1983年(昭和58)に組織された当初より、一貫して「お墓の大切さ」を消費者に訴求し続けると共に、全国の加盟店の販売促進支援を行ってきた一般社団法人 全国優良石材店の会(通称:全優石)の吉田岳会長に、弊社の代表取締役社長COOの小林史生がコロナ禍の状況分析、今後の業界展望についてお話をお聞きしました。特に同会の新イメージキャラクターに起用された名取裕子さんの広告戦略、同会が進める「地域密着大作戦」等について、熱い思いを語っていただきました。
新イメージキャラクターに名取裕子さんを起用で消費者、主婦層目線でのメッセージを情報発信また「地域密着大作戦」という考え方を導入、地域別の小売店のニーズに適した広告戦略を展開
一般社団法人 全国優良石材店の会 会長 吉田岳氏
仕事量の減少はコロナ以外にもお墓の簡素化の影響も大きい
小林:コロナ禍が2年近く続いておりますが、お墓をとりまく環境や消費者の心理などについて、どのように分析されていらっしゃいますか。
吉田:会員の皆様からは、コロナが発生して最初の大きな波がきたときは、本当にパタッとお客様がこなくなったと伺っていました。仕事量が大きく減ったという話も非常に多く聞いておりましたから、大きな影響が出たと感じています。
しかし、今年の夏、秋くらいからお客様が戻ってきているという話を伺っています。また、確かにコロナの影響もあるが、仕事量が減少している一番の理由は、コロナとは別のところにあるのでは、という声も多くの会員さんより伺っています。
小林:それはどういったことなのでしょうか。
吉田:確かにコロナによって仕事量が減っている。お墓の建立数も減っている。ただ、コロナ前から起きている「お墓の簡素化」の影響によってお墓の需要が、納骨堂や散骨などに流れている。この動きの方がはるかに大きいとおっしゃるのです。
お墓の簡素化について、本当にお客様がすべてを知った上で選択されるのなら、これは仕方がありません。しかし、いいところだけを切り取った偏った情報から、お墓はいらないと判断しているのではないか。もしそうだとするならば、我々業界がお墓の大切さや、お墓を建てることの意義、素晴らしさなどの情報を、きちんと発信することができれば、お墓の方に戻ってこられるお客様は決して少なくはないと私は思っています。こうした問題の本質が、コロナによって見えなくなっていること、そしてその結果業界全体で適切な対策を怠ってしまっていることを危惧しています。
新イメージキャラクターに女優の名取裕子さんを起用
小林:ここからは、これから全優石さんの活動についてのお話を聞かせてください。全優石さんでは、新しいイメージキャラクターに女優の名取裕子さんを起用されるということですが、その背景を教えていただけますでしょうか。
吉田:これまで全優石の広告では、例えば、テレビドラマで石材店主を演じられた小林亜星さんや、世界を代表する石材建造物ピラミッドの権威であられる吉村作治先生らに、「全優石なら間違いない」「お墓のことなら全優石にお任せください」というようなメッセージを発信していただきました。こうした広告展開によって、実際に大きな成果を挙げることができたと自負しております。
しかしこれは、お墓を建てることが当たり前だった時代に有効な施策だと考えています。お墓を建てるけれども、どのお店にしようか迷っているお客様に対し、著名人を起用した広告により安心感や信頼感を与え、加盟店への来店を促すという考え方です。
しかし、今はどうかというと、ここ数年お墓の建立数よりも「墓じまい」の方が多くなってきたという話をよく聴きます。さらに、お墓ではなく納骨堂、樹林墓、散骨などを選ばれる方も増えているという現状があるわけです。こういう時代に、先ほどのようなメッセージを発信しても、お客様の共感を得たり、加盟店への来店客数を増やす効果にはつながらないのではないでしょうか。そこで、コロナ禍のなか、常任理事会で約1年間かけて検討を重ねてきた結果、これまでのような業界側から押し付けるようなメッセージではなく、消費者自身の心の内の声を代弁することで、消費者に自ら「お墓の大切さ」に気づいていただくと共に、そうしたことに気づかせてくれた全優石に対する信頼と共感を獲得することを目指す広告に方向転換しようという結論に至りました。
また、最近の傾向として、最終決定は旦那さんであっても、財布のひもを握っているのは奥様で、その影響力は大きい、というお話もよく会員さんから伺います。そうであるならば、主婦層が自己投影し、共感できるような広告にするために、女性タレントに主婦を演じていただくテレビCMを製作しようということになりました。人選にあたっては、オピニオンリーダーのようなタレントさんにお墓の大切さをしっかりアピールしていただくべきだ、という意見もあったのですが、それでは、これまでの「押し付け型」の広告と変わりありません。今回は、あくまで消費者、特に主婦層に共感いただくことが目的ですから、主婦を演じることができるタレントという視点で検討を重ねた結果、最終的に日本を代表する女優であり、知名度も高い名取裕子さんに決定しました。また、名取裕子さんの事務所が、たいへん好意的で通常であれば、全優石との契約ですので、それぞれの加盟店が自社のホームページやチラシなどに、名取裕子さんの画像などを使用することはありえないのですが、全優石のロゴとセットとなっている所定の画像であれば、個店でも使用できることをご了承いただいたことも決め手の一つとなりました。
地域別の小売店ニーズに適した「地域密着大作戦」を導入
小林:全優石さんというと、どちらかといえば小売店さんを支援するといったイメージがあります。そういった形にとらわれず、時代の変化に合わせて顧客起点に変化しているということでしょうか。
吉田:基本は小売店さん起点です。全優石は会員さんからお預かりした会費を扱って活動しているわけですから、当然会員さんにメリットのあることをしていかなければなりません。では、何が会員さんにとってのメリットか。皆様、ご商売をされているわけですから、一人でも多くのお客様に会員さんのお店にお越しいただくこともその一つだと思います。そのためには、おのずと消費者の立場で考え、消費者に共感していただける情報発信が必要だということです。それと同時に、我々は、モノ売りではなく墓守という意識でおりますから、儲かれば何でも有りなのではなく、お墓参りを通じてお客様に心の満足を得ていただくことが基本中の基本だと考えています。
小林:本質的な主旨、目的としては小売店さん支援、そのやり方が時代やお客様の状況によって、変えていくということですね。
吉田:今年から「地域密着大作戦」という考え方を導入しました。たとえば全優石は、38年前に創設以来、主な活動の一つとして、テレビCMの放映を実施して参りました。本部で著名人を起用したテレビCMを製作し、各支部は、そのCMを放映して販促活動に役立てるという活動です。これは非常に大きな成果をあげてきました。実際に現在でも多くの支部がテレビCMを流しています。
テレビCMの影響というのはそれだけ大きいのですが、これには地域差があります。同じ会費を収めていただいているのにテレビCMを流す支部と流さない支部とで、メリットの有無が出てきてしまう。同時に、昔と違ってお客様のニーズが非常に多様化してきています。そうしますと、お客様の共感を獲得するには、テレビCMだけではなく、WEBやリアルイベントなど、複合的なアプローチが求められます。
そこで、先程申し上げた「地域密着大作戦」です。本部でテレビCMも作ります。動画も作ります。ポスターも作ります。新聞広告用の素材も作ります。チラシ用の素材も作ります。ですが、これらの何を使うかは支部の実情によって異なりますから、各支部の皆さんでお選びいただく。地域に密着した、ニーズに合った広告展開を行っていただくのです。
建墓、お墓参りを通じて家族の絆を深めたい
小林:全優石さんとしては、全国の小売店さんを支援するという位置づけで、その状況に応じた販促ツールの使用をしっかり応援するということですね。最後になりましたが、業界に向けて一言お願いします。
吉田:コロナ禍、お墓の簡素化とダブルパンチで正直、業界は厳しいと思います。しかし、我々が携わっているお墓や葬儀というものは、日本人がずっと大切にしてきた精神文化を体現しているものです。お墓の大切さ、先祖への気持ち、家族の絆をつないでいく。そういう尊い仕事をやらせていただいているということを常に心の中に持っていただきたいです。
そして、これからもお墓をお建てになられる方、代々お墓参りを通じて家族の絆を深めていかれる方に対する仕事を、自信をもってやり通していくということを、皆さんと一緒に共有しながら来年以降も頑張っていきたいと思います。