「日本一働きがいのある石材商社」を目指す若き社長に聞くベトナム工場新設の“次の展望”

 株式会社オクノは、石材事業における“川上”から“川下”までの垂直統合システムを保有する、業界でも稀有な総合墓石卸売業者である。1975(昭和50)年に「奥野石材商会」として岡山県笠岡市にて創業し、現在の株式会社オクノは2016(平成28)年に創業満40周年を迎えた。2023(令和5)年2月には、ベトナム・ビンディン省に墓石専門工場を完成させており、ここ近年、積極的に生産拠点の分散化を図っている。同社を率いる奥野社長に、株式会社鎌倉新書代表取締役社長 小林史生が、海外進出の経緯から今後の展望や想いなどについて聞いた。

国内・中国・ベトナムに工場を展開! 墓石の石材商社オクノ

株式会社オクノのビジネス概要

小林:株式会社オクノの事業と、奥野社長ご自身のこれまでの歩みについて教えてください。

奥野:株式会社オクノは 1975(昭和50)年に創業し、2023年で47期目を迎える石材商社です。私の父である奥野千秋が設立し、2012(平成24)年に世代交代をして、私が2代目として受け継ぎました。かつては西日本を中心に石材を供給しておりましたが、2020(令和2)年には山形県の株式会社ナイガイ様との間で事業譲渡契約を結び、それを機に関東エリアでも大口のお取引先様とのご縁をいただいたことで、現在では積極的に全国展開させていただいております。西日本と東日本では様式や価格が異なるなど、文化の違いを感じることも多く、なじむまでには時間を要しましたね。

海外での展開。中国への進出は1990年代

小林:中国進出の経緯などについて教えてください。

奥野:法人設立前は韓国や北朝鮮でも石材を確保していた時代もあったようですが、1988(昭和63) 年のソウルオリンピック以降、中国に注目し始め、1990年代初頭に中国へ進出しました。父の出身は岡山県笠岡市にある北木島という瀬戸内海の島でして、石の産地であり、かつては石材業が隆盛を極めた場所です。当時は日本各地からの石をこの島へ運び、 加工する時代でした。しかし父は早い段階から、コスト面などから海外での石材事業の可能性を見出し、海外へとシフトしていったそうです。当社は品質、価格、安定供給のバランスを大切にし、顧客ニーズに沿ったご提案ができることを強みとしております。

ベトナム工場の設立。きっかけや現状

小林:昨年2023(令和5)年のベトナム工場設立の経緯を教えてください。

奥野:当社は1992(平成4)年に福建省の厦門、そして1997(平成9)年には遼寧省の大連に事務所を開設し、中国ではこの2カ所での生産を行ってまいりました。しかしながら近い将来、日本向け墓石の供給拠点となっている福建省での一極集中生産のリスクが増大する可能性を強く感じ始めたんです。ゆえにここ近年は生産拠点の多極化をテーマとし、昨年から大連生産のインフラを強化し、また“チャイナプラスワン”の視点で第三国となるベトナムに着目し、2011(平成23)年頃から往来を重ねてきました。根幹となる考え方としては、「いかなる状況でも、石材商社として安定供給できるインフラを構築する」という想いがあります。

ベトナムの墓石を扱うメリットは?

小林:小売店にとって、ベトナムの石材を使うメリットはどんな点にあるのでしょうか?

奥野:石種については白御影2種とピンク系3種、赤系1種の計6石種からのスタートとなりますが、価格面においては、中国の同ランク石種と比較しても安価で提供できる体制を準備しています。また品質面においては“ジャパンクオリティ”を実現できるよう、当社の地元の自社工場から継続して職人を派遣し、技術指導を行っております。また石材業界で軽視できないのが、台湾有事です。有事の可能性は極めて低いと考えていますが、仮に中台が緊張状態に陥った場合には、まさしく台湾の対岸にある厦門港が封鎖される可能性は高いでしょう。封鎖された段階で、出稼ぎ労働者は地元に避難してしまうそうです。このようなもろもろのリスクを踏まえて、ベトナムのtakumino工場だけではなく、昨年には中国・大連工場のインフラも強化しました。将来のリスクに対して真剣に考えておられる販売店様は、“保険”の意味も込めてベトナム石材を取り扱いたいと言ってくださいますね。

視聴者・月刊終活の読者の皆さまへ一言

小林:では最後に、「月刊終活」読者に向けてのメッセージをお願いします。

奥野:当社は品質、価格、安定供給のバランスに自信を持っており、そこが強みだと自負しています。この業界も従来は競争社会でしたが、今はそういう時代ではありません。一社単独ではなく、他社様と何かしらの“共通点”を見いだし、シナジー効果が生まれる取り組みを同業者の方とも進めていきたいと思っています。同じ時代に石材という共通素材でともに切磋琢磨する、“同志”のような意識で業界をともに盛り立てていけたらと考えています。販売店様におかれましては、先々に備える意味でも、我が社の大連加工の墓石やベトナム墓石をぜひご検討していただけたら大変うれしいです。

――奥野さん、本日は本当にどうもありがとうございました。

インタビューの全文は月刊終活 11月号に掲載されています

掲載記事

お墓
2023.11.23