墓石を再利用して新たなご供養を。B・B貿易の「あいごりんとう」

 SDGsという言葉が日常的に聞かれるようになってきた。これからの企業活動には、SDGsへの積極的な取り組みも重要になる。とはいえご供養の業界では、従来からの取り組みがそもそもSDGsの理念に合致していることも少なくない。
 石材卸売業のB・B貿易。改葬時に墓石を新たなご供養のかたちに作り変えることを提案している。代表の田中稔氏に、取り組みの狙いについて聞いた。

「あいごりんとう」は、改葬した墓石や墓石に適さない石材のアップサイクルを提案している

新たな先祖供養は「宅急便サイズ」

 B・B貿易の「あいごりんとう」は、自宅に設置するタイプの先祖供養塔だ。特筆すべきは、墓じまいしたお墓の竿石を使って作れる点。企画した同社代表の田中稔氏は語る。
「お墓には一部の親族しか祀られていませんが、それ以前にたくさんのご先祖様がいたからこそ自分が生まれたわけです。そうしたご先祖様に感謝するための“よりどころ”を提案したいと考えていました。日々の感謝のよりどころにするならば、自宅に置いてほしい。自宅でも墓地でも違和感のない形や大きさがよいと、家名を彫らない五輪塔の形で企画したのが、この『あいごりんとう』です。
 当初は墓石に不向きな石材の活用先として企画していましたが、お客様から、墓じまいした際の墓石でできないかと相談があり、改葬時の再活用のご提案も始めました」
 自宅の庭や玄関先に飾っても違和感なく、成人男性が1人で動かせるサイズ感と転倒しない重量感を探ったところ、宅配便の最大サイズ(縦·横·高さの合計が200cm以内、かつ重さが30kg以内)におさまった。
「今では、『傘立てを置けるスペースがあれば置けますよ、全国どこのお客様にも宅配便で送れますよ』というのが、キャッチフレーズになっています」(田中氏)
 一般顧客への販売は、墓石店の商品展開のひとつとして行っており、墓石店からは墓じまいを考えているお客様に対する提案のひとつになると好感触だ。選択肢を増やせば、他社ではなく自社の商品内での比較になるので価格競争も避けやすい。そうした売り方を提案することで、墓石店をサポートできると考えた。
 加工後の「あいごりんとう」を宅配便で発送する際も、最寄りの提携石材店宛に送る仕組みだ。その石材店が客先へ出向いて設置するようにすれば、石材店と地元の顧客との間で、新たな関係性がうまれるからだ。

玄関先や庭先に置いても違和感がなく、移動もしやすいサイズだが、安全性を考慮して転倒しない重量は担保した

廃棄される石材は、実に90%

 加工においても工夫があると田中氏は語る。
「庭や玄関に置くには、お墓のような光沢のある鏡面加工よりも、ざらざらした質感のほうが合うことが多い。ですので形だけでなく、表面の質感も自宅に置いて違和感のないようにしたかったんです。弊社は自社工場がない代わりにいろいろな加工工場や石材店と付き合いがありますので、庭石に用いる表面加工をしてもらいました。
 お墓を作るなら1カ所に加工を依頼すればよいのですが、『あいごりんとう』は加工と表面仕上げの2カ所の工場を経由するので手間がかかります。けれども思い通りのものを作れますし、一見ありふれたもののようで、なかなか真似できない工夫ができるんですよ」
 墓じまいの場合は、墓の竿石を預かり、まずカットをして、他の工場で表面加工をする。新しい石材から作る場合は、山石店から、墓石にならずに捨てられる石材をカットしてもらい購入する。鏡面加工に向かないという理由で墓石にならずに新しいまま廃棄される石材は、実に90%を超えるのだという。 つまり、廃棄石材として安価に入手できるわけだが、石材加工料を支払うことで山石屋の経営が持続できるよう工夫している。そのため、「あいごりんとう」の価格は新品・改葬いずれも同額だ。
「あいごりんとう」以前からも、墓石店、数珠店などからの依頼で、墓じまいした墓石をお地蔵さんや数珠に作り直すことも行ってきた。また、仏壇におさまるサイズの「あいごりんとう」を作ってみたこともある。
「ご要望があれば、制限を設けずに、なんにでも挑戦してみたいと思っています」(田中氏)

鏡面加工に向かずに捨てられる石材は、あいごりんとうに用いる表面加工には適している

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 12月号に掲載されています

掲載記事

お墓
2023.12.14