15ヵ寺が協力して神奈川県内のお寺を行脚するユニークな企画を推進

かながわ佛立寺院ネットワーク(本門佛立宗第4支庁神奈川布教区15カ寺)は、仏教に対する素朴な疑問を親子で楽しく学べる、ブッキョークイズラリー「答えはお寺にあり!」を8月6日(土)から12月31日(土)まで実施している。
人々の宗教離れが進む時代だが、その中で少しでも仏教に興味を持つ人たちに向けて、複数のお寺を巡ってカジュアルなスタイルでお寺体験·仏教体験をしてもらおうという試みだ。横浜・川崎を中心とする京浜地域と鎌倉・小田原を中心とする湘南地域、そして県央の大和・相模原に広がる15ヵ寺の代表として、鎌倉市にある顕証寺(信清宏章住職)を訪ねた。

顕証寺
信清宏章住職

湘南の海を望む墓苑· 樹木葬

顕証寺は湘南の海のパノラマで有名な、江ノ島電鉄・鎌倉高校前駅と七里ガ浜駅の中間の線路沿いにある。どちらの駅からも歩いて5分足らずの距離だ。
境内は小高い丘になっており、すぐ隣に墓苑が、その上には樹木葬霊園があり、江ノ電の線路と道路(国道134号線)の向こうに海を望むことができる。イングリッシュガーデンを思わせるコンパクトな樹木葬霊園は、首都圏でも屈指の人気だ。
波音に踏切の遮断機、電車の走行音、車やバイクの走行音などが混じり、“湘南ならではの音楽”を奏でるが、墓苑や樹木葬霊園にいると不思議と静かな気持ちになり、潮騒だけが耳に響いてくるようだ。

墓苑
樹木葬
樹木葬

本門佛立宗と顕証寺の歴史

神奈川県最初の拠点

鎌倉新書のウェブサイト〈いいお墓〉にも掲載されている、この樹木葬霊園が開かれたのは2018(平成30)年。4年前のこと。墓苑は1999(平成11)年に開かれており、さらにそこから遡ること半世紀あまり。この顕証寺の歴史は戦後間もない1947(昭和22)年から始まっている。その前身だった大正時代の「鎌倉親会場」は、神奈川県内における本門佛立宗の最初の拠点だった。

在家信徒の自宅に僧侶を招く「お講」から発展

本門佛立宗は、幕末の1857年(安政4年)、本門法華宗の僧侶だった長松清風氏(日扇聖人)が在家信徒のみで開いた本門佛立講が発展した宗派である。当初は在家信徒の自宅に僧侶を招き、題目を口唱して祈願や先祖供養を行う活動をしていた。
従ってお寺という建物を必要としていなかったのだが、唯一、日扇聖人が1869(明治2)年に借り受けた京都の宥清寺だけが、各地の僧侶・信徒が集まれる学問所(のちに佛立修学所と呼ばれるようになる)として機能していた。
ちなみにこの宥清寺はもともと本門法華宗のお寺だったが、日扇聖人が借り受けた当時は廃寺同然の状態だったという。それを修繕・掃除をして使っていたのだ。

京都· 宥清寺

親会場から寺院に昇格

活動が全国各地に広まり、講組織が増えてくると、大勢で集まれる拠点が欲しいという信徒の訴えから親会場があちこちに作られた。そして、1931(昭和6)年に宥清寺の本堂が再建され、大本山となった。それに伴い、各地の親会場も次々とお寺に昇格。
終戦後、本門佛立宗は本門法華宗から分離独立して、日本の仏教の一宗派として認められるようになった。
現在、本門佛立宗は国内に300ヵ寺を置き、海外にはブラジル、韓国、台湾、アメリカ、オーストラリア、スリランカ、イタリア、フィリピン、インド、そしてネパールと10カ国に拠点を置いている。

第四世住職

こうした歴史の中で大正初期から湘南地域の信徒の拠り所だった「鎌倉親会場」は現在の場所に移転し、新たに顕証寺として再出発した。戦後昭和の高度経済成長期に生まれ育った信清住職は、2009(平成21)年より第4世住職に就任。「鎌倉親会場」の時代から数えると7人目の教務者になり、現在、約350軒の檀信徒を抱えている。
また、一昨年(2020年)には横須賀市にある信常寺の第3世住職にも就任し、二つのお寺の兼任者として忙しい日々を送っている。

横須賀市・信常寺

ユニークな「ブッキョーTO THE PEOPLE」活動

本門佛立宗ではこれまで檀信徒に向けた活動を大事にしてきたが、将来的なことを考え、世間一般の人たちに対しても今まで以上に門戸を開き、教義をより具体的にわかりやすく訴えていきたいと、新しい活動を始めている。それが「かながわ佛立寺院ネットワーク」の活動だ。活動の手段として、まずこの5月に公式の専用ホームページ「ブッキョー TO THE PEOPLE」をオープン。複数のコンテンツがあるが、15カ寺全体で取り組む企画のメインとしてブッキョークイズラリー「答えはお寺にあり!」を8月6日(土)から実施している。
これは一般の人たちの、仏教に対する素朴な疑問を15問、クイズとして掲載し、それぞれ指定された神奈川県内15のお寺に行って、答と解説が書かれたカードを手に入れるというユニークなキャンペーン。カードにはQRコードも記載されており、アクセスすると法話のページを見られるようになっている。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 10月号に掲載されています

掲載記事

お寺
2022.10.25