大分県臼杵市の特産品カボスを生かしたオリジナル線香「USUKI SENKO」で大切な人を弔う

大分県臼杵市の仏壇店「山本鳳凰堂」は、2021年8月2日よりカボスを原料にしたオリジナル線香「USUKISENKO」の販売を開始した。江戸時代に臼杵市で栽培が始まったとされているカボスは、町の人々に愛される大分の特産品だ。「地域の暮らしに根付き、愛されている臼杵の地もので喜んでいただける商品をつくりたかった」と語る5代目当主の平林真一社長に、同商品のコンセプトや今後の展望について伺った。

山本鳳凰堂(大分県臼杵市)

5代目当主 平林真一氏
山本鳳凰堂5代目当主 平林真一氏

カボスの絞りカスを生かして商品に

USUKISENKOは、大分県民の「カボス愛」から生まれたと平林社長はいう。
「カボスは大分県にとって特別な果実です。仏壇屋らしい地元の特産品をつくり、自分たちの生活に由来した香りを仏さまにお供えしてほしいと思い、USUKISENKOの商品化に乗り出しました。線香の原料となるカボスの絞りカスは、市内のふぐ料亭から提供していただいたものです。ふぐ料理用ポン酢に使った後の絞りカスを乾燥させて粉末化し、線香に練り込みました」
初回の製造数は800個。売れ行きは好調で、8月2日に店頭と同店のネットショップで販売を開始したところ、約650個が飛ぶように売れたという(2021年8月12日時点)。5年かけて売る計画を立てていた平林社長にとっては嬉しい誤算だった。「想定より圧倒的に反響をいただき、驚いています。とくに、ネットで全国から100個ほどご注文をいただいたのは、まったくの想定外でした。大々的な告知をしていたわけでもなく、メディアへの露出も少ないので、どんなルートから商品を知っていただいたのかはいまだに分からずじまいです」
カボスの絞りカスが手に入るのは冬時期であることから、「しばらくは製造をストップせざるをえない」と平林社長。「需要に供給が追いつかず、申し訳ないと思っています。しかし、『捨てられるはずのものを、大切な誰かのものに』というも当商品の大切なコンセプトなので、まだ使えるカボスを絞ることはしたくない。今後は、年末に製造入り、年明けから春彼岸くらいに商品ができて、お盆までに販売するようなサイクルをつくり、旬ものとして販売していきたいと考えています」

臼杵の特産品としての価値

仏具としてだけでなく、特産品としての価値ももつUSUKISENKO。平林社長は「当商品を通して、大分県、臼杵市の魅力を発信していきたい」と語る。「ぜひ旅行にいったときにお土産として買って帰り、ご先祖さまに『臼杵に行ってきました』とご報告していただきたいです。そのためにも、在庫が確保でき次第、県内のJRの駅やホテル、空港などに営業をかけ、置いていただけたらと考えています」

1箱15グラム入りのUSUKI SENKO。価格は1,320 円。

コロナ禍で得た新たな可能性

商品の構想は5年前からあったが、調合の難しさから研究は進んでいなかったという。しかし、コロナ禍で人の行き来が寸断される中、「大切な人への贈り物として使ってほしい」との思いからあらためて注力し、この1年で開発が具体化した。
「コロナがなければ、発売までもっと時間をかけていたかもしれません。『いまだから販売したい』と思うようになりました」また、コロナ禍で始めた「オンライン線香づくり」の取り組みも、商品化を後押ししたきっかけだと平林社長はいう。
「もともと弊社では、観光客を対象とした『線香づくり』のワークショップを店頭で行っていました。コロナ禍以降は、事前にお線香づくりのキットを配送し、zoomを使ってワークショップを行うようになりました。その中で、『実家に帰りたいけれども帰れない』『これまで面倒だと思っていたが、香りを仏さまにお供えしたくなった』という声をお客さまからいただいたことで、商品化への思いがより強まっていきました」
オンライン線香づくりには、フランスをはじめとする海外からの参加もあったという。「この経験から、日本のお線香やフレグランスは海外でのニーズがあることがわかりました。今後はフランス語のオンライン線香づくりをパッケージ化するなど、海外向けの商品やワークショップもつくっていきたいです」

オンライン線香づくりの様子

オンラインでつながることの重要性

仏壇が小型化し、ネットで仏壇を売買するのが当たり前になった現代において、平林社長は「人とのつながり」をより強化する方向に舵を切ったと話す。
「インターネットによって、これまで小さな商圏でやってきた商売が、一気に全国へと広がっていきました。しかし、弊社のようにホームページを充実させられるような人件費をかけられない街の仏壇屋が、資金力もマンパワーもある大手の企業と情報発信力で戦うのは厳しい。ならば、出会った人とのつながりを強化し、弊社や私を含めたスタッフのファンとなっていただける人を増やすのが急務だと考えるようになりました。まさに地道なゲリラ戦といったところです」
そのためのキーとなるのが、「オンラインでのつながり」だという。
「オンラインの良さって、お客さまと直接お話できるところにあると思います。実際、少数人数でワークショップを実施したところ、参加者の方とすごくつながることができると実感しました。仏壇業界にはまだ敷居の高さがあるからこそ、直接知っていて、信頼できるところから購入したいと思っている方は一定数います。今後はよりオンラインでのご縁づくりにも力を入れ、供養で困ったときに相談していただけるよう、信頼関係を構築していきたいです」いま仏壇仏具業界は過渡期にある。だからこそ、「柔軟な姿勢をもち、お客様のニーズに耳を傾けるお店でありたい」と平林社長は語る。
「仏壇仏具業界は『仏式という正解』がある商売だったので、ともすれば『こういう決まりだから』と居丈高になりやすい部分があったと思います。しかし、住宅環境や家族のあり方に大きな変化が起きて以来、弔い方の多様性が広がり『仏教式の弔い方もひとつの選択肢』という捉え方が増えてくるように思います。
今後仏壇仏具業界に求められるのは、ご遺族の方が望まれる弔い方をしっかりヒアリングし、一緒に考えていけるような柔軟性だと思います。その上で、ユーザーから『やはり仏教の弔い方が』と言っていただけるよう、私自身も学びを深めていきたいと考えています」 

月刊仏事 9月号に掲載されています

掲載記事

仏壇
2021.09.27