4月14日は“よい死の日”——。新たにそう宣言された“記念日”に、東京・渋谷で明るくポップな死のお祭り「Deathフェス」が開催された。死についてオープンに語られる場には年代を問わず多くの人々が集まり、この“文化体験”を楽しんだ。チャレンジングなこのイベントは、超多死社会を迎える日本に、どのような波紋を巻き起こすのだろうか?
若者の街というイメージが強い東京・渋谷だが、実際にはこの文化・流行の発信地に集まる人々の年代は幅広い。映画・演劇・音楽・アート、そして食事やショッピングをまんべんなく楽しめることがその要因だろう。最近は外国人観光客も増え、国際色豊かな人たちがストリートを行き交う。その渋谷の中心エリアにある、文化と商業の複合施設「渋谷ヒカリエ」においてこの4月、「Deathフェス」なるイベントが開催された。
ヒカリエ8階の会場に足を踏み入れるとまず目に入るのが、黒地に蛍光色のポップなロゴ、そしてピンクを強調した棺桶とその装飾。その向こうには、トークセッションやワークショップを行うステージまで設置されている。
大きなアートギャラリーのような空間は開放的で、多くの人が自由に行き来できる。入場料は無料。大半のプログラム(トークセッションやワークショップなど)も無料なので、終日楽しむ人もいれば、怖いもの見たさで少しだけのぞいてみる人もいたようだ。
このDeathフェスは「一般社団法人デスフェス」なる団体が主催し、「生も死もウェルビーイングに」「4月14日を“よい死の日”に」という理念のもと、4月13日から18日までの6日間にわたって開催されたもの。入場者数は20代から90代まで約2000人だったといい、中には大阪、名古屋、新潟といった遠方から足を運んだ若者らや、新聞記事の切り抜きを持って訪ねて来た高齢者もいたという。
多数の来場者を集めた背景には、渋谷ヒカリエという施設の魅力に加え、インターネット上でのPRのほか、ラジオ(J-WAVE『別所哲也TOKYO MORNING RADIO』4月4日OA)や東京新聞(4月9日付朝刊)などのメディアで事前に紹介されたことも大きかったようだ。
主催者は開催趣旨として「『死』をタブー視せずに、人生と地続きのものとして捉え直すこと」を訴求し、年齢や個別の事情によらず、誰もが迎える死というテーマをきっかけにして、今をどう生きるかを考える「生と死のウェルビーイング」のためのイベントであると、Deathフェスを定義。また、愛や感謝、つながりなど、死というテーマには本来、生をポジティブに照らす側面があるのだということも説いた。