施行件数は3年間で36%増と健闘。医療・介護関係との連携で紹介が大幅に増加。

株式会社いわさき(埼玉県入間市)

株式会社いわさき(埼玉県入間市)の売上高は、コロナ禍前の19年9月期は6億3,000万円であったのに対し、3年後の22年9月期は7億6,000万円で21%増加した。コロナ禍で苦戦している葬儀社が多い中にあって健闘している。施行件数と平均単価別では、施行件数は約36%増、平均単価は約11%減で、施行件数が大幅に増えている。
その主な要因は、医療・介護関係からの紹介・依頼件数が顕著に増えたことと、互助会会員からの依頼が年を追うごとに増えてきたことにある。この2つの要因を中心に、岩崎弘祐社長に話をお聞きした。

株式会社いわさき 代表取締役 岩崎弘祐氏

連携した医療・介護関係、互助会の会員からの依頼件数が増加

まず、御社の売上高、施行件数、平均単価について、コロナ禍前とコロナ禍後の状況をおしえて下さい。

岩崎:当社は9月決算ですので、コロナ禍前は2019年9月期、コロナ禍後は3年後の22年9月期の実績値でお話しします。
19年9月期は、売上高は6億3,000万円、施行件数は約700件、平均単価は90万円でした。これに対し22年9月期は、売上高は7億6,000万円、施行件数は約950件、平均単価は80万円となりました。

19年9月期に対し22年9月期までの3年間の増減率は、売上高は約21%増で、その内訳は施行件数が約36%増、平均単価は約11%減ですね。つまり、売上高が好調に増えたのは、施行件数が36%増と大幅に増えたからですね。では、施行件数が大幅に増えた主な要因は何でしょうか。

岩崎:主な要因は2つあります。1つは医療・介護関係への営業を非常に努力したことにより、その関係からの依頼件数が顕著に増えたことです。もう1つは、当社は18年前に互助会となったのですが、互助会の会員様からの施行依頼が年を追うごとに増えてきたことです。

本会館「シティホールいわさき」の外観

医療・介護関係の施行件数が増えた要因:葬儀の紹介ではなく連携関係を構築

施行件数が増えた1つ目の要因は、医療・介護関係からの施行依頼が顕著に増えたからとのことですが、まず、どのような医療・介護関係からどのくらいの依頼件数があるのでしょうか。

岩崎:私が医療・介護関係の営業に努力し始めたのは5年前位からです。紹介・依頼件数は、それ以前は20~30件でしたが、現在は950件のうちの約4分の1が医療・介護関係からの紹介・依頼になっています。
紹介・依頼をしてくれるのは、在宅クリニック、訪問看護、高齢者施設、病院などで、法人数では25法人くらいです。

紹介・依頼件数は、20~30件から5年間で200~250件へと10倍位も増えたわけですね。どのような営業をしてこられたのか、そもそものきっかけからお聞かせください。

岩崎:一番最初のきっかけは、青年会議所で知り合った方がクリニックの事務長さんをご紹介してくださり、その事務長さんに医介塾に誘っていただいたことです。
100名以上集まった講演会の講師として葬儀の話をしたら、話をお聞きになった方から葬儀の紹介をいただくなど、ご縁が広がっていきました。
また、月1回程度開催される医介塾に定期的に通って情報交換などをしていると、そこからのご縁で、例えば、訪問介護の方々の勉強会に講師として呼ばれて死後処置やエンゼルケアの話をすると、そこから葬儀の紹介をいただくといった形で広がっていきました。

営業と言っても、法人に営業をかけるわけではなく、情報交換や勉強会に参加したり、講師などを行うことによって、ご縁が広がっていったわけですね。そうしたことでご縁が広がっていったのはどうしてでしょうか。

岩崎:医療・介護関係の方々からお仕事をいただくということになると、葬儀業者は何か引け目を持つ人が多いのではないかと感じます。
でも私は、葬儀のご紹介をいただくのではなく、連携するという意識、姿勢で医療・介護関係の方々とお付合いするようにしていますので、引け目は感じません。
というのは、医療や介護関係の方々は、患者さんが息を引き取られた後のことは、実はあまり知りません。そのため、自分たちが愛情を込めて看護されてきた方々が、この後どうなってしまうのだろうかとか、どういう風に対応してもらえるのといった不安の方が大きいのではないか、と私は見ています。
そうした時に、葬儀を紹介していただくということではなく、連携させていただくという視点で、心を込めて看護されてきた医療・介護の方々からきちんとバトンを受けるという意識・姿勢で行うようにしています。
そうすると、安心してご依頼していただけるということではないかと思います。

引け目を感じない、対等な付き合いをする

言葉を変えますと、医療・介護関係の人たちに引け目を感じない、対等な付き合いをできるようにされているということですね。

岩崎:そうです。そのようになれるのは、我われの商品力があってのことだと思いますので、故人様やご喪家のために、どれだけ真剣に商品力磨きを行っているかが大切だと考えています。
もし、我われが手を抜いたり、葬儀の本質から外れた仕事をしていたならば、連携をとりたいと思っていただけないでしょうし、仕事につながっていかないだろうと思います。

葬儀を紹介してもらうために紹介手数料を払っている葬儀社も多いですが、そのようなことはされていないのですか。

岩崎:紹介手数料をお支払いするところもありますが、数は少ないです。お客様の料金を適宜値引きするとか、お会いする時に常識的な範囲内でお土産をお持ちするといったようなことは行っています。
医療・介護関係の方は、「紹介手数料を払いますから、誰かご紹介してください」という葬儀屋のビジネスライクというか軽さが嫌なのではないかと感じます。

互助会と言っても、大手などとは全く違うわけですね。

岩崎:はい。当社と連携していただいているところは、葬儀をご紹介していただくと、それに対して金銭が動くという契約関係ではありません。
私を通して、会社のスタッフが本当に一生懸命にやってくれるので、こういう葬儀社にお願いしたら、愛情を持ってしっかりとお手伝いしてくれるということを分かって、連携していただいているのだろうと感じています。

今までお聞きした考え方、方法で医療・介護関係との連携関係を築いてきた結果、大きな案件としては、例えば、どのようなものがありますか。

岩崎:例えば、病院のほか、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、訪問看護などを行っている大きなグループの連携室長に可愛がっていただき、私や当社の姿勢を見ていただいた結果、「うちのグループのすべてを、おたくにお願いしてあげるよ」と言っていただけました。
あるいは、とある病院からは、病院の竣工式をやってもらえないかと言ってくださいました。我われは、言ってみれば儀式のプロですから、本当にメリハリのある竣工式を整え終わった後に、「ここまでしっかりやってくれるなら、おたくにお願いする」と言っていただけました。
こうしたご縁にまで発展しているところもあります。

互助会の会員・施行件数が増えた要因:解約手数料無しの互助会制度が好評

施行件数が増加した主な要因の2つ目の「互助会会員からの葬儀依頼が年を追うごとに増えてきた」ことについてお聞きします。まず、御社の互助会制度というのは、どのような制度ですか。

岩崎:いま、一般的に互助会と言われている制度と一つ違う点があり、お客様からの預かり金を返して欲しいというご要望があれば、全額お返しするようにしています。

つまり、一般的な互助会制度は、月々積み立てを行い、満額になった預かり金を解約したいと言われれば、解約手数料を取るのに対し、御社の制度は解約手数料無しに解約に応じるということですか。

岩崎:そういうことです。

一般的な互助会は、通産省の指導により互助会団体がつくられ、そこに加盟していますが、御社はどのようになっているのでしょうか。

岩崎:一般の互助会とは制度が異なりますので、当社単独で通産省から認可を受けています。

会員数8,000人、口数1万

その互助会制度を18年前に開始された意図・背景はどういうことでしょうか。

岩崎:それまでは1万円の会員制度という月並みなやり方をしていましたが、仕組みには勝てないという思いもあり、敢えて大手の懐に入ってやってみることにしました。
しかし、中小企業の新参者が大手と全く同じ制度では対抗するのは難しいので、解約手数料は無しにしました。

積立のコース設計は、どのようにしているのですか。

岩崎:5コースあります。月々の掛け金は、2,000円から2,000刻みで1万円まで、支払い回数はすべて60回で、合計は12万円、24万円、36万円、48万円、60万円の5コースです。

互助会員数・口数は、現在どのくらいになっているのでしょうか。

岩崎:会員数は8,000人、口数は約1万口です。

会員からの施行依頼が年を追うごとに増えてきたというのは、どういうことでしょうか。

岩崎:預り金は全額返してもらえるという安心感から会員数・口数が増えてきただけでなく、満期になる人も増えてきて利用される比率も上がってきたということです。

では、会員・口数は、どのように増やしてきたのでしょうか。

岩崎:大手互助会は、葬儀施行の会社とは別に、会員を集めるための互助会会社を設けて会員を集めているところがほとんどです。
しかし、我われ中小はそこまでの資本力はありませんから、施行や事務などスタッフ全員に会員様を集めることをお願いしています。
大手のように専任ではないので販売力では大手に勝てませんが、解約手数料をいただかないというのは会社の姿勢ですから、商品力だけで言えば、大手を凌駕しているのでないかと自負しています。
その商品力が、会員様の集客策にもなっていると考えています。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

特集 葬儀
2023.03.09