自治体の長である飛騨市長 都竹 淳也氏に行政サイドからの終活支援の取り組みについて聞いた。前例にとらわれずに「全国初」の改革を次々に行い、市政に新しい風を送り続ける都竹市長の終活施策とは。
飛騨市長 都竹 淳也氏
飛騨市が終活支援に力を入れるきっかけ
小林:都竹市長が終活支援に取り組んでいこうと思われたきっかけを教えてください。
都竹:飛騨市は高齢化が進んでいるので、亡くなる方も多い。また、一人暮らしの高齢者が増えていて、都市部にいらっしゃるお子さんが家財道具や家や財産、相続問題で困っているという話も市民の方から聞いていました。
犯罪被害者支援という狭い枠組みではなく、愛するご家族や身近な人が亡くなった方へのサポート、さらに終活支援という大きな文脈の中で行うべき課題だと考えたのがきっかけです。
終活ならではの支援上の課題
小林:終活の取り組みの中で苦労されていることはありますか?
都竹:ほとんどの人が終活の必要性を感じるのは、自分が年をとってきて、いよいよ自分の最後を考えないといけないという時期です。しかしそのころはすでに高齢で、根気強く物事を調べたり、細かい書類を読むことが難しくなっています。これからは50代60代といった比較的早い時期から終活に取り組むことが必要だと考えています。
「空き家問題」に対する飛騨市の取り組み
小林:自治体として終活の課題というと最近は空き家問題があると思います。飛騨市の空き家問題の対策も教えてください。
都竹:空き家は飛騨市でも非常に大きな課題になっています。私たちは「飛騨市住むとこネット」という市の空き家情報サイトを作って、物件のマッチングを支援しています。このサイトは国土交通大臣表彰受賞も受賞して、全国的にも高い評価をいただいています。空き家を活用して住みたいという移住希望者の方もたくさんいらっしゃるので、人気の物件はすぐに売れてしまいます。最近は空き家をリノベーションしてゲストハウスにしたり、ワーケーション専門の宿やシェアオフィスとして生まれ変わった例もあります。
飛騨市が目指す自治体としてのあり方
小林:これからの終活支援センターや飛騨市の未来についての展望をおねがいします。
都竹:終活支援センターでは、今後はご遺族の方の精神的なサポートも強化していきたいと考えています。これは飛騨市全体の取り組みにも通じていて、飛騨市では総合福祉課というものを作って、生きづらさを感じたり、困りごとがある人をすべての人生のステージでの支援を進めています。最終的には飛騨市は弱い立場の方への支援、弱い方々が安心して暮らせる町にしたいです。
この目標には到達点というものはないのですが、それにずっと挑戦しつづけていくというのが私たちのひとつのテーマです。そしてそれが広く伝わってくれて、飛騨市はいい街だなといってもらえれば、そこがひとつ目指す未来なのかなと思います。