神戸珠数店、103年目の取り組み ~これまでとこれから~

株式会社神戸珠数店

代表取締役 神戸伸彰氏
株式会社神戸珠数店 代表取締役 神戸伸彰氏

神戸珠数店のヒストリー

神戸珠数店は大正7年(1918年)の創業。古くから仏壇店とともに多くの珠数店が軒を連ねる下京区で念珠の製造卸をして103年目になる。創業以来、東本願寺・西本願寺界隈であるこの地で、手仕事による珠数づくりを続けている。扱う材料は希少材をはじめ、貴石、半貴石、琥珀、香木、木玉、ガラス玉、プラスチック玉など多種多様。「高品質で安心の珠数、使う方に喜んでいただける珠数」を目指し、熟練の職人が手づくりで、専門店ならではの品質を追求しながら念珠を届けている。
「先々代のときに会社が大きく発展しました。キリスト教のロザリオを販売するなど、当時は革新的な商売のやり方だったと聞いています。先代は新たな商品開発に力をいれて、現在、わたしで6代目になります。わたし自身は24歳のときに一から念珠のことを学び直し、職人さんのところをまわり、話を聞いて、仕事を拝見しました。当時、目で見て感じたことがいまでも心に残っています。昔から、『常にいいものをつくりなさい。常に革新していきなさい』と言われてきました。代表になってからも、代々続くご縁とお客様への気持ちを大切に、神戸の精神を受け継いできました」

オリジナルの取り組み

神戸さんが代表に就任してからは経営体制の見直しにも着手。働く人たちの環境を整え、社内外の関係先とのつながりを一層確かなものにしてきた。6年前からはオリジナルのカタログ製作にも注力し、発信していくことの大切さをあらためて実感したという。また、伝統技術を分解・再構築し作りあげた『モダン念珠』をはじめ、世界遺産熊野の森のヒノキと天然草木染めを用いた『ibuki』、天然の山桜に藍染めを施した『藍珠』、お墓じまいのお客様向けに墓石を用いたオーダーメイドの『縁添珠』など毎年のように新商品を発表。デザイナーとともに商品を開発し、ロゴやパッケージにも独自のこだわりを見せるようになった。
さまざまな工夫の根っこにあるのは、珠数のことをもっと知ってほしいという思いだ。小売店の側が珠数に対する興味が薄い、あるいは、仏壇の広告の中で、珠数を持たずに手を合わせている――、ということもしばしば。珠数が日本に根づいて1200年ほどの歴史があるとされる。
「本山の修行では必ず珠数を持ってお勤めされますし、タクシーの運転手さんがお守りとして珠数を身につけていることもあります。日々の生活の中でいまもなお親しまれている珠数を見て、あらためて珠数づくりに携わっていることのありがたみを感じました。それと同時に、わたしたちがもっと珠数のことを発信しなくてはいけない。それにはまず、供養業界の内の方に珠数のことを知ってもらおう。そう思って、カタログ製作や動画配信、ホームページを作成しました」
自社のオリジナルカタログを製作することで数多い珠数の中から、神戸珠数店の商品を見分けやすくなる。また、メーカーの名前が入った〈タグ〉付きの珠数を販売したことも画期的だった。
「弊社のタグが付いた珠数を販売したいと言っていただけることも多く、商品背景への共感も実感しています。発信するツールが増えることで販売のチャンネルが広がる効果もあります。その結果として、新規のお取引先も年々増えています」

伝統を受け継ぎ、革新につなげる

『珠数が持つ伝統の継続と発展』をテーマに掲げ、とにかくいいものをつくる。その思いを受け継いで100年を過ぎた。
「昔からのお客様に関してはご縁に恵まれたことに感謝しています。そのご縁を絶やすことなく大切にしていきたい。新規のお客様には珠数を知っていただき、より販売しやすいものをお届けしていきたいです。新たにBtoBのオンラインサイトも開設し、よりお取引しやすくなりました」
従来の商売のやり方も残しながら、新しいことも取り入れる姿勢が神戸珠数店の強みであり魅力だろう。実際に、新規に同社の珠数を取り扱いはじめたことで、店舗全体の商品が動き出したという声も届いている。
「事業を継続、継承していくことは決して簡単なことではありません。珠数づくりは伝統産業ですが、時代の変化には対応していかないといけない。そのバランスを大事に、次の100年に向かって、発展し、革新し続けたいです」
祈りの価値を次の時代へどうやって受け継ぐか。伝統の継続と発展というテーマのもと、神戸珠数店の取り組みから目が離せない。

月刊仏事 10月号に掲載されています

掲載記事

特集 仏壇
2021.10.19