四十九日ではなく、“36500日(365日✕100年)ビジネス”へ。潜在需要を顕在化することで、成長産業へと変わる。

アルテマイスター 株式会社保志 代表取締役社長 保志康徳氏

 会津の地で仏壇・仏具・位牌をつくり続けて120年。メーカーであるアルテマイスターが小売店を持つ理由は顧客の生の声を聞くためであり、それは業界の未来に欠かせないことだという。保志氏は、業界がピークアウトしているからこそ、伸びしろの伸ばし方が重要だと語る。供養業界の社会的意義や、「PRAY for(ONE)」プロジェクトについて話を聞いた。
(聞き手:株式会社鎌倉新書 代表取締役社長COO 小林史生)

仏壇・仏具業界の現状とそこから見える課題とは?

「現代では供養をしなくなっている」は本当なのか? 現在の業界が抱える一番の課題

小林:コロナ禍を経て、仏壇・仏具業界の現状と課題について、どのようにお考えですか?

保志:厨子屋というアンテナショップをやることで、普段は業界に足を運ばないお客様の意見を聞くことができています。供養する気持ちがなくなったなどといわれますが、魅力がなくなったから気持ちが離れているのではないかと、謙虚に考えたらいいと思います。仏壇に魅力がないなら、次のものを作ればいい。変えていけばいいと思います。いつまでも既存の需要のなかでやるのではなく、そこから派生して潜在需要を顕在化していくことで、お客様にまた振り向いていただけると思っています。
 私も長いことこの業界にいますが、カルチャーショックがいくつもありました。例えば、販売時点でのお客様の情報をメーカー・問屋・販売店が共有できていません。メーカーは商品を販売店に購入していただいていますが、その先には共通のお客様がいます。その情報を共有できていないことが、業界の成長を妨げているいちばんの要因だと思います。

「心の豊かさ」の価値を訴求していく存在として

「内面価値」訴求のプラットフォーム。「PRAY for(ONE)」が目指すカルチャー

小林:さまざまな活動のなかで、「PRAY for(ONE)」というプロジェクトの立ち上げ経緯と、現在の活動内容とを教えてください。

保志:大阪万博にそのようなパビリオンができそうなところです。以前の万博ではモノとしての近代化を表現していましたが、心の部分はまだ追いついていませんでした。社会全体として不登校の学生やうつ病の社会人が増えている現状があります。これからは、設備的な部分ではなく、内面的な豊かさを高めていかねばならない時代に入っています。他の業界と比べて供養業界には、そういった部分に訴えかけるためのアドバンテージがあると思っています。この業界は、社会に向けて何を発信し、何を提供していくのかということを改めて考え、アップデートしていく必要があると思います。
 そうした時に共通のプラットフォームがあったほうがいいのではないかと考え、「PRAY for(ONE)」を立ち上げました。誰かの幸せを願ったり、誰かの笑顔のために活動したりすることに焦点を当て、『誰のために祈りますか? 活動したいですか?』というキャッチフレーズを使っています。

アルテマイスター 株式会社保志が描く成長戦略

ものづくりでも組織づくりでも既成概念にとらわれない形を目指して

小林:挑戦したいこと、これからのビジョンについて教えてください。

保志:悲観的にならずに、肯定的にものごとを考えることで思わぬ結果が生まれます。他責ではなく自責でやることを肯定的に考えることで、必ず道は開けると信じています。自社としては、企業文化を変えたいと思っています。世のため人のためだけでなく、社員の夢を叶えられる企業でありたいと考えています。弊社には夢を持っている社員が多くいます。「アルテマイスターに入社すると夢が叶う!」と、将来像を描きながら働くことは、企業の原動力にもなると思います。

小林:今回は本当にどうもありがとうございました。

月刊終活 9月号に掲載されています

掲載記事

仏壇
2023.09.25