コロナ禍前に比べ全事業売上高は2.4倍の130億円。葬儀売上高は7.8倍の70億円に。

株式会社金宝堂(東京本社:世田谷区)

株式会社金宝堂(東京本社:世田谷区)の2022年8月決算の全事業売上高は、コロナ禍前の19年8月期に比べ2.4倍の130億円になる見込みだ。
全事業売上高の中で、特に増えているのは葬儀売上高である。19年8月期は9億円であったものが、22年8月期は70億円と、3年間で実に7.8倍も増えている。
葬儀売上高が大幅に増えている主な要因は、施行件数が大幅に増加していることにある。その主たる要因は、新規出店を数多くハイスピードで行っていることだ。
同社の葬儀売上高が大幅に増えている要因は、そのほかにもいろいろとある。それらの要因を葬祭事業部の新田正範本部長にお聞きした。

葬祭事業部・新田正範本部長

今日は、葬儀事業についてお聞きしたいのですが、その前に全事業売上高のコロナ禍前とコロナ禍後の数値をおしえてください。

新田:当社は8月決算ですので、コロナ禍前は2019年8月期、コロナ禍後は3年後の2022年8月期の見込みでお話しします。
全事業売上高は、19年8月期は55億円であったのに対し、22年8月期は130億円の見込みです。

3年間で2.4倍と倍以上増えているわけですね。しかも、130億円と言いますと、専門葬儀社の中では、ティアが122億円(21年9月決算)、ライフアンドデザイン・グループは130億円(22年3月決算)ですから、両社とほぼ並び2位グループに浮上しましたね。
では、葬儀事業のコロナ禍前のコロナ禍後の売上高と、その内訳である施行件数、単価の推移についてお聞かせください。

新田:売上高は、19年8月期は9億円であったのに対し、22年8月期は70億円の見込みです。施行件数と単価の内訳別ですが、施行件数は19年8月期の950件に対し、22年8月期は7000件の見込みです。
単価は、19年8月期の95万円に対し、22年8月期は100万円です。

伸長率は、コロナ禍であったにも関わらず、売上高は3年間で実に7.8倍、施行件数は同7.4倍と大幅に増加したわけですね。
単価は5%の微増ですが、コロナ禍で大幅な単価ダウンを余儀なくされている葬儀社の中にあっては良い方ですね。

施行件数は3年間で7.4倍の要因。コロナ禍でも新規ホールを順調に出店。

では、施行件数と単価それぞれについて、増加している要因についてお聞きします。
まず施行件数ですが、3年間で7.4倍と大幅に増えた要因は何でしょうか。

新田:一番の要因は、コロナ禍であっても、ホールの出店が順調に出来ていることです。コロナ禍前の19年8月期は8ホールでしたが、2022年8月期では45ホールになっています。
22年度からは、年間最低30ホールを出店する計画で取り組んでおり、この計画が順調に進んでいます。新規出店数は、20年8月期は7ホール、21年8月期は10ホールでしたが、22年8月期は20ホールになっています。

それだけ数多く出店できているのはどうしてでしょうか。

新田:1つは直営ホールだけでなく、M&Aをさせていただいた会社や合弁会社が合わせて8社あり、それらの会社も葬儀事業に力を入れ始めていることがあります。
現時点の45ホールのうち、M&Aや合弁会社のホール数は28ホールになっています。

では、直営とM&Aに分けてお聞きします。まず直営についてですが、数多く出店できている要因についてお聞かせ下さい。

新田:1つは、私どもは家族葬ホールに特化して展開しており、互助会さんなどと比べると、かなり小規模なホールです。そのため、出店のイニシャルコストも少ないので回収スピードが速く、ホールを建てる工期も短いので出店しやすいことです。

「小さな森の家」鎌ヶ谷大仏ホール(千葉)。どこのホールも道路側に看板を出し視認性を高めている
「家族葬の仙和」清住会館ホール(山形)

土地・建物で1億2,000万~3,000万で出店

イニシャルコストは、どのくらいかけられているのですか。

新田:それぞれの土地の契約状況にもよりますが、売り地ですと、土地と建物を合わせて1億2,000~3,000万円です。建物のリフォームですと4,000~5,000万円です。5,000万円であれば、3~5年で利益が出せます。

土地と建物を合わせて1億2,000~3,000万円というのは、比較的安いですね。

新田:首都圏ではその価格では難しいですが、当社グループが展開している地域では、それくらいで土地を手に入れ、ホールを建てられます。

数多く出店できている要因として、ほかにいかがですか。

新田:当社はドミナント戦略を基本にしていますが、このエリアではあと何ホール出せるのか、どこに出したらよいかといった商圏調査をいち早く行います。
そして、出店する場所が決まれば、物件を集中的に探します。当社の店舗開発チームは5人おり、数が多いだけでなく、不動産業界出身の人たちなので良い物件を早く探せます。

M&Aについてちょっとお聞きしますが、ターゲットにされているのはどのようなところでしょうか。

新田:まずは、自社でホール展開している地域で売り案件があれば検討します。
自社でホール展開していない地域については、大きなホールを持っているところは基本的に対象外にしており、家族葬ホールで展開しているところはターゲットにしています。

広告宣伝費は売上高の10%を投入

新規出店以外で、施行件数が大幅に増えた要因についてお聞かせください。

新田:本社内には、マーケティング部とコンタクトセンターがあります。
マーケティング部は、20人位いる全員が社内スタッフで、全て社内で行っています。行っているのは広告宣伝やWebマーケティングなどで、要はお客様からのタッチポイントを増やすことです。
お客様からタッチがあったものは、20名いる社内のコンタクトセンターで受けます。コンタクトセンターでは、葬儀専門の会話のノウハウを持っており、しっかり受注できるようにしています。
施行件数が増えているのは、これらのマーケティング部とコンタクトセンターが連動してうまく機能しているのも要因です。

前半のタッチポイントを増やすことは、広告宣伝費によって大きく左右されると思うのですが、広告宣伝費はどのくらいかけているのですか。

新田:売上の10%を目安にしています。

葬儀社の広告宣伝費の平均は、売上の3~5%ですから、それは多いですね。

新田:葬儀社の平均と比較すると2~3倍ですが、当社のグループは、各地でドミナント展開していますから、地元の同業他社のチラシに比べると、体感的には4~5倍多い印象をお客様に与えられていると思います。インターネットに関しましても、SEOや広告などに、競合他社より3~4倍の費用をかけています。

失注率は「相談電話」件数の5%以下

コールセンターでは、葬儀専門の会話のノウハウを持っており、しっかり受注できるようにしているとのことですが、どのようなノウハウでしょうか。

新田:コンタクトセンターにはいろいろな電話がかかってきますが、それらのたくさんの電話内容を細かく分析してお客様対応に生かしています。
電話内容を細かく分析すると、お客さんが最初の段階で話す内容によって、お客さんがどういう状況にあるかのいくつかパターンが分かってきます。
例えば、最初は事前相談で入ってきたお客さんが、話を掘り下げていくと、実際には亡くなっていたとか、ほかの葬儀社から相見積りを取っているといったことが分かります。
それが分かると、そのお客さんの実際の状況に合わせた話法に切り替えることによって、受注率が増え失注率は減ります。

受注率、失注率はいくらでしょうか。

新田:受注率に関しては細かなデータまで取れていませんが、失注率は当社独自の基準となりますが、間違い電話を含めた「相談電話」件数の5%以下に抑えられています。――失注率は、一般的には「依頼電話」を基準にしていると思うのですが、それより厳しくされているわけですね。新田そうです。当社の基準で失注率5%というのは、何でもかんでも掛ってくる電話の95%は拾えているということですから、失注率は他社さんよりかなり低いのではないでしょうか。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 10月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2022.10.06