174社の出展に1万人超の来場者 多くの試みで供養業界をアピール

供養業界・終活業界における最大級のイベント「エンディング産業展2024」が今年も開催された。2015年に第1 回が開催され、コロナ禍を経て今年で第10回を数えた同イベント。昨年の第9回より、東京都内で6斎場を営む東京博善株式会社へと主催者が移り、今回は1万人超が来場し、全174 社・団体が参加。伝統仏教9宗派による「合同法要」や、タレント・石田純一氏による「生前葬」などで一般メディアも注目した今回のエンディング産業展はどのようなものだったのか、レポートしていきたい。
(文:千駄木雄大 写真:西田周平)

本誌でもたびたび紹介してきた、エンディング業界最大のイベント「第10回エンディング産業展」が8月28日と29日の2日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。同イベントには葬儀、葬祭用品、仏壇仏具、霊園、石材だけではなく、ペット供養用品/ペット用火葬炉、生花・造花、そして相続に関するブースなど、供養業界・エンディング業界周辺の多種多様な企業が一堂に集結。その数、なんと174 社。同イベントの主催者である東京博善株式会社のマーケティング部長・浜田勝俊氏はこう語る。

「課題はいろいろと残っていますが、なによりも台風が最大の懸念点でした(笑)」実は開催期間中には「観測史上最強クラス」とも報じられた台風10 号(サンサン)が接近。そのため、西日本からの来場者や国外からの出展事業者が物理的に会場に来られないかもしれないことが懸念されていたのである。

「開催前は、『もう終わった。この1年間の準備が水の泡になってしまう……』とさえ思っていました。しかし実際には台風は関東から大きく逸れ、無事に開催することができました」

結果的に開催初日は、事前の天気予報を大きく覆す快晴。会場となった東京ビッグサイトからは、日光が乱反射する美しい東京湾を眺めることができた。さらに、来場者数は過去最大の1万3000人超。

かように大成功を収めた「第10回エンディング産業展」の全貌を振り返りたい。

新しい試みの多言語対応やコンシェルジュ機能の反響

主催者が東京博善株式会社に替わって2 回目となった今回のエンディング産業展では、出展社側に「集客」「単価UP」「人材確保・育成」という「3つのソリューション」を事前に掲げてもらっていた。そして、それに沿ったブースに来場者を案内できるよう、コンシェルジュデスクを用意。東京博善のコンシェルジュたちが常駐し、来場者の経営課題にマッチしたブースを紹介してくれたのだ。

そのほかにも、エンディング産業展の公式サイトで事前に来場者登録をすることで当日の商談アポイントやセミナーの事前予約が可能になる「商談予約機能」や、海外からの来場者に向けた「通訳アシスタント」の設置、さらに各ブースにはQR コードが準備され、英語あるいは中国語のテキストと音声で、その出展企業の業務内容やソリューションを紹介してくれる「多言語対応」など、多くの新しい試みがなされたのである。「商談予約機能がどれほど機能したのかについての来場者からの評価は、現在集計中です。

しかし、『実際にその機能がどれだけ利用されたのか?』ということもありますが、こうしたサービスを主催者がきちんと準備したということが、今回の高評価につながったのではないかと感じています。つまり、ホスピタリティ精神やビジネス成果をきちんと重視するという姿勢ですね。これらがあることで、来場者のみなさんには、展示会としての昨年からの“レベルアップ”をしっかりと感じていただけたのではないかと思います。

コンシェルジュ機能にしても、『来場者が感じている経営課題を解決するための事業者ブースに案内する』というのが当初の狙いでした。しかし、実際にはコンシェルジュデスクというよりも、インフォメーションデスクとして機能したというのが正直なところです。とはいえ、確かに過去のエンディング産業展では、会場内にこうした“総合案内”の機能はなかったため、これはこれでよかったのではないかと思います。ほかの展示会では意外と、このようなサービスはそもそもないですからね」

コロナ禍への“リベンジ”仏教9宗派の「合同法要」

さらに今回の目玉企画となったのが、伝統仏教9宗派による「合同法要」であろう。セミナー会場のひとつに大きな祭壇が準備され、天台宗、真言宗古義(高野山真言宗、真言宗東寺派)、真言宗新義(室生寺派、豊山派、智山派)、浄土宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗から僧侶約30人がいっせいに登場。各宗派ごとの儀式や祈祷による法要を営んだのだ。

「エンディング産業展には多くの供養業界の事業者、来場者が参加しているため、“故人を弔う場”としても非常に意義があったと思っています。というのも、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大していた当時、家族にも看取られずに亡くなる方も多かった。そのころの無念な思いが、この業界に関わる者、特に聖職者たちの中には強くあるのです。

自分たちの仕事の意義が存分に発揮できない時代のもと、聖職者それぞれの心のなかには『もっときちんと、しっかりと供養したい』という思いがあったのでしょう。そこで、我々の提案にも賛同いただいて、伝統仏教9宗派に集まってもらい、今回の合同供養を実現することができたのです」(前出・浜田氏)

棺の中から石田純一が登場 「生前葬」で東尾理子の“弔辞”

また、今回のエンディング産業展で最大の目玉イベントとなったのが、タレント・石田純一さんの「生前葬」であろう。先述の仏教9宗派による「合同法要」が開催されたのと同じイベントステージで執り行われたこの生前葬では、石田さんがこれまで出演してきた映像作品が会場に設置されたスクリーンに流されたのち、2人がかりで運び込まれてきた棺から、タキシード姿の石田純一さん本人が登場。古くからの友人からの“暴露話”ビデオレターが上映されたあとには、妻でプロゴルファー・タレントの東尾理子さんによる、本人を目の前にした“弔辞”が読み上げられ、会場は大いに湧いた。


「石田純一さんの生前葬を企画したのは、『一般の方に終活の重要性をもっと伝えたい』という理由からです。それによってこの業界の市場はより拡大し、その発展にもつながってもいくわけですから。生前葬を私は『最大の終活』だと考えています。だからこそその生前葬を著名人に行ってもらうことによって、ますます終活の重要性が伝わればいいなと思っていました」(同)


ちなみに、なぜ石田さんだったのだろうか?

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

この記事の全文は月刊終活 10月号に掲載されています

掲載記事

終活
2024.10.15