鳴本石材株式会社/代表取締役社長 鳴本 太郎 氏
2014年に先代の鳴本哲矢氏(現相談役)から社長を引き継ぎ、代表取締役社長に就任。2年前に創業50周年を迎えたのを契機に、多様化する時代に即応できる斬新な新たな経営理念を策定。人材育成により豊かな人間形成を図り、「いいヒトいいモノいいカイシャ」を目標に、社会貢献の実現に向けて始動。卸業者として、メーカーとして、価格競争ではなく価値競争に徹し、業績の向上に向けた小売店との製販一体の実現を目指す、同社のこれまでの経緯とさらなる展望を、鳴本太郎社長に語っていただいた。
商社として価格競争ではなく価値競走の時代に対応
本日はよろしくお願いします。ここ3年ほど、石材業界はコロナ禍で厳しい状況です。御社の加工工場は国内でも最大級の規模ですが、現在の稼働状況はいかがですか。また、外材と国産材の比率も教えてください。
鳴本:おかげさまで、フル稼働しています。中国からの輸入品の検品も行っておりますので、その修理や手直しもありますが、一から加工する商品のほぼ全ては弊社がメインに取り扱っている大島石を中心とした国産材です。
国産材は比較的に好調ということですね。
鳴本:そうですね。弊社の場合、大島石、天山石といった西日本の高級国産材に力を入れていますので、なおさら期待値も上がります。特に国内加工となりますと、加工の品質に関しては小売店様からのご要望も高いものになりますで、大変気を遣うところはありますね。
工場も最先端設備を導入されていますが、そういった品質などの期待値が絡んでくるわけですね。
鳴本:もちろん、効率化など考えると自動化の機械など設備投資も必要になります。小売店様のニーズがさまざまですし、加工基準も石質基準も違います。石材は品質の線引きが非常に難しい商品だとは思いますので、小売店様のニーズになるべく合うように心がけています。
例えば、「鳴本プレミアム墓石」というブランドを立ち上げ、国内加工の国産材をずっと勧めてきました。おかげさまで、“メイドインジャパン”というひとつの付加価値が選択肢として浸透してきたという実感があります。その背景には、中国加工品のコスト上昇ですとか、そういった環境要因も、もちろんありますが。
付加価値商品につねに目を向けるということですね。
鳴本:昔がモノづくりの時代だとすれば、今はモノあまりコト不足の時代といわれます。お墓というモノとしての価値を考えたときに、いかに付加価値をつけるかというところで、素材の付加価値、加工の付加価値、デザインの付加価値に分かれると感じています。
素材であれば、たとえば国産材ですとか、加工であれば国内加工ですとか。あるいは最近開発したのはレザータッチといった特殊な加工をしていますし、デザインであればデザイナーズ墓石といったことも行っています。あるいは、素材×デザインの付加価値で国産材のデザイン墓石もあり、いろいろなシリーズ展開をしています。
これらはすべて、価格競争ではなく価値競争の時代において、小売店様の商売繁盛、業績向上にお役立ていただくための弊社の役割を考えた結果といえます。通常の商品ももちろん扱うのですが、小売店様に少しでも付加価値のある商品を扱っていただいて、業績向上に貢献できるような商品を開発することも、我々メーカーの役割だと思っています。この点は今後も継続していきたいですね。
創業50周年を契機に一年かけて経営理念を策定
一昨年、2021年の6月に創業50周年を迎えられたそうですが。
鳴本:そうですね。弊社は1971年6月に先代の鳴本哲矢(現相談役)が、岡山県笠岡市北木島で北木石の延材(外柵等)を加工する工場としてスタートしたのが始まりです。営業力と商社機能を強化し今日に至っています。
卸業者としては小売店のパートナーとして、メーカーとしては国内の採石産地はじめ、原材料や製品を仕入れる商社として、おかげさまで創業50周年を迎えることができました。
2014年に社長に就任して迎えた創業50周年ですが、具体的な施策を教えてください。
鳴本:残念ながらパーティの類はできませんでしたが、50周年を機に、弊社の会社の在り方というのをもう一度見つめ直すことができました。社員も若返りを図りつつある中で、次の時代を担っていく幹部社員と一緒に一年かけて会社の新たな経営理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定しました。10年後にありたい姿というのを一緒に考えて、「いいヒトいいモノいいカイシャ」という、ビジョンができ上がりました。
そして、バリューとして、鳴本石材の社員として大切にしたい考え方、価値観、行動指針みたいなものを41項目作り、冊子にしました。会社のぶれない軸を作り、現在それを浸透しつつあります。敢えてロゴマークも刷新し、新キャラクターを創りました。
墓石業界に身を置く商社として、メーカーとして、いかにこれから業界、お客様のお役に立てていくのかというのを、もっともっと追求していきたいと思います。
墓石離れをどこで食い止められるのか、何か方法があるのか、そういう意味では、小売店の確実な鳴本石材ファンを作ることが大切かと思いますが。
鳴本:営業のテーマとしては、我々はあくまで小売店様の業績向上パートナーとして、ただ商品を卸すだけのメーカーではなく、共に業績向上を目指すパートナーとして選ばれるようになっていかないといけないと考えます。
そのためには、一にも二にも人材育成だと思っています。ですから、ビジョンの最初を「いいヒト」にしたんです。モノづくりの会社ですが、モノを作るのも販売するのも人ですからまずは「いいヒト」を目指さないと、いいものもできませんし、いい会社にもならないと思いますので、とにかく人づくりです。人がすべてだと思っていますので、そのためには経営者である私自身が常に成長していく姿勢を見せていかないといけません。常に変化していく姿勢、中身をどんどんアップデートする姿、そういった成長をまずは私自身が背中で見せていきたいなと思っています。