施行件数は3年間で21%増加し、地域シェアは44%を超える

有限会社眞心堂(青森県むつ市)代表取締役社長 高屋龍一氏

有限会社眞心堂(青森県青森市)の売上高は、コロナ禍前の2019年4月期は3億8,100万円であったのに対し、3年後の22年4月期は3億9,400万円で3.4%増にとどまった。
しかし、件数シェアを重視し、遺族のニーズに応えることや葬儀の課題解決に積極的に取り組むことなどにより、ブランド力が向上し、地域での件数シェアはこの3年間で5.2%増えて44%を超え、地域断トツ一番店となっている。
そこで、施行件数アップ策を中心に、高屋龍一代表取締役社長に話をお聞きした。

有限会社眞心堂 代表取締役社長 高屋龍一氏

実績推移と基本方針:「会食売上は上げるつもりはない」

まず、眞心堂さんの売上高、施行件数、平均単価について、コロナ禍前とその後の状況をお聞かせ下さい。

高屋 当社は4月決算ですので、コロナ禍前は2019年4月期、その後は3年後の22年4月期の実績値でお話しします。
19年4月期は、売上高は3億8,100万円、施行件数は414件、平均単価は約90万円でした。
これに対し22年4月期は、売上高は3億9,000万円、施行件数は501件、平均単価は約75万円という結果でした。

つまり、3年間で、平均単価は約17%と減少したけれども、施行件数は21%増えたので、売上高は3.4%のプラスになったということですね。
施行件数と平均単価は、政策的にはどのように考えられているのでしょうか。

高屋 平均単価が減少した大きな要因は、会葬者が少なくなって会食売上が減少したことです。でも、私は、会食売上は上げるつもりがないというか、下がったままで良いと思っています。
というのは、こちらの地域では、近所の人たちや会社関係者などにも結婚式と同じように招待制で葬儀の案内を出し、会食しています。この風習がコロナ禍になって、招待するのが難しくなり、葬儀に参列するのは家族・親族だけというケースが増えました。
これが、コロナが収束すると元に戻るのかというと、皆さんが包んでくる参列費の相場は2万円なので、親しい人ならともかく、そうでもない人にはかなり負担となりますので、元には戻らないだろうと私は考えています。

そういうこともあって、施行件数アップに余計に力を入れられているわけですね。

高屋 そうです。当社は、5市町村からなる下北地方をエリアとしているのですが、2005年に創業して、16年には件数シェアでトップになりました。
下北地方で一番人口の多いむつ市の件数シェアは、22年4月には44%を超えました。

単価アップは目指さず、件数シェアが高い中でさらに件数を増やして売上高をアップさせているのは、文字通り健闘されていらっしゃいますね。
以下では、施行件数が増えた要因を中心に売上高がアップした要因についてお聞きします。

2018年12月に開設した「眞心堂はやかけホール」

施行件数21%増の要因:新型コロナ感染死亡者の葬儀を無償で行う

施行件数が3年間で21%増となった一番の要因は何でしょうか。

高屋 新型コロナウィルスで亡くなった方の、死亡届提出からお骨の引き渡しまでを無償で行ったことです。22年3月から10月まで7ヵ月間行いました。
行った意図の1つは、当時、コロナで亡くなった方の葬儀は断られたとか、法外な料金を請求されたということが全国的に問題となっており、無償にすることにより、ご遺族の不安を解消しようと思ったことです。
2つ目は、コロナで亡くなった方の尊厳を出来る限り守ったり、ご遺族のグリーフケアを行う葬儀社であるという姿勢を示したかったことです。
もう1つは、これは社内的なことですが、当社はソーシャルワーカー的なことを行う葬儀社であり、しっかりと地域に役立つ仕事を行っているということを社内で共有するためです。

どのような反響がありましたか。

高屋 地方紙でかなり大きく取り上げてくれましたし、行政の広報紙などにも載せてもらえました。
その結果、行政や病院、高齢者施設なども、コロナで亡くなった人の対応をどうやって進めていけばよいのか手探り状態でしたので、かなり問い合わせがありました。
それに対して、こういう風な段取りで、こういうタイミングでご遺族とお会いする形で進めるのが良いでしょうなどと、丁寧にご説明しましたので、とても喜んでいただけました。

無償で行ったのは何件あったのですか。

高屋 25件です。

それは多いですね。

高屋 下北地方で、コロナで亡くなった方の葬儀は、当社に依頼がくることが多いからです。多分、95%位は当社にきていると思います。

無償であっても、施行件数シェアは増えますよね。そのほか、どのような効果・成果がありましたか。

高屋 新聞などに取り上げられたことにより地域の人たちに対する知名度も上がりました。
また、高齢者施設からはコロナで亡くなった方以外の葬儀の紹介も増えました。
行政からもマニュアルをつくる時に呼ばれて、いろいろお話ししましたので、信頼関係を築くことが出来ました。その結果、葬祭協同組合としてではなく、当社単独で災害支援協定を締結させていただくことになりました。
当社のむつ市での施行件数シェアは、19年から22年までの3年間で5.2%増えたのですが、コロナで亡くなった方の葬儀の無償化がかなり効いたのだと思います。

「コロナ死 火葬まで無償」と報じた地元紙

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 9月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2023.09.12