最先端墓石展示場でお客様との信頼と共感を醸成

地域で営業展開をする石材店にとってお客様との信頼関係の構築は重要な課題の一つ。
墓石ショールームと工場の一体化で相乗効果を狙う有限会社あらき石材(熊本市)の最先端墓石展示場の展開を探ってみた。

農機具メーカーのクボタの跡地に建設されたショールーム(左側)と工場(右側)

5年前の熊本地震で工場2棟が全壊の判定を受け、再建した工場の敷地内にショールームを建設。お客様に両方を見ていただくことで相乗効果を狙う。

有限会社 あらき石材店(熊本県県熊本市東区)

代表取締役 荒木正人氏
有限会社 あらき石材店 代表取締役 荒木正人氏

震災後の2018年の秋には墓石の加工工場が完成。翌年の春には敷地内にお墓のショールームが完成しました(益城町広崎)。工場とショールームが一体となった事例は全国的にも珍しいと思いますが、建設に至るまでの経緯と目的をお聞かせください。

2016 年の熊本地震では弊社も少なからず被害を受け、元々あった工場2棟は全壊の判定でした。再建にあたっては、それまでの既存の工場が手狭だったこともあり、もっと広い場所に移そうと土地を探していました。たまたますぐ近くにあった農機具メーカーのクボタさんの営業所が撤退したので、その跡地を交渉して購入しました。
機械類でまだ使える既存の機械は岡山の修理業者で修理・オーバーホールを行い、新たに自動切削機と自動研磨機を導入し、2018年の10月から稼働しています。新工場の建設にあたっては、庵治石の産地の香川県高松市や岡山県笠岡、大分など県外の工場を見て回り、それぞれの社長さんからのアドバイスを盛り込みました。
新工場では国産材や外国産の高級石材の加工・研磨を行うため、明るさは絶対条件です。研磨をする際には光で輝きやツヤを見るので、天井をあまり高くしたくなかったで、天井の釣り台に合わせた天井高にしました。
ショールームは敷地内の建屋を新たに改装しました。コンセプトは少し見栄をきって「博物館のようなショールーム」に。小たたきやビシャンなど昔ながらの道具のほか、お墓ができ上がるまでの工程パネル、日本各地の銘石も展示しました。墓石は15基ほど。いろいろ欲張りたかったけど、完成度は70~80%といったところかな。
見学に来られたお客様が、工場で墓石がどのように加工されるかを見ることができ、さらにショールームを見ることで、より実感を体験でき、共感を得られる相乗効果が生まれると考えております。その意味では工場もショールームの一貫と捉えてもよいかもしれません。

荒木社長は前職が航空機関係の会社におられましたが、その経験が何か工場やショールームの建設に活かさせていますか。

私の前職は航空機関係の整備を行う元技術屋だったので、安全で良い仕事をするには作業服にしても工場にしても、常に綺麗な現場でなければと考えています。いつも工場が片付いており、整理整頓されていることが必須です。安全安心の観点から段差もなくしました。新たに導入した自動切削機や自動研磨機なども、より高性能で安全性の高いものになっていますし、安全かつ効率良く作業ができるように機械の配置も工夫しております。

ガラス張りのショールームにしたのは、何かこだわりがありましたか。

既存の建物が古かったので、清潔感をしっかり出したかったですね。ガラス張りにしたのは特にこだわりはありませんが、自動車の販売店のショールームと同じ発想ですね。外からもよく見え、墓石が展示されているのが一目でわかります。お客様にとって墓石は一生に一度の買い物です。しかも決して安い買い物ではありません。ガラス張りにすることで必然的に清潔感が保たれますし、お客様との信頼感にも繋がると思っています。

御社では墓石業界では珍しいISO9001の認証を取得していますが。また地震で倒れない「最強のお墓づくり」を目指していますが、どのような理由からでしょうか。

墓石業界でISO9001の認証取得は九州では1社のようです。商品や施工についての仕組み化、品質管理に役立つと思っています。実際に安全な現場を作ったり、品質を高めるために生かされていますし、ISOを知っている方にとっては意識が高いという見方をしていただいております。また差別化やお客様の安心に繋がっており、認証を取得して良かったと思います。
熊本地震では多くの墓石が倒壊した中で、弊社の建てた墓石で全壊したものはほとんどなく、震源地の益城町での倒壊率は2.5%程度でした。東日本大震災の後に東北への視察を行い、元技術屋としての視点で倒壊した墓石を分析しました。墓石専用の金具が役にたっていなかったり、接着剤の接着不良など施工が原因だと結論を出しました。
このことがきっかけに「最強のお墓づくり」を追求し、改善を行ったことが熊本地震では生かされたと思います。

最後に今後の展望をどのようにお考えですか。

ショールームと工場を見ていただくことで、「墓石ってこんなに手間をかけているんだ。この価格は決して高くないね」って、理解していただけるのは大きいですね。後は継続していける仕組みづくりです。
例えば墓石の加工は多くは中国やインドに頼っていますが、世界情勢に左右されないように、「お墓のことはすべて弊社だけで完結出る」という体制を作っておかないといけないと思っています。そのために設計・製造・施工だけではなく、お墓の管理会社として別会社「あらきサポート」も設立しています。

  • ショールームの正面入り口(墓石の棹石部分は伊達冠石)

  • 大型区画用の墓石が目立つ墓石展示風景

  • ショールームの受付付近の風景

  • 整理整頓された工場内部の風景

月刊仏事 8月号に掲載されています

掲載記事

お墓
2021.09.27