の開催期日は毎年、京都最大級のイベント会場「みやこめっせ」で開催される仏壇仏具振興会の見本市の期日と重なっている。来場者数は当然、その見本市に出展するほうが多くなるだろうが、1社に割り当てられるブースで見せられる品物の数には当然、限りがある。
「うちの強みは商品量の多さ、種類の豊富さです。それを印象づけるのなら、小さくても自社を会場にしてしまったほうがいいのではないか。そう考えたのです。それに、お客さんに自社へとお越しいただいたほうが、時間をかけてお話も密にできます」
大規模な見本市においてはあくまでもワン・オブ・ゼムの出展者となってしまうが、社内のショールームを使った小規模な展示会ならば、オンリーワン。神戸珠数店の商品に親しみを覚えている常連客にじっくり見てもらい、商談としてはより充実したものになる――そうした戦略のもと、社内展示会を始めたのだという。内容や展示方法はワンパターンにならないよう、毎回少しずつ変化と工夫を加えて実施。回数を重ねるごとに認知度が上がり、今では仏具業界に広く浸透している。こうした施策を行っている数珠店はほかになく、その意味でも「オンリーワン」といえそうだ。
持続可能な数珠への挑戦
2023年は、コロナ禍でダメージを受けた仏壇仏具店がそれぞれにテーマ性・ストーリー性のある数珠を揃えるといった傾向が見られたという。少しでも差別化を図り、売上ダウンをカバーしたいという意図があってのことだろう。
では、神戸珠数店はどうだったのか。神戸代表によれば、今回のテーマに掲げたのは「持続可能な数珠」。そこには、2つの意味を持たせたという。
ひとつは、“定番の持続”。数珠の定番材料はメノウ・水晶をはじめとする天然石だが、この1~2年、こうした材料の不足・高騰が続いており、今後も供給が不安定になると予測されている。しかし、エンドユーザーが求める小売価格帯は1万円前後。今までの定番商品をそのままその価格帯で売るのが難しいとなれば、新たな定番をつくり出す必要がある。
それが、材料費を抑えた再生アクリル、アイボリーシェルなどの数珠だ。これらは昨今の環境思想にも合致する新しい数珠であり、世界的なSDGsの広がりともリンクしている。そういう意味では、ジェンダーレスの数珠も、多様性と人権を尊重するSDGsにのっとった新製品といえるだろう。
「選ばれる企業」を目指して。SDGsに取り組む
SDGsに対する仏具業界の意識は、まだそれほど高いとはいえない。特に小規模な小売店の反応は鈍いという。しかし、京都・滋賀地域の認証機関から2022年、ソーシャル企業として認定され、「きょうとSDGsネットワーク」にも参画した神戸珠数店は、他社に先駆けてSDGsに取り組み、いち早く商品として提案していきたいという。
「SDGsは、大きな世界的ムーブメントになっています。それに取り組んでいるか、意識しているかということは、いずれユーザーに、そして社会に選ばれるための判断基準になるでしょう。ですから、今すぐに売れるかどうかはさておき、会社として、ひとつの商品カテゴリーとして今後も継続していきたいと考えています」