ペット葬儀顧客からの人の葬儀依頼増加 直葬は葬儀担当者以外の社員全員が担当

 株式会社JA東京中央セレモニーセンター(東京都世田谷区)の2024年3月期の総売上高は15億5000万円となり、コロナ禍前の19年3月期の96%まで回復した。その主な要因は、葬儀の営業品目を増やして付加価値の高い品目の販売に注力したことや、ペット葬儀事業が好調なことなどにある。それらの要因について、丹野浩成会長に詳しく聞いた。

JA東京中央セレモニーセンターの丹野浩成会長。

 まず、御社の総売上高と、その内訳の葬儀売上高とその他売上高について、コロナ禍前と直近の決算年度の数値を教えてください。

丹野:当社は3月決算ですので、コロナ禍前は2019年3月期、直近は2024年3月期の実績でお話しします。2019年3月期は、総売上高は16億2000万円で、そのうち葬儀売上高は12億3000万円、その他売上高は3億9000万円でした。2024年3月期は、総売上高は15億5000万円で、葬儀売上高は11億5000万円、その他売上高は4億円です。

 つまり、2024年3月期は、5年前に比べて総売上高は96%、葬儀売上高は93%まで回復し、その他売上高は3%増加したということですね。その他売上高の事業はなんでしょうか?

丹野:リハビリデイサービス事業、ペット葬儀事業、遺品整理事業です。

 以下では、葬儀売上高、その他売上高それぞれにつきまして、この5年間で力を入れて取り組まれたことと、その効果や実績についてお聞きします。

葬儀売上高が93%まで回復した要因:高付加価値商品の販売に注力

 コロナ禍の影響はどの程度だったのでしょうか?

丹野:コロナの影響で1日葬は65%、直葬は20%を超えました。そのことにより、料理とギフトが出なくなり、コロナ禍前と比べ30%以上の減収・減益になってしまいました。

 30%以上ということは、4億円近い減収ということですね。大きいですね。それで、どのような手を打たれたのでしょうか?

丹野:ひとつは人件費の削減です。夜間、深夜は従来通り行いましたが、それ以外では残業をしないようにしました。

 それから、営業品目を今までのものに加えて25項目設けて、各品目の営業を強化しました。加えた営業品目は、例えば喪主花です。喪主花は、従来は3万円くらいのものしか用意していませんでしたが、現在は高いものだと10万円のものもあります。

 故人様用の数珠も1万円、2万円のものを用意して「亡くなられたら旅に出るのですから、亡くなった人専用の新しい数珠を持たせたらいかがですか」などとご説明すると共感されお求めになられます。また、経帷子も15万から20万円くらいのものを用意しましたら、年間に何枚かご購入いただけます。

 社員には、残業代分に見合った手当を支給するので頑張ってくださいという形にしました。そうしたところ、付加価値の高いものを勧めるようになっただけでなく、期せずして働き方改革にもつながりました。

 このようにうまく回り出したのですが、問題もありました。

 どういう問題でしょうか?

丹野:お通夜があって葬儀があるのが当たり前だったのが、1日葬、直葬が増えたために、お通夜が減って、社員は夜も早く帰れるようになりました。ところが、直葬が葬儀全体の2割になると、年間200件近くになりますから、ひとりの葬儀担当者が月5~6件を担当するうちの2〜3件は直葬になりました。

 直葬というのは、極端にいえば火葬だけなのに、それをある程度の高給取りが担当する事態になってしまったわけです。それでも忙しいとか、これを担当しているからほかのことはできないとか、動きが鈍くなることも起きてきました。

 これではいけないと思い、直葬は事務や車両担当など、葬儀担当以外の人たちに担当してもらうことにして、社員には「このような形にして全社一丸となって取り組まないと、会社が駄目になってしまう」と号令をかけました。

 それはちょっとドラスチックな方法ですね。直葬とはいえ、葬儀担当以外の人たちが行えるのですか?

丹野:葬儀担当以外の人たちもみなさん現場を経験した人たちで、葬祭ディレクターの資格も持っていますので、可能なのです。もちろん、現在行っている仕事をやってもらいながら直葬を担当してもらいますので、直葬1件につき1万円の手当をつけるようにしました。葬儀担当者には、直葬をやって1件やりましたなんていっているのではなく、もっと頑張ってくださいとはっぱをかけました。この仕組みがうまく回り出し、現在は好調です。

 直葬を葬儀担当以外の人たちが行うというのは、現在も続けていらっしゃるのですか?

丹野:直葬の割合は現在でも2割くらいはありますが、葬儀担当以外の人はペット葬儀担当や遺品整理担当なども含めて10名おり、直葬200件くらいは担当できますので、現在も続けています。

営業品目パンフレットに掲載された、ワンランク上の商品たち。

2日葬は施行件数構成比32%に回復

 葬儀売上高は93%まで回復してきた要因として、ほかにいかがですか?

丹野:葬儀売上高は、2019年に比べて93%ですが、施行件数では750件から830件へと11%増えています。当社では、各地域の営業実績を高めるため、女性スタッフが中心となりさまざまな地域活動をするための店舗があり、町会や商店会の会員になったり各種地域のイベントに参加したりして、地域の活性化のためにさまざまな資本を投入することで、将来の施行に繋がるようにしています。時間はかかりますが、確実な地域戦略です。

 2020年〜2021年はコロナ禍でできませんでしたが、2022年に入ってからは、地道なマーケティング活動を再開しました。

 例えば、店舗でぬり絵コンテストを開催したり、クリスマスカードを配ったりして、お店に足を運んでいただけたら、ここでは事前相談とか終活相談もできますということをお伝えします。そうすると相談に訪れていただけますし、その時に会員になっていただくと、何かあった時には会員割引でご葬儀のご依頼がきます。そういうご依頼が、各店舗から1カ月に数件ずつ本社に上がってきています。

 コロナ禍では1日葬は65%、直葬は20%を超えたということでしたが、現在はどのようになっているのですか?

丹野:1日葬は45%、直葬は24%、2日葬は32%です。

 1日葬が20%も減って、その分2日葬が増えたのですね。東京では、1日葬が5割を超えているところが多いですが、2日葬をどのようにして増やされたのですか?

丹野:組合員さんには、こちらから「きちんとご葬儀をしましょうよ」と呼びかけています。また、お寺の檀家総代や世話人になっている組合員さんも多いので、お寺さんも総代や世話人に、檀家さんに対し「きちんとしたご葬儀をやりましょうよ」と呼びかけてもらっているようです。

女性が入りやすいように心がけているという、祖師谷の相談店舗。
JAの金融店舗をリノベーションしたという家族葬ホール。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 6月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2024.06.13