消臭に除菌と、多彩な用途が考えられるMA-T System®

今、まったく新しい除菌・消臭の仕組みとして、各業界からの期待が高まっているMA-T System®。
その仕組みや効果が期待される活用分野とはどのようなものだろうか。
一般社団法人 日本MA-T工業会常務理事・桜井克明氏にお話をお聞きした。
さらに、ご供養業界における活用についても、ヒントをいただいた。

一般社団法人 日本MA-T工業会常務理事・桜井克明氏

日本発の期待の新技術

新型コロナウイルス(COVID-19)が、令和5年5月8日から「5類感染症」に移行した後も、感染予防は世界的に重要な課題であり続けている。
こうしたなか、日本発のMA-T™(マッチングトランスフォーメーションシステム®)が次世代型の除菌・消臭システムとして、期待を集めている。
MA-T™は、東京都のベンチャー企業・株式会社エースネットが約17年かけて開発したシステムで、大阪大学の研究室が分析・検証を行っており、2015年には、すでに基本特許出願済みだった。強い酸化力をもつ水性ラジカルの活性化の反応を制御(酸化制御)する革新的な技術である。活性化の弱い状態での除菌・消臭から、活性化の強い状態での酸化反応まで、応用できる範囲が広範である(図1参照)。

図1

世界的なパンデミック対策に有意な技術として、2020年11月には、社会実装のために日本MA-T工業会が設立され、学会による研究も始まった。各業界のトップ企業をはじめ産官学が連携し、多角的な分野での実装を目指しているところだ。現在は、図1で示した6つの分野での実装に取り組んでおり、すでにMA-T™の仕組みを取り入れて製品化された除菌剤や消臭剤もある。
安全性と除菌・消臭力を高度に両立する仕組み
従来は除菌剤として、アルコール製剤や塩素系製剤が使われることが一般的だった。だが、これらは除菌力の強さを求めれば安全性が低下し、安全性を考慮すると除菌力も低下せざるを得ないという二律背反の製剤が大半だった(図2参照)。

図2

一方、MA-T System®による「要時生成型亜塩素酸イオン®水溶液」は、水性ラジカルがウイルス・細菌・臭いの原因物質にぶつかって消費されることで、除菌・消臭する仕組みだ(図3参照)。
要時生成型亜塩素酸イオン水溶液®の成分の99%は水であり、亜塩素酸イオンは欧米では水道の消毒にも使われている。水道水とほぼ同じ程度に人体には安全だとイメージしてもよいかもしれない。
また、水性ラジカルは、常時大量に水溶液に存在するのではなく、化学平衡(元素の結び付きが不安定な状態にある時、より安定した状態になろうとする)によって、水性ラジカルが消費されるたびに新たに生成される。そのため、除菌力は時間が経過しても衰えず、長期間保存してもアルコール消毒剤のように揮発したり、引火する懸念もない。加えて、除菌と消臭をひとつで兼用できるため、被災用の備品としても、ワンストップで衛生管理ができる。さらに人体だけでなく、水道水に耐性がある素材に対しては、たとえば金属腐食が懸念される場合なども含め、ほぼすべての場所で使える除菌・消臭のシステムなのである。
皮膚への刺激など人体への安全性や除菌効果、消臭効果についても、大阪大学をはじめ、各機関で検証されている。なお、新型コロナウイルスに対しても99.98%の除菌効果があることが大阪大学の研究室で実証された。

図3
①MA-T™を含む水溶液を噴射した箇所に菌やウイルスがいた場合 ②水性ラジカルが菌やウイルスにぶつかることで除菌します③ MA-T™の制御により、新たに水性ラジカルが1つ生成され、菌がなくなるまでMA-T™システムが機能し続けます

幅広い活用分野でSTOP感染症大賞も受賞

現在、MA-T™は航空会社、ホテル、劇場、病院、介護施設などで幅広く活用されている。またオープンイノベーションのプラットフォームとして日本MA-T工業会が設立され、110社の企業が参画し研究開発を進めている。不特定多数が集まるイベントでの衛生対策のみならず、新型コロナウイルスによるクラスターが発生した際にも、感染拡大防止に使用された。2022年にはパ・リーグ6球団の共同出資会社・パシフィックリーグマーケティング株式会社と公式衛生パートナー契約を締結した。
そのほかの分野の社会実装としては、金属の腐食作用がないことから、航空機のコックピットの除菌・消臭、介護業界では、福祉レンタル用品および高齢者福祉施設の除菌・消臭に使用されている。またこと消臭に関しては、天井裏に住み着いたハクビシンの糞尿の処理や特殊清掃、県警の検死室・遺体安置所での消臭・脱臭にも実績がある。
2021年には、一般財団法人レジリエンスジャパン推進協議会第7回ジャパン・レジリエンス・アワードにおいてSTOP感染症大賞を受賞した。感染症対策において、国土強靭化への貢献が認められたかたちだ。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 8月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2023.08.31