存在がサステナブル。錺金具の可能性を探る新たな挑戦

金属を加工し装飾する錺金具(飾り金具)の技術は、時代の求めに応じてさまざまな分野の装飾を担ってきた。株式会社竹内では、その存在を広く知ってもらおうと主要事業の社寺の錺金具や金物の製造・修理のかたわら、ブランド「錺之-KAZARINO-」を立ち上げ、現代の暮らしに応じたさまざまなアイテムをリリースしている。その過程や目指すところを同社2 代目社長の竹内直希氏に聞いた。(取材・文:北 千代)


KUYURI(写真は真鍮タイプ)は、錺金具の製作技術と学生の現代的な感覚のデザインを共存させた、金属製の蚊遣り。

学生たちの柔軟な発想をカタチに


錺之-KAZARINO- ブランドの靴べら。装飾として伝統文様が刻まれている。

日本の夏、お盆の光景と蚊取り線香のくゆる煙の香りをひと連なりの記憶として持っている人も少なくないだろう。蚊取り線香を備える蚊遣りも、そんな日本の夏の風物詩である。陶器製の蚊遣り豚は庶民的な姿だが、錺金具竹内の「KUYURI」はちょっとよそゆき顔。

錺金具(※)の技術で、風流な細工が施されている。KUYURI は、株式会社竹内(京都府/代表取締役・竹内直希)、京都精華大学(京都府)の学生と、有限会社セメントプロデュースデザイン(大阪府/代表取締役・金谷勉)の協業で企画された。金谷氏は日本の伝統工芸の職人が培ってきた技術を現代的なプロダクトに活かすプロジェクトに携わっている。その取り組みを踏まえた講義を京都精華大学で受け持っており、実践の場として学生がプロダクト案からデザインまで企画したものを、株式会社竹内が錺金具の技術を応用しKUYURI を商品化した。2019 年の発売開始とともにSNS で発信したところ『Yahoo! ニュース』にも取り上げられ、見事にバズった。毎夏の定番商品として好評を得ている。

※神社や寺院の屋根の側面や襖の取手・調度品の角などにみられる金色の金具のこと。本文内にあるとおり、時代によって用途や姿を変え、使われてきた。

挑戦しがいのあるプロダクト


KUYURI(写真は銅タイプ)は、ホテルなどの雰囲気を重視する場でも用いられている。

それにしても、なぜ蚊遣りだったのか?

「学生たちが考案した実用的な商品の中でも、特にデザインが優れていたんです。実現させるには苦労するだろうな、という予感はありましたが、それよりも挑戦してみたいという思いが上回ったのです。蚊遣りという着眼点もよかった。神社仏閣から離れた生活の場で錺金具にふれることで、多くの人に広く使ってもらえると考えました」

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

この記事の全文は月刊終活 10月号に掲載されています

掲載記事

終活
2024.10.08