SDGsへの関心が高まる中、環境に優しいFSC認証材使用のお仏壇「然」が誕生

株式会社はせがわ(東京都文京区) 吉安大輔さん 猪山雅典さん

供養業界のリーディングカンパニーである株式会社はせがわは、環境保全や持続可能な社会の実現に向けた取り組みをスタート。2022年10月1日より、FSC認証材を使用した仏壇「然」の販売を開始した。このお仏壇は株式会社中村製材所(本社:福岡・佐賀/代表取締役:中村展章)と共同で開発したもので、素材には中村製材所オリジナル特許商品「SKINWOODⓇ」が使用されている。同社執行役員経営企画部長の吉安大輔さんと商品部品質チームリーダーの猪山雅典さんに、FSC認証材を使用したお仏壇を開発したきっかけや今後の展望について伺った。

執行役員 経営企画部長の吉安大輔さん(右)
商品部品質チームリーダーの猪山雅典さん(左)

時代にマッチした国産仏壇を開発

環境汚染や地球温暖化など、環境をめぐる問題は年々深刻化している。木材を使用する仏壇仏具業界も他人事ではない。今後企業はますます環境に配慮した事業活動を行っていく必要があるだろう。このような社会背景の中、はせがわは時代にマッチした商品の開発を1年半ほど前から検討し始めたという。
「弊社は毎年3万基のお仏壇を納めています。これを木材の重量に換算すると、概算で960トンの木を伐採していることになります。社会全体でCO2の削減が求められている中、我々としても環境保全に向けた取り組みを行う必要があるとして、『然』の開発にいたりました」(猪山さん)
共同開発した中村製材所は世界の木材を販売している企業で、17年前よりいち早くFSC認証材を取り扱ってきた。FSC認証材とは、責任ある森林管理の世界普及を目的に設立された非営利団体「FSC(Forest Stewardship Council)」によって“適切に管理された森林”と認められた森で生産される木材を指す。国連のSDGs(持続可能な開発目標)においても、目標15(陸上資源)の中で持続可能な森林の経営を目標としており、FSCはそれに寄与するものだといえる。
「中村製材所さんとは、弊社の関連企業であるはせがわ美術工芸と昔から取引がありました。そこで今回、中村製材所さんの特許商品である突板『SKINWOODⓇ』を素材に使用できないかという話になりました。『然』は芯材にも表面材にも国産檜材を使った、本物の国産品です。お仏壇業界では、国産といっても木材は外国製のものが多く、私としても今回初めて本物の国産品に携わることができました。お仏壇の価格が下がってきているいま、『然』は高価格帯の部類に入るでしょう。しかし、環境意識の高いお客さまに十分な価値を提供できる商品だと自負しています」(猪山さん)

FSC 認証の印である「FSC マーク」。
FSC ロゴの他、製品の組成やトレサビリティに欠かせない情報が記載されている

消費者の行動喚起を促したい

各界でサステナビリティへの関心が高まる中、仏壇仏具業界はSDGsへの取り組みという点で遅れをとっていると言わざるをえない。猪山さんはそのことを友人とのやり取りで実感したそうだ。
「いまのところ、『然』のプレスリリースに対して業界からの反応はあまりありません。しかし、友人のLINEグループにプレスリリースを掲載したところ、かなりの反響がありました。中には『はせがわはSDGsに対してこんな取り組みをしていてすごいね』と言ってくれた友人もいます。世間の人はSDGsに対してこんなにも関心をもっているのだと驚きました」(猪山さん)
はせがわとしても、SDGsへの具体的な取り組みについてはまだ検討段階だという。
「コーポレートガバナンスコードが改訂され、上場企業としてサステナビリティへの方針を打ち出していくことが求められています。弊社は現時点で方針をきちんと開示できておらず、今期サステナビリティ方針を社内で協議している段階です。今後は全体の方針の中で優先順位を決めた上で、課題を設定して取り組んでいくことになるでしょう」(吉安さん)
会社としての方針を固めるほか、消費者の行動喚起を促す必要性も感じているという。
「SDGsという言葉はよく聞くようになりました。ですが、多少コストがかかっても環境に優しい商品を選ぶなど、消費者の行動に直結するところまではいっていない。SDGsに対し、世間の関心がまだ追いついていないのが実情だと思います。弊社としても、多くの方にご認知いただいているからこその発信する意義を感じています」(吉安さん)

仏壇「然」。幅39.5㎝×高さ41.0㎝×奥行26.0㎝。価格は380,000 円(税抜)

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 1月号に掲載されています

掲載記事

特集 仏壇
2023.01.17