コロナ禍でも売上高は3年間で17%アップに中間層の取り込みなどで施行件数は27%増加

株式会社横浜セレモ(神奈川県横浜市)の売上高は、コロナ禍前の19年10月期は7億円であったの対し、3年後の22年10月期は8.2億円で17%増加した。コロナ禍によって売上が減少している葬儀社が多い中にあって健闘している。施行件数と単価の内訳でみると、施行件数が27%増と大幅に増加しており、その主な要因は、中間顧客層の取り込みが効を奏したことと、高齢者施設など介護事業者・医療機関からの紹介が増えたことにある。売上アップの要因として、そのほかにもアフターサービス品の販売強化やDX化に取り組んだことなどがある。売上高が17%増加した要因を中心に、加藤芳俊執行役員・営業本部長に話をお聞きした。

株式会社横浜セレモ(神奈川県横浜市)

加藤芳俊執行役員・営業本部長

まず、横浜セレモさんの売上高について、コロナ禍前とコロナ禍後の状況を教えて下さい。

加藤:当社は10月決算ですので、コロナ禍前は2019年10月期、コロナ禍後は3年後の22年10月期の確定値でお話しします。
19年10月期は7億円で、コロナ禍に入っても20年10月期は8億円に増えましたが、21年10月期は7億3千万円に減りました。
20年10月期は、コロナ禍前の営業活動などによる効果で増加しましたが、21年10月期は、コロナ禍になって外に対する営業活動はほとんどできなかったことなどから減少しました。
しかし、22年10月期は、8億2千万円で過去最高となりました。

19年10月期の7億円に対し、22年10月期は8億2千万円ということは、コロナ禍でも3年間で17%増加したわけですね。新規出店なしで17%増というのは大健闘ですね。施行件数と単価の内訳では、どうなっていますか。

加藤:19年10月期は630件であったのに対し、22年10月期は800件で、3年間で約27%増えました。
単価は、19年10月期は130万円に対し、22年10月期は110万円で、3年間で約15%ダウンしています。でも、これは葬儀本体のみの単価で、返礼品、食事、供花、アフターサービス品などを加えますとさほど下がっていません。

売上高が17%アップした要因は、施行件数が27%増えたことと、その他の売上アップ策による訳ですね。

施行件数27%増の要因:火葬式の比率は10%増、単価は20万円近くアップ

施行件数が27%増えた主な要因は何でしょうか。

加藤:主な要因は、2つあります。1つは、これは単価アップ策でもありますが、中間層のお客様を増やすことに取り組んだことです。
インターネットによる葬儀紹介業者の影響力が増すことによって、葬儀のお客さんは、安いものを選ぶ層と、高いものを選ぶ層に二極化してきた部分があると思います。
それに対して当社は、値下げや値上げは一切行わずに、お客様それぞれ対してサービスを拡充させ、うまくマネタイズするようにしました。
その結果、直葬・火葬式や家族葬の小さいものほど単価が上がってきました。件数では、特に直葬・火葬式が増えています。

特に直葬・火葬式が増えたのは、どうしてでしょうか。

加藤:中間層のお客様を増やすことに取り組めるようにしたことに伴い、直葬・火葬式に対する考え方を変えたこともあります。
火葬式に対しては、従来は下向きというか消極的でしたが、そうではなくて、今までの件数に上乗せされる件数と考え方を変え、前向きに取り組むことにしました。
火葬式でも、前向きに取り組むといろいろなお客様がいらっしゃることが分かります。
例えば、普通のお葬式をやってあげたいのだけれども、事情があってやってあげられない方とか、お金はあるけれどもお葬式はやる必要がないと考えている方などいろいろいらっしゃいます。
そういうお客様の事情や想いなどを引き出して、「それでしたら、こういうやり方もあります」「こういう商品・サービスもあります」などとご提案することによって、直葬・火葬式の件数が増え、単価もアップしました。

どのような提案をされているのですか。

加藤:例えば、「棺にお花をいっぱいにして送ってあげましょう」「火葬式であっても、車輌はこだわってあげましょう」とか、「火葬式でも、故人が好きだったお食事を召し上がってはいかがですか」といった提案です。
お客様によって、「火葬式ですが、来られない方から供花をもらいましょう」といった提案を行うこともあります。

そうしたことに取り組んだ結果、直葬・火葬式の件数や単価はどうなったのでしょうか。

加藤:直葬・火葬式の比率は、コロナ禍前は10%位であったものが、20%位になりました。単価は、20万円近く上がっています。

火葬式でも車にこだわったり、最後に好きな場所へのドライブを提案(写真はメルセデス・ベンツ)

高齢者施設など介護・医療関連からの紹介が増加

施行件数が増えたもう1つの主な要因は何でしょうか。

加藤:高齢者施設、訪問看護ステーション、ケアマネージャー、地域包括支援センターや士業からの紹介が増えたことです。
こうしたところからの紹介は、コロナ禍前は年間100件位でしたが、最近は150~200件位になっています。
150件~200件の内訳は、高齢者施設が7割、その他が3割位です。

150~200件とは多いですね。紹介してもらうために、どのようなこと行っているのですか。

加藤:紹介して下さるところや人に対しては、ご遺族と同じように対応することに心掛けています。
具体的には、1つは、ご遺体をお迎えに行ったらそれっきりの葬儀社が多いのではないかと思いますが、当社は、「葬儀はいついつ、こういう形で行います」とスケジュールをお伝えします。さらに「よろしかったら、お別れにいらして下さい」と必ず付け加えます。葬儀に参列して良いのかと思っている方も多いからです。
もう1つは、当社に電話があった日時、病院に迎えに行った日時、納棺する日時、お花入れの日時、出棺日時などとそれらの写真を添えた「経過報告書」を紹介先にお届けしています。
こうしたことを行うことによって、リピーターや紹介が増えています。

営業的なことは行っていないのですか。

加藤:当社の社訓の1つに「拡大したければ新しい人に会おう」というのがあります。これを促進するために、3ヵ月に1回、名刺交換数ランキングを発表し、トップのスタッフには賞金を出しています。
しかし、新しい人に会っても葬儀の営業はしません。先方の困り事を解決してあげたり、要望に応えることによって信頼を得て、先方から葬儀を依頼してもらえるようにすることを当社の基本姿勢としています。
コロナ禍になって、外出するのが難しくなり、この名刺交換もあまり出来ていません。
ほかに特別なことは行っておらず、先ほど言いましたスケジュールをお伝えするのと経過報告書をお届けしていることなど、地域の葬儀社として「やるべきこと」を粛々と行なってきたことが評価されているのだと思います。

横浜市の「ケアプラザ」主催のセミナーで講師を務める加藤執行役員

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 1月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2023.01.19