コロナ禍を振り返り、顧みることからアフターコロナの可能性を切り拓く

1月に入り、感染者数も激減、死者数が0の日も数えられるようになって、1年半以上もの間、社会生活にさまざまな制限を強いてきたコロナ禍にも終息の兆しが見えてきました。今回は、本誌で『仏事におけるサブゼロホスピタリティ』を連載中の安東徳子氏にこの2年間に及ばんとするコロナ禍とその影響について、振り返っていただくとともに、コロナ禍がもたらした今後への課題についてお話しいただきました。

コロナ禍による停滞から、ニューノーマル構築を経て、アフターコロナで発展するために

安東徳子氏

少人数化だけでない、「コロナ禍がもたらしたこと」

2020年1月以降、新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大し、2021年末現在まで、社会生活も産業も様相を一変しました。当然のことながら、人が集まることが避けられない冠婚葬祭業にも、大きな影響を与えています。
それではこのコロナ禍は、葬儀業界に対して、何を問いかけたのでしょうか?
売り手の目線でいえば、葬儀の規模のスケールダウン、それに関連業種とりわけ葬祭装花の売り上げダウンといったネガティブ要因が多く挙げられます。しかし、もっと俯瞰的視点に立てば、コロナ禍による社会変革によってもたらされたものも多いはずです。
一方、買い手の目線に立つと、本誌9月号から掲載されている、鎌倉新書のコロナ禍の葬儀についてのアンケート調査結果が参考になります。顧客意識において特に注目すべきは、心残りだったことについてです。やはり事後のご葬家には「故人と親しかった方々を呼びたかった」などの後悔があったことが見受けられます。こうした声を、今後にどれだけ生かしていけるかが、コロナ禍がもたらした今後の葬儀やご供養におけるヒントに、そして葬儀業界全体の業績回復のヒントとなります。
本稿では、コロナ禍によってどういったヒントが得られ、今後にどのように活かすべきかについて順を追って考えていきたいと思います。

コロナ禍の「3つの期」を振り返って

ではまず、コロナ禍の全体像を把握するために、この2年について振り返ってみましょう。
2020年1月に、日本における新型コロナウィルス(covid-19)感染者が確認されましたが、いわゆる「コロナ禍」の始まりは、2020年2月27日だと考えられます。この日、日本政府から全国の小中高に対して3月2日からの臨時休校要請が発出されました。この日まで、日本人や日本居住者の一体誰が、公立の学校が全国的に閉鎖される世界を想像したことでしょうか。この休校要請は、各学校が独自に決定した休校よりも、国民全体のメンタルへの影響が大きいものでした。つまり、これまでに想像し得なかったことが起きたことによるメンタルショックです。
現時点で振り返ると、このショックの大きさから、葬儀においても必要以上の過剰反応をすることになったといえるでしょう。そのことにより、2月27日の休校要請発出に始まり4月7日の緊急事態宣言で、社会活動が完全に停滞した際に、「冠婚葬祭は必要緊急のことである」という考えにもっていけなかったという、業界の悔いが今に後を引いているはずです。
その原因は、もちろん、社会的に必要とされ受け入れざるを得なかったという面もあります。しかし、先に述べたように休校要請のメンタルな影響が尾を引き緊急事態宣言に必要以上に過剰反応してしまった面も否めないでしょう。
2020年2月27日に端を発したコロナ禍は、感染拡大状況と政府対応のタイミングによって、「3つの期」に分かれます。

「3つの期」の時期と特徴は次の通りです。

(1)完全停滞期

20年4月7日に事実上のロックダウンになって以降の第一波・第二波の時期で、志村けん氏、岡江久美子氏ら芸能人の新型コロナウィルスによる死去が報じられたことも日本社会に大きな衝撃を与えました。新型コロナウィルスの実態も明確には解明されていなかったため、明確な対応策も講じることができませんでした。葬儀においても、施工による感染拡大への危機感もさることながら、働き手自体の感染リスクに対して、大きな不安を抱えていた状態でした。事実上の葬儀業界停滞期だったといえます。

(2)ニューノーマル構築期

第一波とその後の第二波が一応の終息を見せ、東京都内でもGOTOキャンペーンが始まった2020年10月1日以降、第四波が落ち着くまでの時期です。新型コロナウィルスの実態も徐々に把握できるようになり、感染対策についてもいわゆる三密回避や手指消毒など具体化が進みました。葬儀業界でも感染対策情報を取り入れた施工システムを作るニューノーマルの構築期だったといえます。

(3)ニューノーマル安定期

2021年6月下旬頃から始まった第五波を経て、緊急事態宣言が終息した現在はこの段階です。第五波により国内の感染者数は8月に過去最多(第四波の最多数の約3倍)となる大規模な感染状況でしたが、社会生活は完全停滞状態には戻りませんでした。ある程度の具体的なニューノーマルのスタイルが見えてきたといえるでしょう。葬儀業界においては、参列者の数はいまだに少人数を保った状態で、結果として家族葬、直葬の増加傾向はますます進んでいます。安定期だからこそ、これからどうすべきかを本格的に考え実践する段階に入ったといえるでしょう。

月刊仏事 12月号に掲載されています

掲載記事

特集 葬儀
2021.12.21