家族観・死生観を高めた人に提案する終活・供養のための家系図

人は、人生のある時点を過ぎると内面で家族観·死生観が高まるという。子供が結婚する、孫が生まれる、あるいは伴侶を失う···そうしたきっかけから日常の時間とは異なる時間軸に自分の存在を位置付けたくなるというのだ。
“私はどこから来て、これからどこへ行こうとしているのか?”
そうした人たちに家系図の制作を提案する株式会社トラディション・ブルーは、NHK総合テレビ「ファミリーヒストリー」にて、多くの著名人の家系図作成を手掛けてきた専門会社である。代表の秦政雄氏は、この事業を「ファミリーアイデンティティの構築に向けた家族情報の集積サービスを提供する」というミッションにもとづいて活動。終活事業者・葬祭事業者と協力して、家系図を作るビジネス・文化を日本に創っていきたいと語る。

株式会社トラディション・ブルー代表 秦 政雄 氏

ファミリーアイデンティティのための家系図

「人は生まれた時、最初に家族というコミュニティに触れ、成長すれば親を、結婚すれば伴侶を、子供が生まれれば子供を、自分よりも優先して生きるという側面があります。それをもっと長い時間軸で見て自分の存在を確認する――それがファミリーアイデンティティであり、自分の家の家系図が欲しいという動機になります」
そう話す秦氏によれば、欧米では家系図の制作サービスがビジネスとして普及しており、大きな市場ができているという。日本でも家系図に対する認識が正しく広まれば、今後、ニーズがさらに高まる可能性がある。

NHK総合テレビ「ファミリーヒストリー」の制作に協力

その兆候の一つが、毎月1回放送されるNHK総合テレビ「ファミリーヒストリー」の人気と評価である。音楽家・芸能人・スポーツ選手など、有名人の家族の歴史を描き出すこのドキュメンタリー番組は、取材力・調査力の質の高さで評価されており、テレビ界の各賞も受賞している。
もともと不定期に放送されていた同番組は、2012年からレギュラー番組になったが、そのレギュラー化に伴い、トラディション・ブルーは家系図の調査に携わることになった。認知度の高い番組づくりに貢献してきたこと、また、終活が広く普及してきたことが相まって、家系図の制作を依頼する人たちはますます増えてきている。

家系図の制作方法

同社が提供するのは、まず戸籍調査による一般家系図である。日本では明治4(1871)年に明治政府が富国強兵策に基づいて、税金の徴収と徴兵を目的に戸籍を作り、国が国民を直接管理するようになった。「うちは大層な家柄ではないので…」と思っている人でも、基本的に日本の国民であれば、少なくとも明治期以降ならば戸籍を調べて家系図を制作するのが多くの場合に可能となる。
これよりさらに詳細かつ深いルーツを求める人には、現地調査による本格的家系図を作ることができる。明治以前の江戸時代は徳川幕府による政策で、お寺が檀家制度を設けて地域ごとに住民を管理していた。従って墓石や寺に遺されている過去帳·お位牌などを調べて、その家のルーツを辿るのが可能なのである。

家系図のニーズの傾向

家系図の制作を依頼するのは、50代から80代の、いわゆるシニア層が大半を占める。男女比は半々。少数ではあるが、30代・40代の若年層が両親へのプレゼントとして利用する場合もある。
タイミングとして多いのは、事業体の経営者である親が子に事業継承する時だ。特に戦前からの「老舗」「本家」「オリジナル」などを名乗る店や会社にとって家系図を作り、家族の情報を把握することは必須とも言える。
また、冠婚葬祭や出産、家族旅行などのライフイベント、あるいは最近は、墓じまいの際、お墓の代わりに家系図を作り、家族情報を取っておきたいというニーズも多い。
さらには、子供の頃、親が調べていたのを見た影響で、ずっと自分の家系が気になっていた人、年齢を重ねたことによって自分のルーツが気になり出した人などが、おもむろに作り始めることも少なくない。冒頭で記したように、人には一生のどこかで家族観・死生観が急激に高まる時期がある。そこに家系図という選択肢があると選び取ることが多いようだ。

一般家系図(2 系統)

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

月刊終活 2月号に掲載されています

掲載記事

終活
2023.02.23