ティア冨安社長に聞く“大型M&A”の舞台裏。「シナジー効果と“全国制覇への第一歩”」

 専門葬儀社では売上高4位の株式会社ティア(愛知県名古屋市)は2023年11月20日、中堅専門葬儀社の株式会社八光殿(大阪府八尾市)と株式会社東海典礼(愛知県豊川市)のそれぞれを傘下に置くSPC(特別目的会社)2社の全株式を取得し、グループ化した。取得価額は72億円で、専門葬儀社によるM&Aとしては最大だ。大型M&Aの成立経緯やティアにとっての意義・効果、今後の方針などについて、ティアの冨安徳久社長に聞いた。

冨安徳久社長

取得価額は72億円、専門葬儀社によるM&Aとしては最大

 まず、投資会社のNSSK(日本産業推進機構)が保有していた八光殿と東海典礼に関連する全株式を取得し、グループ化するにいたった経緯についてお聞かせください。

冨安:数年前、ティア社内に「M&A推進室」を設け、愛知県内で当社のM&Aの対象葬儀社をピックアップしたのですが、M&Aを進めたいと思ったのは東海典礼でした。当社は豊橋市と岡崎市に出店していますが、両市の間にある豊川市や蒲郡市には出店しておらず、東三河地区には東海典礼が出店されていたからです。当社が愛知県を制覇しようと思ったら、東海典礼をM&Aすれば制覇のためのピースが埋まります。

 そこで、コロナ禍前に社内の担当者をNSSKさんに一度接触させ、私も1年半前くらいにNSSKさんにお会いして、「東海典礼の株を売られる時にはぜひ当社に声をかけてください」とお願いしました。その時は「まだ売りません」とのご返事でしたが、それから数カ月後、2023年に入ってNSSKさんのほうから「売りたい」と。しかも、東海典礼の株だけでなく、八光殿の株もまとめて売りたいというお話でした。

 私は、M&Aはまずは愛知県からと思っており、大阪の葬儀社まで詳しく調べたわけではありませんので、八光殿のことは知りませんでした。そこで、八光殿のことを社内の担当部署に調べさせたところ「とてもよい会社」ということでしたので、それならば八光殿の株もセットで買いたいと思ったのです。

 取得価額は72億円とのことですが、売上高としては、八光殿が27億2000万円(2022年9月期)、東海典礼が16億円(2023年5月期)で、合わせて43億2000万円ですね。この売上高に対して取得価額72億円というのは高いようにも感じるのですが、これはどのような判断をされたのでしょうか?

冨安:いちばんの理由は、当社が会館を展開しているエリアと隣接していることから、ドミナント戦略、商品戦略、営業戦略、人財戦略などにおいてシナジー効果が期待できるからです。当社と東海典礼の出店エリアが隣接していることは先ほどお話した通りですが、当社と八光殿の出店エリアも隣接しています。当社の直営店舗と、フランチャイズの南海グリーフサポート㈱の展開するエリアが八光殿の出店エリアを挟んでおり、こちらもシナジー効果が期待できます。

 また、東海典礼は22店舗、八光殿は16店舗ありますが、これらの店舗を当社が一から出店して現在のこの売上にするには何年もかかります。それ以前に、他社が2社を買ってしまうと、当社はそこに出店するのが難しくなってしまいます。

 こうしたことを考えますと、取得価額は大きくても、シナジー効果が期待でき、結果的に価値のあるM&Aだったとするほうが得策だろうと判断しました。

PMI(統合プロセス)は100日間を目途に行う

 ティアさんとしては初めてのM&Aですね。どのように受けとめていらっしゃいますか?

冨安:当社の成長戦略は、「直営」「フランチャイズ」「M&A」の3本柱です。直営は、ティア直営の葬儀会館でドミナントを形成すること。フランチャイズは、異業種の企業と組んで葬儀ビジネスをフランチャイズで展開していただくこと。そしてM&Aは、同業他社をグループ化して商圏・エリアを広げることです。

 直営とフランチャイズについては着実に実績を重ねてきましたが、M&Aについては成果がなかなか出ない状況でした。しかし今回、環境や条件が整うことによって大きな一歩を踏み出すことができました。今回のM&Aは、10年、20年後に、「あのM&Aをやり切った2023年、2024年は、ティアにとって本当の意味での全国制覇に向けた第一歩だった」と振り返ることができるだろうと感じています。

 冨安社長は創業当初から葬儀業界改革を掲げられ、そのためにも全国展開を目指すと言い続けてこられました。そうした意味でまさに、全国制覇に向けた第一歩になるだろうということですね。

冨安:そうです。成長戦略の3本柱を推進していくことは、ティアの成長はもちろん、ティアが目指す葬儀業界改革につながる重要な事業活動です。M&Aは同じ思いを持った同志と手を組む手法のひとつであると考えています。感謝と「ありがとう」をいただける葬儀社をつくろう、同じ志を持った仲間をつくろうということが私の考えです。東海典礼も八光殿も、共に「ありがとう」というキーワードを掲げていました。「大切な方を亡くしたご遺族の、最期の場面をきちんとお手伝いするのが葬儀社の仕事だ」という思いが根底にある会社です。エリア展開での必然性もありますが、そうした思いを持つ会社だからこそ、株式を取得しました。

 今回のM&Aによって業界改革への当社の歩みが加速したという思いを持っており、このM&Aをやりきることで、さらに同志が増えるだろうと想像しています。

 今回のM&Aをやりきるために、今後どのようなことを行っていくのでしょうか?

冨安:株式取得完了日は2023年11月20日でしたが、社内では11月1日にPMI(統合プロセス)プロジェクトをキックオフさせました。東海典礼も八光殿も上場企業の仲間になるわけですから、上場企業の基準に合わせていかなければなりません。
まず行わなければならないのは、上場基準の責務である決算発表を行うことですから、経理・財務の統合です。次に、当社と八光殿、東海典礼は同じエリアで展開しているので、シナジー効果を生み出していかなければなりません。

 統合していくにあたっては、各社の社員やスタッフすべてに十分な説明をし、理解していただく努力を怠ってはならないと思っています。PMIの基本は、100日間と考えています。それが上場企業のあるべき姿です。困難が想定されたとしても、スピード感をもってやりきることが大事であると覚悟しています。

 ドミナント戦略を重視し、全国展開を目指している御社にとっては、ブランドの統一も重要な検討テーマではないかと思います。そのあたりはどうされるのでしょうか?

冨安:重要な検討テーマです。2社のブランドを変えることは簡単ではありません。それぞれの企業風土、社員たちの想いなどがありますから、そうしたものも大事にしながら検討していきます。時間はかかるかもしれませんが、理念を共有し、消費者にとってどうすることがいちばんよいのかを詰めていけば、道はおのずと開けるだろうと考えています。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

インタビューの全文は月刊終活 2月号に掲載されています

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葬儀
2024.02.20