墓石離れ現象のなかで低迷が続く墓石業界、徳島を拠点に霊園・墓石業界に参入する 大手仏壇店の「墓石戦略」

「墓じまい」が今や市民権を得て、「樹木葬」「永代供養墓」「納骨堂」がお墓探しのキーワードになって久しい。最初にこれらのお墓の多様化がテレビや新聞で報じられたころ、この現象はメディア情報の過多による一過性の流行とも思われた。そこへコロナ禍という思いもよらない禍。そのコロナ禍の終息が見通せぬ今、ますます墓石業界の低迷は長引きそうだ。
そもそも「墓じまい」や「樹木葬」「永代供養墓」「納骨堂」は、子供や孫に経済的、精神的な負担をかけさせたくないという親の思いからきている。しかし、皮肉にも「祖父母や先祖のお墓参りをしたい」という、若い世代が増えているという調査結果もある。
ところで首都圏の霊園の場合、複数社(数社~10社程度)の石材店が販売に参入するのが一般的である。その多くは従来の一般墓、つまり墓石に執着しているのが現状である。霊園参入時の投資金額を早く回収するためには、単価の高い墓石の一般区画の販売に力を注ぐのは道理といえよう。
その意味では、今号の石材特集の仏壇店の管理・運営する霊園は、殆どが単独の開発、販売である。したがって、自由な霊園(墓地)設計や販売計画が可能となる。そこで全国有数の店舗網を誇り、自社管理・運営の霊園などで実績を伸ばす株式会社ぶつだんのもりの現状と展望を聞いてみた。

管理・運営霊園「三大ロイヤルパーク」を中心に 墓石販売力の強化と知名度の向上を図る。 また独自の「永代管理墓」システムを構築する。

株式会社 ぶつだんのもり(徳島県徳島市)

代表取締役社長 岸本耕三氏
株式会社 ぶつだんのもり(徳島県徳島市)代表取締役社長 岸本耕三
株式会社 ぶつだんのもり 代表取締役社長 岸本耕三氏

コロナ禍の厳しい業界環境の中で業績への影響はどうでしょうか。仏壇および墓石の現状と今後の展望をお聞かせください。

昨年の1月〜3月に新型コロナが徐々に全国に広まり、4月7日にはついに1回目の緊急事態宣言が発令されました(関東の一都三県と大阪、兵庫、福岡)。大都市のみならず地方もステイホームや自粛ムードが広がり影響が心配されました。当然ながら弊社もイベントの中止や対面営業に気を配り、社員への感染防止の徹底など、少なからず影響を受けました。
ただ完全にストップという事態ではなく、お店に来店されるお客様が少しづつ戻ってきたのは幸いでした。仏壇にしても、墓石にしても、今後はサービスの形態も変わってくると思います。弊社ではパソコン、タブレット、スマホで簡単に依頼できる「お参り代行依頼システム」を行っていますが、いわゆるネット・SNS の活用によるサービスやテレビ CMなどの訴求も必然になってくると思います。その意味でも「ぶつだんのもり」の知名度向上の再認識と再構築が課題になってくると考えています。

御社は社名からの想像では仏壇専門店と思われがちですが、実はお墓の方も積極的に展開されており、墓石の販売実績も顕著なようですが。

お仏壇もお墓もご先祖様があってのものです。命の尊さと、ご先祖様を敬い、祀る心が大切です。弊社は昭和40年に「森木工」として創業、以来お仏壇や仏具の製造・販売を通して地域社会やご家族に、ご奉仕できればとの願いから歩んでまいりました。
今日では霊園や墓地の企画、販売にも携わらせていただいています。いわゆるトータルメモリアル・パートナーとして、お客様のご要望にお応えし社会に貢献したいと思っています。

徳島県内最大級の墓石展示場の「本店きらめき館」

では御社が管理・運営する霊園や墓地の取り組みや最近の傾向や課題などを教えてください。また「永代管理墓」システムの考え方についても具体的に。

霊園では法花ロイヤルパーク、名方池ロイヤルパーク、羽ノ浦ロイヤルパークを「ぶつだんのもり三大ロイヤルパーク」として、販売に力を注いでいます。
他に観音霊園に隣接する室内型霊園の観音聖陵も弊社の新たな試みです。いずれも少しずつ、お仏壇を求められるお客様にも認知されてきています。
特に後継者がいなくても生前に申し込みができ、石塔・お墓がずっとその場にあることで安心感のある「永代管理墓(管理料の一括払い制度)」を推奨しています。この「永代管理墓」の特徴は、文字通り50年、100年経っても追加管理費の請求はなく、管理費が値上がりしても差額の請求はありません。
また「永代管理墓」には、ご予算に考慮した様々なデザインや多くの種類を揃えています。幾つかのタイプを挙げると、石塔と納骨台とからなる一般的な形式の「石塔タイプ」。納骨室を設け彫刻プレートを貼り付ける「納骨堂・ロッカータイプ(大きさ各種)」は屋外型と屋内型があります。樹木が植栽された「樹木葬タイプ」は独立した形の石塔タイプが好評です。その他、区画に応じて自由なデザインで建墓ができる「一般墓地タイプ」などがあります。
最近は経済的にも精神的にも、お子様やお孫様に負担をかけたくないというお客様が増えています。その負担を少しでも軽減したいという発想から誕生したシステムが「永代管理墓」なんです。課題を敢えてあげるならば、たとえ葬送の形態やマナーが変わっても、『ぶつだんのもり』として、「人が人を思う真心。ほんのわずかなひと時でも、命の絆の尊さに祈りをささげる心」を伝え、啓蒙し続けることでしょう。

よく売れる価格帯、年齢層は。また国産銘石「庵治石」の産地(香川県)に隣接していますが、国産石の需要はいかがですか。

価格帯的としては 100 万円以内ですね。お墓の形態も多様化して選択肢が増えていますので、比較的リーズナブル価格設定がうけてるようです。年齢層は60~70歳でしょうか。ご夫婦での見学のほか、ご家族でこられるケースも多いようです。また最近傾向としては、メディアの影響か樹木葬タイプへの関心も高まってきています。生前建墓(寿陵)も含めて、多くのお客様が「永代管理墓」を利用されています。
永代供養墓、納骨堂、樹木葬といった多様化の中でも、従来の一般墓にこだわるお客様も一定数いらっしゃいます。庵治石は土地がら知名度も信頼度も高く、弊社の管理・運営の霊園のほか、寺院墓地でも結構多くの建墓数があります。国産石をお求めのお客様にはお勧めしやしいですね。

最後に今後の見通しについて、どのようにお考えですか。

明日への繁栄は、日頃の感謝の気持から生まれます。こうした伝統・文化を決して忘れず、次代へ確かに継承しなければなりません。こういうコロナ禍の時こそ大切だと思います。社員教育においても、一層宗教的な知識を養ってお客様に接遇できるよう心掛けていきます。

ぶつだんのもりの管理・運営霊園「三大ロイヤルパーク」ほか
  • 上質を極めた安らぎの聖地「法花ロイヤルパーク」

  • 四季折々の花が咲き誇る「羽ノ浦ロイヤルパーク」

  • みはらしの丘に広がる聖地「名方池ロイヤルパーク」

  • 徳島市の中心部、勢見町の「観音霊園」

  • 「観音霊園」に隣接する観音聖陵(納骨堂)

  • 観音聖陵の室内納骨堂の内部

月刊仏事 6月号に掲載されています

掲載記事

特集 お墓
2021.09.27