「火葬事業公営化」から「区民葬廃止」まで質疑応答で回答/東京博善トップ記者会見ルポ③ 

       
葬儀
2026.03.07

 株式会社広済堂ホールディングスの常盤誠社長、東京博善株式会社の野口龍馬社長による説明会に続いて、記者による質疑応答の場が設けられた。記者らからは、昨今の報道を受けての率直な質疑が矢継ぎ早に投げかけられたが、主に東京博善の野口社長により、丁寧な回答がなされていった。1時間以上におよんだ会見の一部始終を全3記事に分けてリポート、今回はそのパート3。(構成:有馬ゆえ)

記者会見には20社以上のメディア企業が集まった

●質疑1「夕刻葬」について

テレビ朝日記者 東京博善は2025年年12月から、夜間帯に火葬を行う「夕刻葬」を開始しました。あらためてその詳細と反響について教えてください。

東京博善・野口社長 12月から、この桐ケ谷斎場の式場『雪1』で夕刻葬を始めました。この式場は通常は、前日の夕刻のお通夜から翌日の告別式が終わるまでのお貸し出しが通常のルールです。しかし昨今、葬儀のあり方が変わり、お通夜をせずに告別式と火葬のみで済ませる「一日葬」のニーズが高まっています。そこで我々が開始した夕刻葬は、前日の夕刻から式場を貸すのではなく、夕方18時から告別式、19時から火葬を行い、20時半まで火葬をお待ちいただく間に会食の時間を挟み、収骨してお帰りいただくプランです。狙いは、ニーズの変化に対応することと、19時に火葬を始めることで、通夜のように故人を思い出したり懐かしんだりする場を提供すること。夕刻にお食事を提供するという葬儀社さんの従来のサービスを維持できることもあります。

 現在、それなりの件数はご利用いただいているものの、まだ認知度がそれほど高くない。今年度はトライアルとして、まず桐ケ谷でテスト的に実施した後、2026年2月からはほかの6つの斎場でも実施する予定です。

●質疑2「中国資本問題」について

テレビ朝日記者 火葬で得た利益は親会社に配当していないとのことでしたが、「中国人が東京都の火葬料金をつり上げている」というSNSなどの声もあります。その真偽と、こうした声をどう受け止めているかについて。

東京博善・野口社長 東京博善の親会社である広済堂HDに、いわゆる中国資本が入っているということについて、いろんなご意見をいただいていることは存じ上げております。広済堂HDはプライム市場に上場していますが、そもそも日本の上場企業の3割以上には外国資本が参入していることは、みなさまご存じの通りだと思います。東京博善は広済堂HDの100%子会社ではあるものの、中国資本による影響は受けていないと考えています。

 次に、火葬料の値上げについては、弊社では、2021年に5万9000円から7万5000円に火葬料金を改訂しています。現在、火葬の原価は8万円という状況ですが、2021年当時においても5万9000円というのは大変厳しい価格帯でした。その後、燃料費が高騰し、燃料サーチャージにあたるような変動的な料金を導入しましたが、2カ月に1回、火葬料金を変動させる仕組みは葬儀社さんなども含めて混乱を招くものだったため、2024年に9万円という価格に定めたという経緯があります。

●質疑3「行政による経営管理」について

日本経済新聞記者 東京都は今、料金を含む火葬場の経営管理への指導を可能とする法改正を国に求めています。価格届け出制などの制度が導入された場合、それを受け入れるお考えがあるかどうかお聞かせください。

東京博善・野口社長 東京都が国に求めている法改正についてどうなるかは定かではありませんので、国による介入がどこまであるかはわかりかねるところです。ただ実は、かつては火葬料金届け出制は存在しており、その後なくなったという歴史はございます。一方で、先ほどA・T・カーニーさんのレポートにありましたように、火葬料金にも原価はあるため、適正な料金設定であるならば東京都と協議して決めていきたいと思っています。火葬1件あたりの利益が1万円といった形では書かれていますが、やはり今後、死亡者数がピークを迎える2065年、またその先を踏まえると、設備投資は不可欠です。極端にいえば、火葬場の建て替えなどとなると、大きな資金が必要になってきます。我々の所有する斎場の中でいちばん新しい四ツ木斎場の建設費は約120億円かかりましたが、現在の建築費でいうとその倍、またはそれ以上ともいわれています。民間企業でそれを賄っていくことも考えながら、適正な火葬料金について協議していきたいと思っています。

●質疑4「行政への協力」について

日本経済新聞記者 今後も行政に協力していくというお話がありましたが、具体的にどういう点で協力をしていくのでしょうか。

東京博善・野口社長 我々の各斎場を所轄する6区の保健所さんへの情報提供と質問回答は、毎年行っております。昨年もこの時期に監査を受けまして、検討中のいくつかの点についてのお話があり、ご承認をいただきました。今年度はまだやっている最中です。それとは別に、先ほどの通り、12月には東京都から第1弾の調査レポートの依頼があり、すでに回答しております。第2弾のご質問状が来るということも聞いておりますので、回答して情報開示するという形での協力は、ひとつあるかと思います。その上でどんな協力ができるかについては、都とのこれからの協議次第になります。

 また、弊社は東京都と「広域火葬協定」を締結しており、災害時に東京都で多くの方がお亡くなりになられたときに、火葬が滞りなく行われるよう協力することになっています。それ以外のところでも、協力できる点については協議をしていきたいと考えております。

近隣火葬場の料金(東京) 資料画像はすべて東京博善提供

●質疑5「火葬原価と適正料金」について

読売新聞記者 我々の取材では、地域料金、例えば大田区の臨海斎場であれば4万4000円という価格は原価計算に基づいていることがわかっています。今回のレポートによれば、そもそも民営斎場は公営斎場よりも原価が高くなってしまう仕組みだという理解でよいのでしょうか。また、火葬原価8万円に対して1万円の利益を確保していることが適正なのかどうか、お考えをお聞かせください。

東京博善・野口社長 公営斎場には当然、法人税や固定資産税といった税負担がありません。これがもっとも大きなところだと思います。火葬1件あたりの利益の1万円という価格が適正かどうかは、なかなか判断がつきづらいと思っています。広済堂HDの決算説明をご覧いただければわかる通り、2024年度の公益事業における収支は1500万円の黒字ですが、その前年は赤字でした。また今期も昨年より今年度は亡くなる方が95%程度と少なく、その分、固定費の割合が高くなるため、今期は9万円いただいても赤字になっています。グロスの収益においては、そもそも決して大きな収益が上がる事業ではないということがご理解いただけるかと思います。

A・T・カーニー担当者 人件費、燃料費など火葬1件あたりのオペレーションコストは、臨海斎場では約3万6000円で、地域住民利用料金は4・4万円で、この額は、コストとバランスを取って設定されていると考えられます。3万6000円というコストは、臨海斎場をオペレーションするためだけのコストで、その他のコストは自治体などが歳出しているケースが多いです。一方で民間企業である東京博善では、個々の斎場のオペレーションコストのほか、設備投資の減価償却、販売管理費、租税公課がかかり、8万円という数字になっています。それらがかかっていないことを、『公営斎場には公費負担分がある』と表現しているわけです。

 同じ公営斎場といっても、かかっているコストに対して実際にどういう料金設定にするかは、自治体ごとに考え方が異なります。大田区の臨海斎場の利用者負担は3万6000円ですが、東京都日野市営火葬場のように0円のところもあります。かかったコストを利用者にも負担してもらうのか、利用者負担は抑えて、事業としてのマイナス分は公費負担で税金を投入するのかが公営斎場では考えられますが、民営斎場ではそれがないため、東京博善さんは9万円という価格が許可されているのだと思います。

●質疑6「自治体への要望」について

読売新聞記者 一方で、23区内の方々が9万円という高額な火葬料を支払うことになっているのは事実です。東京都日野市のように全額自治体が負担している地域もあるなかで、東京博善さんとして自治体に求めたいことは。

東京博善・野口社長 東京都では、公営斎場と民営斎場が共存している状況が長く続いてきています。9万円という価格を高いというご指摘をいただくことはあるかと思いますが、その点に関して、自治体さんに我々が何かを求めるというのは、現時点では言える立場にはないと考えています。民営ならではのサービス、価値をどうやって提供するかに尽きますし、これまでもそうだったと思っています。

 施設の充実や利便性、火葬待ちをさせないキャパシティを作ることが重要で、民営ならではの価値を提供することに強い信念を持っています。昨年は、八王子の方では火葬待ちが15日あったと聞いています。15日間故人が荼毘に伏すことができないというのは、ご遺族の方にとって精神的にも大変負担がかかりますし、あるべき姿ではないと私は思っています。火葬までの間、安置する場合、ドライアイス代なども含め、1日当たり1万〜2万円をいただくわけです。15日間というと、15万〜30万円の安置料金が発生し、価格的にも負担になります。昨今、これだけ家族葬という言葉が浸透してきていて、葬儀の会葬者が少なくなってきております。もちろん八王子で生まれたから八王子で火葬したいというご遺族のご希望もあるかもしれませんけれど、もし東京博善まで車でお越しいただければ、2〜3日のうちに火葬できる。我々としては、そういった選択肢をご用意することが我々のなすべきことだというふうに考えています。

●質疑7「区民葬の廃止」について

フリーランス記者 2026年3月いっぱいで区民葬を終了すると発表されていますが、その経緯や背景を教えていただけますか。

東京博善・野口社長 区民葬廃止に関しましては、2025年8月の発表以降、やはり多くの問い合わせをいただいております。「そのタイミングで、5万9600円が9万円になるのは中国資本の影響ではないか」といった意見も大きく報道されました。そもそも区民葬は戦後、低所得者に向けて低価格で葬儀が行えるよう、『都民葬儀』という形で運営を開始しました。全東京葬祭業協同組合連合会に加盟する葬儀社さんのお客様に対して、火葬、搬送、祭壇という大きく3つの葬儀券権を区役所が発行し、提示された各民間事業者が自己負担で割引するという内容になっています。現在弊社では、9万円を5万9600円にさせていただいています。弊社の参加は戦後まもなくの頃で、低所得者に向けた負担軽減という制度の目的に賛同しまして、行政の補助なく実施してきました。

 しかし昨今、こうした区民葬制度の在り方についての課題認識を持ち始めました。一つは、もともと低所得者向けだった区民制度が、所得の制限なく使える制度になっていること。2つ目は、区民が全員利用できるわけではなく、一部の葬儀社を通じてのみ使える制度になっていること。弊社が登録している葬儀社は1400弱ありますが、そのうち22%しか区民葬を扱うことができません。2024年度は、区民葬は全体の12・6%で、87・4%が9万円のお値段をいただいた葬儀です。最後に、区民葬券が、火葬、搬送、祭壇のうち、実質的には火葬の割引券として使われてきた実態があることです。そこで、区民葬が開始当初と趣旨が異なるのではないかと、東京都特別区にお話をさせていただいて、協議を重ねた結果、取り扱いを終了することになりました。

 東京博善で行う火葬のうち、区民葬は過去5年平均で1割程度ですが、区民葬を廃止するにあたり、そこにかかっていた自己負担分を従来の火葬料金から値引きする形にして、2026年4月からは火葬料金を9万円から8万7000円に改定することにしました。区民葬をやめることによって、その差額の収益を懐に入れるのではなく、すべての火葬の利用者様に還元させていただきたいということです。また、現在3万9000円で行っている生活保護受給者向けの火葬は、引き続き我々が自己負担で行っていきます。

●質疑8「公的支援」について

産経新聞記者 火葬場は公営で運営されるのが自然だとする意見もある中で、都内は火葬場の新設が難しいなどの実情もあります。公的支援を受けることについてのお考えをお聞かせください。

東京博善・野口社長 8月時点では、23区で区民葬の仕組みは継続されると聞いていますし、東京博善を利用した場合に公的資金を入れることも検討されていると聞いております。その内容をふまえて、我々もどういった対応ができるのかを検討していきたいと思っています。その際に、公的資金が入るかどうかも明らかになるとは思いますが、我々としては先ほどもご説明した通り、民営斎場ならではのサービスと利便性の高さ、そしてどうやって選ばれる火葬場になるかといったところを追求していきたいと考えています。

●質疑9「民営の意義と公営化」について

東京新聞記者 東京23区内では実質、東京博善の火葬場が独占状態になっているのも事実です。価格競争があまりない中で価格設定をできるという状況を踏まえて、火葬場を民営でやっていく意義についてお聞かせください。また仮に東京博善の火葬場を公営にするというような話があった場合には?

東京博善・野口社長 ほかに民営斎場が少ないので価格競争がないとのことですが、実際はこれだけの金額差があるわけで、公営斎場を選ばれる方も当然多いわけです。そこには価格競争が発生していますし、民営同士でいえば、板橋区の戸田葬祭場さん、 府中の日華斎場・多磨葬祭場さんとの価格差もあります。民営の意義は、これまでもご説明した通りです。例えば、12月31日はいちばんご火葬が多いですが、この日に営業している火葬場は公営斎場にはありません。弊社では8時から18時の火葬をお受けしています。昨年は、埼玉から『年内に火葬したい』というお申し込みが多くありました。また12月は、4日ある友引のうち2日は営業。友引の日の火葬は、通常よりはやはり件数は少ないんです。その日に限っていえば、コストと比較するとどうなのかという部分ももちろんありますが、そういう問題ではないと我々は思っています。12月という火葬件数が多い月に、火葬待ちを発生させないためにできることをしっかり企業努力としてやるというのも、民営斎場の意義だと考えています。公営化については、具体的なお答えはまだできないかなと思っております。

●質疑10「公益事業と収益事業」について

産経新聞記者 葬儀には、公益事業である火葬以外に、祭壇や骨壺、生花の購入、会食の手配など収益事業も含まれ、どちらにも従事している人の人件費や光熱費などもありますが、どのように会計分離を行っているのでしょうか。また火葬料が5万9000円だった時期の内訳は示せるのでしょうか。

東京博善・野口社長 このひとつの建物の中で、公益事業と収益事業が混在しているというのはご指摘の通りです。そのため、いくつかの観点で費用等を按分しております。まず、火葬事業は非課税事業なので消費税が発生しません。消費税の税務申告に基づく基準があるため、それに基づいて按分されるものは、それに準じています。

 また東京博善の中には、ご遺族の方を誘導してご火葬する行事課、式場等休憩室でサービスと求人を行うサービス課、式場全体の運営を行う業務課という3つの課があります。行事課はおおむね火葬に従事するため、その人件費は公益事業の経費となります。それ以外の2つの課、また本社部門に関しては、自社で売上や利益に基づく案分比率を作り、経費を按分しております。按分のルールはあくまでも当社側のルールですが、監査法人の監査を踏まえています。例えば私の給与に関しても、業務が公益事業と収益事業と両方に関係しますから、先の按分比率に応じて、何割がどちらの経費になるかを決めています。また、どの勘定科目の項目でどのように按分しているのかという決算データは、保健所にも報告をし、ご説明しています。

 もう少しお話しすると、弊社が定めた按分比率では、収益事業の収益が大きければ大きいほど火葬原価が安くなるように設定されているんですね。逆にいうと、毎年毎年の経費においては、収益に応じて按分比率が変わりますので、大きく変動するかどうかは別として、比率が変動するのは事実でございます。火葬利用が5万9000円のときは、公益事業と収益事業を分けた会計処理はしておりませんし、その内容についても監査法人の監査は受けていませんので、分解することはできないというふうに考えております。


 テレビや新聞をはじめ、多くの報道陣が詰めかけた記者会見はこうして、予定時間を20分ほどオーバーして終了した。

 東京23区の特別区長会は、東京博善が「区民葬」を終了したのちも、区民葬の制度自体は継続され、2026年度には火葬料等の助成制度を新たに創設すると発表している。また東京都による火葬料金に関する議論も続いていく。東京都における火葬事業の継続についてどのように官民が協働していくべきなのか、これからも注目していきたい。

【編註】各質疑とそれに対する回答については、書き言葉として不自然にならないよう、編集部によって適宜編集を加えております。


パート1では「中国資本問題」に揺れる首都東京の火葬事業者の歴史について詳報
パート2では「火葬料金9万円」の妥当性について詳報