少数精鋭で8件の樹木葬霊園を開発 社員5名の石材店、拡大の源泉に迫る!

 社員5名と小規模ながら、関東各地で計8件の墓苑開発を手がけている石材店が静岡県熱海市にあるという。自社内に工場を持ち、銘石とされる本小松石を手がける“少数精鋭”のこの会社の勢いの源とは?若き“2代目”に話を聞いた。

二見尚弘代表の息子である二見大地氏。

 静岡県熱海市で1988年に創業した総合石材店、湯河原石材株式会社は、社員数5名という“少数精鋭”の石材店だ。その“精鋭”のひとりである二見大地氏は、同社の“2代目”。同社はもともと、二見氏の父であり、現在同社の代表取締役を務める二見尚弘氏が、地元石材店に就業した後、独立して創業した石材店なのだ。同社は、湯河原町に近接する神奈川県真鶴町で採石される「本小松石」を取り扱う石材店ということでも、広く知られている。

「創業当初は、本小松石のお墓がよく売れていたと聞いています。その後、外国産の石材が流入するようになり、シェアを拡大していきました。石材業界のそうした変化にともない、我が社も外国石材を扱うようになりました。ただし、本小松石を求めるお客様が途絶えるということはありませんでした」

 そう語る二見氏は、本小松石を取り扱うほかの企業と自社との違いについて、「石の加工工場を持つ石材店は最近では珍しくなりましたが、我が社は自社工場を持っています。そこが大きな特長ではないでしょうか」ととらえている。ゆえにこそか、自社で加工を行う際には、石の製品を造っているという意識ではなく、「本小松石に価値を感じていただいている方々に対して、そのご家族全員の思いを込めたお墓を造る」という気持で取り組んでいるのだという。

 また、「今では、ウェブで本小松石というワードを検索して、私たちのところにたどり着く方も多くなっています。我が社は公式サイトを、地元の他企業に先駆けて、10数年以上前から立ち上げていました。小売店さんなどからのご紹介だけではなく、サイトを通してお客さまが直接コンタクトしてくれるようになったということも、我が社の事業の大きな転換点になっていると思います」
一方で同社は、本小松石以外の案件にも平行して取り組んでいるという。

「石材商社さんなどからの、本小松石の卸、石材加工、字彫などのご依頼も承っています。また、地元のお寺さんとのお付き合いも大切にしているので、お墓の建て込みや納骨、追加字彫りなどにも対応させていただいています。こうした形でお寺さんとの関係を深めていく中で、多くのご住職が、継承者がいない一般のご家庭が増えていることを懸念しておられることがわかってきたんです」

湯河原石材株式会社は、1988年に静岡県熱海市にて創業。現在の所在地は静岡県熱海市泉96-5で、代表取締役は二見尚弘氏。本文に登場する二見大地氏は、尚弘代表の子息で、大手仏壇店および墓石販売会社での勤務を経て同社に入社。

離檀者増加という寺院の懸念 みずから樹木葬墓地を開発

 お墓を継ぐ人がいないために、今あるお墓を墓じまいしてお寺から離檀する方。あるいは、子どもはいるものの、お墓を継ぐ負担を子どもにかけたくはないという方。こうした人が増えているという事実を前に二見氏は、寺院が抱えるこうした懸念を払拭するために、ひいては自社を存続させていくために、どうすればよいのかということに考えを巡らせていくこととなる。

 そして湯河原石材は2019年、同社とは付き合いの長い地元の古刹・保善院(静岡県熱海市)の境内地に、継承者不要の「いずみの郷ゆがわら樹木葬墓地」を建設することとなった。同社による寺院住職への提案が実現したのだ。この樹木葬墓地は、同寺で墓じまいをした方々のご遺骨の引越先としても、活かされていくこととなる。同社の積極姿勢が奏功したのだ。

 観音様が中央に鎮座するまわりに、墓域が広がる。完成した「いずみの郷ゆがわら樹木葬墓地」は、そうした形状の樹木葬墓地である。50年間の個別埋葬後に合祀されるプランで、1区画に2名ないし3名を納めることができる区画タイプを揃えている。そしてもちろん、それぞれの区画に立つ石碑は、丸い形状の本小松石だ。

 この石碑を本小松石で造ることは、同社の強みをおおいに活かすことになった。墓地だけでなく石材も販売することができれば、石材店の本業にも反映されることになるからだ。
二見氏は語る。

「プランを立てるのに3カ月。GOサインが出てからも、着手までにさらに3カ月ほどの時間を要しました。石材商社さんと組んで、樹木葬の設計を進め、商社さんを通して石材を確保し、仕入れた石材を加工し、契約書などの関係書類を準備し、さらにはチラシやインターネットを活用した広報活動まで、幅広い分野の業務を手がけることになりましたね」

 広報活動には、これまでの経験がおおいに役立ったと二見氏は語る。

「今までの経験則から、樹木葬のメインターゲットは車で15分圏内、半径3km以内であろうと。なのでチラシはこの範囲内に絞って配布しました。ウェブについては、お墓のポータルサイトなども活用しながら集客を図りました」

 結果、「いずみの郷ゆがわら樹木葬墓地」は大きな反響を呼び、多くの人に求められることとなった。チラシやウェブの広報活動も奏功したのだろうが、実際の購入者に対して利用者のさらなる紹介をうながす活動を地道に行ったことも販売に貢献したのではないかと、二見氏は分析している。こうして「いずみの郷ゆがわら樹木葬墓地」は、第二期「心」エリアの販売も開始するにいたったのである。

緑と鮮やかな花々が美しい「いずみの郷ゆがわら樹木葬墓地」。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 5月号に掲載されています

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お墓
2024.05.14