葬儀100年会「100年続く葬儀社を目指す」

全国の葬儀社から相談が絶えない絶対的存在である『葬儀100年会』と対談。上村伸一氏と師弟関係にある3名をお招きして、KAMIMURA式の誕生から、実践方法、葬儀100年会について詳しく話を伺った。

「KAMIMURA式のおくりかた」の背景にある「葬儀の在り方」

小林:『KAMIMURA式』が生まれた経緯とKAMIMURA式のおくり方について教えてください。

上村: 結婚式は笑いあり、涙あり、感動ありの儀式ですが、葬儀はなぜか涙のみで終わることが多いことに疑問を抱きました。一人の人間として、最後の瞬間が一番素晴らしくないといけないのではないか。従来の葬儀の在り方について改めて考えていました。
葬儀のなかに照明とピアノの生演奏を入れて、涙を流した後に、最後はみんなの笑顔と拍手でお見送りすることが葬儀であると気づきました。きっと故人様はこうやって送ってもらいたいのではないかと。当時の葬儀は僧侶や会葬者のお世話をすることに焦点を当てていましたが、本来は故人を思い出し、愛おしく感じられる場をつくることが葬儀社のやるべきことではないかと思います。そこでKAMIMURA式が誕生しました。

花王堂大曲葬儀社「KAMIMURA式」/東日本大震災で見た「おくり方」のあるべき姿

小林:皆様は上村師匠のお弟子さんということですね。実際にどのように取り入れていますか?

遠藤:私は葬儀業界に入った当時から葬儀社の仕事はお寺さんのお手伝いだけなのか?本当にこれでいいのか?と疑問を抱いていたところ、東日本大震災の時に秋田県の霊柩車協会は岩手県に手伝いに行きました。ご遺体の安置所にはたくさんの棺が並べられ、家族が泣き崩れている姿を目にしました。そのなかで、棺に向かって何度も「ありがとう、ありがとう」と伝えているお婆さんがいました。その時に、最後は故人もありがとうと言って送ってもらえたら嬉しいだろうと感じました。しかし、葬儀社として、どのようにありがとうの言葉を引き出すことができるのかはわかりませんでした。そこで師匠(上村氏)からKAMIMURA式の提案を受けました。これしかない!と思いました。

いばそう企画の「KAMIMURA式」/徹底的な「素振り」で師匠の哲学を体現

林:弊社の日立市のホールの隣に大手互助会のホールができたことで数年間、売り上げが厳しい時代がありました。赤字で悩んでいた時期に師匠から、時間があるなら素振りをやりなさいと言われてKAMIMURA式を毎日練習しました。素振りの内容は7歳の女の子の葬儀です。7歳の女の子の葬儀を拍手で送りだすことはまず考えられないことです。それでも拍手で送りたくなるようにやり方を教わりました。いまでも素振りは続けています。

さくらほーるの「KAMIMURA式」/マニュアル以上に重要な関係性との連携

小森: 初めて納棺の儀を見せていただいた時は驚きました。自然と引き込まれるような感覚でした。すぐに弊社でも取り入れたいと思い、マニュアルを頂きました。しかし、ピアノがなかったので、まずはピアノのCDをお借りして使いました。照明やお花入れなど、何度も練習を重ねるうちに社員が上手になっていきました。ピアノの演奏は一番苦戦しましたね。ピアノの先生に依頼をして試してみましたが、なかなか思うようにいかず…。師匠の指導されているピアノ教室の方が弊社に来てもらえたことで軌道に乗りはじめました。ピアノの業者ともうまく連携してやっていかないとせっかくの音響は雑音になってしまうので、大変注力しました。

「家族葬」に対する認識の変化がもたらしたもの

小林:コロナ禍で世の中は様々なことが変わりましたが、皆様はどのような変化がありましたか?

遠藤:15年程前から家族葬が独り歩きしている状況が続いていました。当時は業界でも家族葬を嫌っていたが、いまではあたりまえになりました。家族葬が普通になったのであれば、どのように組み立てたらいいのかと考えた時に、KAMIMURA式が合致しました。コロナ禍で家族の人数はさらに減少しましたが、その変化にもKAMIMURA式は対応できていると思っています。

時代の変化に合わせて提唱する「1.5日葬」というおくり方

上村:一般葬、二日葬(家族葬)、一日葬、直葬(火葬式)とありますが、1.5日葬を推進しています。コロナ感染者の場合は病院にお見舞いに行けずに最期を迎える状態でした。葬儀社は儲からないという理由から、本当に一日葬や直葬でいいのか?と家族に問いかけていました。しかし、その詰め寄り方は全く意味がありません。私はお客様に、最後の夜を素敵な場所でゆっくり過ごされませんか?と提案します。宗教家は来ませんが、お通夜で家族揃って思い出話をして故人を想いながらゆっくり過ごしてください。と伝えています。まずは、お客様と故人を繋ぐ提案をすることが重要です。一日葬を比べて金額の差は大きくはありませんが、良い時間を過ごすことができ、葬儀に変化をもたらします。お客様に時間をつくる努力をしていただきたいです。

葬儀100年会への思いとこれからの世代に期待すること

小林:葬儀100年会に入るにはどうしたらよいのでしょうか。

上村:みんなが長く続けられる会を発足したいと考え、葬儀100年会を創設しました。葬儀100年会が大きくなることが良いわけではなく、私たちを越える別の団体がたくさん生まれたらいいと思っています。相談を受けたらいくらでも教えますが、若い経営者たちは私たちを越えるような素晴らしい会を発足できたら良いですよね。そうしたら業界全体がいい方向に向いていけると思います。そろそろ生まれてほしいですね。

葬儀業界を「望まれる仕事」「なりたい職業」へ

小林:最後に今後の業界について、師匠からひとことお願いいたします。

上村: 日本中の方が葬儀って素晴らしい!と思ってもらえるような仕掛けをしているところです。学生の頃から葬儀社を目指す人はおそらくいないでしょう。しかし、葬儀社はいい仕事だから目指したいと思っていただけるような仕事をしていくことで、未来は変わると思います。たくさんの仕事があるなかで、葬儀はどの仕事にも負けない素晴らしい仕事だと思っています。

インタビューの全文は月刊終活 11月号に掲載されています

掲載記事

特集 葬儀
2022.11.17