「人生の最期の過ごし方」に寄り添う武蔵野市の終活・高齢者支援の取り組み

武蔵野市 健康福祉部 高齢者支援課 相談支援係 主任 坂部 一絵 氏

武蔵野市が「エンディング支援事業」に力を入れる背景

高齢者サポートに注力しはじめたきっかけは?

『武蔵野市高齢者福祉計画・第7期介護保険事業計画』の中で、団塊の世代の方が75歳以上になる2025年に向けて、武蔵野市が目指す”高齢者の姿とまちづくり”として、 “誰もが住み慣れた地域で生活を継続できる”ということを基本方針として掲げております。
武蔵野市は市民の4.5人に1人が65歳以上の高齢者です。計画策定の調査では「今は元気だが、今後状態が悪くなった場合に一人暮らしでは色々なことができなくなってしまうのではないか」という不安の声がありました。そんなお声にお応えして武蔵野市では、まだ元気なうちに ご自身のエンディング(人生の最後の過ごし方)について決定ができるよう支援をしていくため、この事業を始めました。
平成31年4月1日から「エンディング相談支援」事業を、令和元年7月から エンディングノートの配布とその出前講座を始めました。

優しいタッチが印象的な市独自のエンディングノート

 武蔵野市独自のエンディングノートの制作について

エンディングノートは令和元年7月から配布しています。令和元年度と令和2年度は民間の事業者と協定を結び、広告入りの決まったフォーマットのものを配布していました。その後、広告の入っていない武蔵野市オリジナルのものを作れないかと検討を開始しました。
令和3年5月から武蔵野市福祉公社と内容やデザインの検討をすすめ、約2ヶ月かけて市独自のエンディングノートを完成させました。令和3年8月から配布開始して、市民の方々から「見やすい」と好評のお声をいただいています。内容はシンプルを心がけ、できるだけ項目は少なく、見やすく書きやすいものとなっています。
令和4年6月、武蔵野市国際交流協会に協力をいただき、英語版と中国語版のエンディングノート(電子版)もダウンロードできるようになりました。高齢者の方もパソコン上でデータで管理をしたいという声もいただくので、今後は紙媒体だけではなくWord版やExcel版など多様な形式で気軽にダウンロードできるようにしていきたいと思っております。

終活のきっかけとお役立ち情報を提供する「出前講座」

「出前講座」について

おおむね65歳以上の市民の方(5名以上〜)を対象に、エンディングノートの書き方のポイントをお伝えし、武蔵野市の終活支援事業のご案内を行っております。令和3年度までに53回程実施しており、延べ1,046名の方に講座にご参加いただきました。

気軽に終活の相談ができる「エンディング相談支援」

「エンディング相談支援」について

エンディング相談支援は、どんな最期を望まれているのか、何から終活を始めたらよいかわからないなど、みなさんの不安な気持ちに応えるものになっています。ふらっと窓口に来ていただいて、心配ごとのお話にお応えしたり、介護保険の申請や市のサービス利用の手続き等の支援もさせていただいております。
より具体的に没後の支援サービスをご希望の場合には、武蔵野市福祉公社へ相談をお繋ぎし、具体的な支援をさせていただいています。近年では福祉公社の名前も皆様に知っていただくようになり、直接、福祉公社のほうへ相談される方も増えています。

「身近・小規模・軽快」を兼ね備えた高齢者生活支援事業

「テンミリオンハウス事業」について

2000年の介護保険制度導入を機に、武蔵野市では、高齢者が住み慣れた地域でいきいきと健康に暮らし続けていくための仕組み作りが必要ということで、地域における”共助”の一つとして、「テンミリオンハウス事業」を展開してまいりました。
地域住民や福祉団体が運営主体となっていて、武蔵野市が年間1,000万円(テンミリオン)を上限とする運営費の補助をさせていただいています。他にも、武蔵野市の市民社会協議会へ委託し、テンミリオンハウス起業や運営支援も行っています。
高齢者向けのデイサービス事業も含めているため、コロナ禍で運営ができていなかったり休止している団体もありますが、令和3年度は延べ26,455人の方にご利用いただいております。

介護予防・認知症予防のプログラムで健康づくり・仲間づくりを支援

「いきいきサロン事業」について

高齢者の社会的な孤立感の解消・健康寿命の延伸を図っており、住み慣れた地域で住民生活を送る支援を目的とした事業となっています。
週1回、おおむね65歳以上の高齢者を対象に、介護予防のための健康体操・脳トレ等を含む2時間程度のプログラムを実施します。
運営団体は地域の住民団体やNPO法人で、活動内容はサロンによって様々ですが、基本的に運動は毎回プログラムに取り入れられています。それぞれのサロンの特色を活かして、高齢者の方が楽しめる催しをやっています。高齢者だけではなく、多世代の方と交流するサロンもあります。

市民の皆様・視聴者の皆様へメッセージ

エンディング事業につきまして、終活に遅すぎる早すぎるということは一切ないので「やってみたい」「気になる」と思ったときが始め時だと思います。
特に「終活はまだ早い」と思っている方ほど、もしご興味をもたれましたら、まずはエンディングノートを買ってみる・まずは1ページ書いてみる・武蔵野市は無料で配布しているのでもらいに行ってみるなど、何か一歩始めていただきたいです。
始めていただくと、思っている以上に考えることや悩むこと、決断しなくてはいけないが出てくると思います。思った以上に体力を使うと思いますので、できれば歳をとってからではなく、元気なうちに始めていただくのが良いでしょう。
終活について悩まれた時は、武蔵野市の窓口やお電話にて、お気軽にご相談いただけたらと思います。

インタビューの全文は月刊終活 11月号に掲載されています

掲載記事

特集 自治体
2022.11.22