今回は「鎌倉新書終活アワード」のお墓部門で受賞された3社から、株式会社はせがわの榎本取締役執行役員、株式会社霊園・墓石のヤシロの八城代表取締役、株式会社MG石材の木田常務執行役員にお越しいただき、座談会形式で各社の今の取り組みと、未来を生き抜く戦略についてお話しいただいた。
終活アワード受賞について
榎本:今回受賞できたのは日頃から鎌倉新書さんと上手に連携がとれていた結果と喜んでいます。ありがとうございました。
八城:まさか大賞をいただけるとは思っていませんでした。沢山の情報もいただき、契約をさせていただけた証拠だと思っております。ありがとうございました。
木田:栄えある賞をいただき、ありがとうございます。私たちの霊園のお墓に注目していただいた結果だと思います。非常に励みになる賞です。ありがとうございました。
コロナ禍の影響も含めた近年のお客様動向の変化
小林:近年コロナもありましたし、お客様のお墓に対する意識の変化が見られます。お客様への接し方が変わった、マーケティングのやり方が変わったといった対応の変化についてお話を聞かせください。
木田:コロナによって来園者の減少といった影響は否定できません。特に鎌倉新書さんの「いいお墓」でしっかり下調べをしてから来園するような方が増えてきた気がします。また、お子さんやお孫さんの代に管理料の負担をかけたくないと考える方も増えてきました。「墓じまい」というのはひとつの時代のキーワードになっています。今まではお墓はしっかり継ぐものだという伝統がありましたが、お子さんがいらっしゃらなかったり、結婚しない方が増えたりして、お客さまが求めるものが変わってきた印象はありますね。
八城:弊社はコロナの真っ最中に4箇所の納骨堂を開業しました。来年もう1箇所開く予定です。2019年の時には好調にスタートするかと思われた納骨堂ですが、コロナにより2020年、2021年と急ブレーキになりました。ところが霊園は、郊外であるという事と、車でお越しいただけるという事もあって客足は順調でした。この3年間は霊園事業に救われた3年でした。
榎本:弊社はコロナが激しくなった時にお仏壇の店舗を約2ヶ月近く閉鎖しました。全然想像もつかないような出来事でした。そんな中、お客様からいつになったら再開するのかとお電話をたくさんいただきました。それから時短営業を開始しています。それ以降、お客様が逆に弊社を指名で来ていただいて、短時間でお買い物をお済ませて帰られるというプラスの影響がありました。やはり社会構造の変化というかお墓やお仏壇、宗教に対する考え方が非常に変わってきています。この変化にどう対応していくかがこれからのポイントだと感じています。
事業の多角化に対する各社の考え方
小林:「事業の多角化」というキーワードでお話をお聞きします。事業の多角化についてのお考え、プラス面、マイナス面についてお話しください。
八城:私たちは決して意図した多角化ではありません。リーマンショックの1年前にオープンした霊園で永代供養墓を中心に販売したところ、お客様から大変な反響がありました。その時に、お墓を作りたい方よりも作れない方の方が多いという事に気付いて、以降は永代供養墓を中心に販売しています。ちょうど「終活」という言葉が注目を浴びた直後でもありました。
また、私の知り合いが生前契約をしてくれましたが、その方は単身者で「亡くなったときに、どうしたらここへ来れるの?」と聞かれました。そういう方がいるなら霊園の中で葬儀もやろうという話になり、生前契約の方限定で葬儀事業もはじめました。生前に契約しておいて頂ければ、我々も心の準備ができます。そういう意味でも、意図しないまま多角化しています。
榎本:うちもお仏壇、お墓、屋内墓苑と展開していますが、それぞれの商品に対してお客様の真のニーズを掴むのに苦労しています。販売するものによっておすすめの仕方が変わってきます。本当にお客様の家族構成や背景を理解した上で、プロとしておすすめしていく。これには経験も必要でしょうし、社員達の知見をもっと増やしていくことが非常に大切です。
木田:お迎え事業から多角化について、私たちは考えていません。霊園事業の基本に立ち返るという気持ちを大事にして、お客様のお話をじっくり聞き、それに寄り添うような形でご提案する。そこをしっかりやっていきたいと考えております。
その中から、お客様から教えられることもたくさんあります。「墓じまいをしたい」という声や、継承者の問題などです。その中で、私たちが色々な受け皿になれるような提案をしていくことを大切にしています。
宗教やお墓に対するとらえ方がここ数年で変わってきています。これからもまた短いサイクルで変わっていくと思います。10年前とはまた違いますし、次の10年後、20年後もどうなるかわかりません。その中でお客様と向き合って、ご要望に応えるようなお墓を提案させていただく、そしてお客様からヒントを得て我々の事業に反映させていくという事を大事にしています。
ーさいごに/今後の事業展開・業界について
小林:今後のお墓のビジネスに関して最後に一言おねがいします。
八城:遺骨を持っていらっしゃる方、改葬、墓じまいをお考えの方、生きている間に自分のお墓を考えざるを得ない方。この3つが、お墓に需要がある方たちです。その需要の中でお客様のご要望には濃淡があるので、それぞれに個別対応をせざるを得ません。はせがわさんがおっしゃる「人」が非常に重要であるということです。
そしてお客様が欲しいと思う情報を、WEBサイト等で会社としてお応えしていくという必要性もあります。逆に情報を与えるということは、どのような情報が必要なのかをこちらが勉強することにもつながります。やはり、「お客様を知る」「良く見る」ということが一番大事だと思います。
榎本:弊社はお墓事業の三本柱を中心にやっています。三本柱は何かと言いますと、まずは「お墓、石材」で、きちんと良いものを使って嘘をつかないこと。
二つ目は「工事」です。土の中で見えない部分なので、いくらでも手を抜けますが、そこは絶対に手を抜かないこと。
そして三つ目が「お墓に関係する環境づくり」です。札幌の納骨堂の経営破綻のようなことはあってはなりません。しっかりと経営強化を行い、そのうえで合法的に商材を作って、お客様に提供していく。これははせがわだけではできないので、皆さんと一緒にやっていきたいと考えています。
木田:私たちは、お墓の事業をしっかり進めていくことを大事にしています。そして「終活」という言葉をもっと広めていかなければならないと考えています。これまでお墓の事業ではほとんどやってこなかった、イメージプロモーションも積極的にやっています。お墓はバラエティ番組に出ることはなかったんですが、今、静岡県内のバラエティ番組に出ています。単に茶化すのではなく、お墓の傾向を知ってもらい、もっと身近に感じてもらう。そういう活動を積極的にやっていきたいと思っています。
お墓のエンディングの部分だけではなく、その前の終活事業をされている方の協力も得ながら、終活をもっと啓蒙していきたい。その中で「いいお墓」のポータルサイトも含めて知って頂き、実際に来てみて「ああ、もっと早く来ればよかった」という方もいらっしゃいます。うちだけではなくて、色々な方の支援を得ながら、もっとお墓や終活について身近に感じていただきたいと思っています。
小林:月刊終活スペシャル座談会、お墓業界からキーマン3名の方にお越しいただきました。改めまして、榎本様、八城様、木田様、今日は本当にありがとうございました。
経歴
1984年 当社入社
2002年 同東京聖石開発部長
2004年 同聖石開発部長
2007年 同執行役員 聖石本部副本部長
2008年 同執行役員 副聖石グループ長
2009年 同執行役員 千葉営業部長
2012年 同執行役員 寺社聖石グループ 聖石部長
2014年 同執行役員 寺社聖石グループ副 グループ長 兼 聖石部長
2016年 同執行役員 寺社聖石グループ長
2019年 同執行役員 寺社聖石グループ長 兼 営業グループ 兼 提携推進部担当
2019年 同取締役 上席執行役員 寺社聖石グループ長 兼 営業グループ
2020年 同取締役 上席執行役員 寺社聖石グループ長
2021年 同取締役執行役員 寺社聖石グループ長 兼 店舗開発部担当
2022年 同取締役執行役員 商品グループ長 兼 聖石部長兼寺社聖石グループ長(現任)
生年月日 1960年8月28日 62歳
役職
(株)霊園墓石のヤシロ 代表取締役 社長
(株)琉球メモリアルパーク 代表取締役 社長
経歴
1985年 (株)中山石渠店 入社
1991年 同社 沖縄支店長
1992年 (株)琉球メモリアルパーク設立 代表取締役就任
1994年 財団法人沖縄県メモリアル整備協会設立 副理事長兼事務局長就任
2003年 (株)ヤシロ 代表取締役就任
2020年 (株)霊園・墓石のヤシロに社名変更 現在に至る
経営上の視点 脱皮できない蛇は死ぬ。
お客様へのメッセージ
1. 課題解決 お客様の供養のお悩みを解決する
2. 理想実現 お客様が理想とする供養のカタチを実現する
3. 事業継続 お客様の大切なやすらぎの場を守り続ける
座右の銘 「為せば成る」
生年月日 1965年10月15日
経歴
早稲田大学第一文学部卒業。
日本テレビ系列の静岡第一テレビにて、アナウンサー、報道、制作、営業、支局長の経験を経て、2015年MG石材に入社。
営業統括ゼネラルマネージャーを経て、2019年常務執行役員に就任。
営業部門の統括の他、広報として、多媒体を使った広報活動、セミナーや講演を通して宣伝のみならず、終活の啓蒙活動を行う。
座右の銘 「陽はまた昇る」