【エンディング業界2022年のチャレンジ】一般社団法人 日本石材産業協会 会長 森田浩介氏

「業界の厳しい状況を、コロナのせいにしない。」2020年6月に一般社団法人 日本石材産業協会の会長に就任された森田浩介氏は、そう警鐘を鳴らされました。弊社の小林史生との対談で、「3団体で意見を交換しながら、お客様の安心と信頼に繋げていきたい」など、業界の発展に向けた意気込みをお話しいただきました。

「コロナのせいにしない」問題と向き合い、団結して業界を盛り上げていく

一般社団法人 日本石材産業協会 会長 森田浩介氏

コロナによる影響について

小林:2020年6月に会長に就任されましたが、新型コロナウイルスで大きな影響を受けました厳しい年になりましたね。コロナによってこの2年間、お墓を取り巻く環境や消費者の心理はどのような影響を受けたでしょうか。

森田:この2年間、業界全体では厳しいことも多かったです。しかし、石材業界は大きな影響に当てはまることは少なかったです。法事の時期が例年と変わり、人数が減るなどの変化はありましたが、お墓そのものはそこまで影響を受けなかったと認識しています。

小林:コロナの影響によって、お客様の価値観や感覚に変化があったと思います。そのなかでも注意すべき意識(ネガティブ要因)はありましたか。

森田:まず、葬儀に関しては規模が縮小したことで大変大きな影響を受けました。お客様がこの小規模な葬儀やこのやり方で充分だと感じてしまうことで、それ以降の仏壇や墓石にも影響がでてきています。この2年間で実際にそのような声を聞くことは多々ありました。

小林:反対に、これから期待をもてるプラスの意識(ポジティブ要因)はありましたか。

森田:自宅にいる時間が増えたことでお墓参りに行く回数が増えたという声も多少聞いています。葬儀に関しては規模が小さくなりましたが、葬儀の内容に少し変化が見られました。今までは参列者に意識が向いていましたが、一般葬が難しくなり、家族葬はさらに縮小され、ほんのわずかな家族だけでの葬儀が増えました。しかし、そのぶん故人とのお別れが以前よりも丁寧になったように感じています。

小林:葬儀での家族の関わり方にも変化があったのですね。故人と向き合う時間が増えることで家族の時間も増えますし、より深く関われる貴重な機会になりますね。

石材を取り巻く環境

小林:これからの日本はいわゆる「多死社会」を迎えますが、一方で、消費者の目は樹木葬や永代供養墓に向けられる印象があります。この辺りの消費者真理の変化について、どうお考えですか。また、従来の墓石のお墓を、どのようにアピールしたいとお考えでしょうか。

森田:家族構成によって、樹木葬や永代供養墓が必要であると考える方が一定数みられるのが現状であり、仕方ないと思っています。しかし、マスコミや石材業界がお客様の要望をミスリードしてしまうことがあります。ミスリードをしないために、私たちはきちんとお客様の話を伺って、説明しなくてはいけないと思っています。

小林:コロナの影響によって、中国からの供給も常に安定しているわけではない、という状況の再認識もありました。そんな中で、国産石材の採石や加工の強化は重要だと考えられます。何か強化策などはお考えでしょうか。

森田:そうですね。もちろん国内加工は非常に重要な位置を占めると考えています。今までは小売店が仕入れる立場にあるため、加工業者や商社は対等ではないと考えてきました。しかし、あらゆる業種でも当てはまりますが、プロダクトアウトの意識が強まっていると感じています。おそらくこの先、すべてのメーカーがプロダクトアウトできるとは思えないが、しっかりとした技術やこだわりをもっている商社はプロダクトアウトが実現できるのではないかと思います。小売店としては、そのような商社も尊重して商品をお願いしていく姿勢が今後益々重要になると私は考えています。

小林:今後、メーカーも強みを磨いていくことが重要になりますね。

これからの石材業界と石産協の活動

小林:今後、業界としてどのような取り組みが必要だと思われますか。また、その中で石産協の果たす役割は、どんなことでしょうか。

森田:今後、石産協は小売店の立場で、お墓のある暮らしが豊かであるということを一般のお客様に伝えなくてはいけませんし、協会の中では常に強調してきました。今年も一般社団法人全国優良石材店の会・全国石製品協同組合・一般社団法人日本石材産業協会の3団体で意見を交換しながら、厚生労働省の散骨ガイドラインに提言をしました。業界として大切なことだと思います。また、2021年から石材産業協会ではお墓相談の中で多かった契約トラブルの対策として、小売店のレベルを上げるために墓石契約ガイドラインを策定しました。まだまだ浸透していないので、力を入れていきたいところです。提供側のレベルが上がることはお客様の安心と信頼に繋がると考えています。

小林:垣根を越えて業界を盛り上げていく姿勢が感じられますね。

森田:コロナ禍の2年間でこの業界も大きく変化したことがありましたが、私はコロナのせいにしてはいけないと思っています。今年も皆さんで一丸となって業界を盛り上げていきましょう。

月刊仏事 1月号に掲載されています

掲載記事

特集 お墓
2022.01.04