株式会社中原三法堂は、岡山県と広島県福山市・尾道市に17店舗を構える、西日本最大級の仏壇・仏具・墓石の専門店である。同社の代表取締役社長である木村謙吾氏は、「代々の社長の想いを継承しながら、フラットで柔軟な経営を目指している」と語る。そんな同社の経営理念や業界の今後について、鎌倉新書代表取締役社長 小林史生が話を聞いた。
創業134年目の中原三法堂のビジネスとは?
小林:中原三法堂さんのビジネスの概要を教えてください。
木村:中原三法堂は明治22(1889)年創業の会社で、 今年で134年になります。私の代で5代目ですね。私が入社したのは25年前、平成9(1997)年ですが、 その頃はもうすでに3代目の時代でした。創業者や2代目に会ったことはないのですが、会社の古い文献を確認すると、当時は荒物などの金物系の道具も仏具と一緒に扱っていたようです。私が入社した頃にはもうすでにそういったものは扱っておらず、仏様やお仏壇、仏具の専門店としてやっておりました。
地域一番店を維持できた要因は「お客様に寄り添ってきたから」
小林:現在店舗数はどれくらいなのでしょうか?
木村:岡山・広島エリアに17店舗あります。
小林:この地域の仏壇店としては「地域一番店」になると思いますが、トップを維持してこられた要因はどのような点にあるとお考えでしょうか?
木村:私が入社する前のことは人づてにしかわからないのですが、それ以降のことについていえば、私が直接接してきた3代目、4代目の社長が、いかにお客様に寄り添ってきたかということに尽きると思います。私が入社した時は3代目の中原博社長の時代でした。当時は店舗も2つしかありませんでした。4代目、今の会長がまだ20代の時に、当時の中原社長と一緒に2店舗目を設立して、そこから多店舗計画が開始されたんです。それも、「この場所に作ってほしい」というお客様の声に応えるところから始まったそうです。
代々の社長から受け継いできたものの“バトンパス”を大切に
小林:今後は、盤石な基盤をより強くしていくのか、あるいはもっと拡大していくのか、御社の戦略としてはどのようにお考えなのでしょう?
木村:基本的に、大きな拡大路線をとっていく考えは持っていません。私たちが代々の社長から受け継いできた、今あるものの“バトンパス”をしっかり強くやっていくことが大切だと考えていますから。現状の会社をもっと強くすることができれば、結果としてはそれが、拡大路線につながっていくと思っていますね。会社を大きくすること自体を目的にして会社を経営するのではなく、みんなで会社を強くしていった結果、自然と会社が大きくなるということであれば、私はそれがいちばんいいと思っています。
お客様からしてみればこちらの役職など関係ない
小林:木村社長は非常にお若いですよね。今の中原三法堂さんは、会社の長い歴史と、木村社長の若い柔軟な発想とが魅力だと思います。社員のみなさんとのコミュニケーション面で、心がけていらっしゃることはありますか?
木村:できる限りフラットな会社にしたいと思っています。立場上どうしてもしょうがないところはあるのですが、お客様からしてみれば、社内の先輩や後輩、男性、女性、役職のあるなしということは関係ありませんからね。そう考えた時に、社長だからこうだというのではなく、いち社員として、お客様に対して何ができるのかということを、みんなと一緒に検討していきたいと思っています。実際に私自身が配達にも行きますし、祭壇の引き取りにも行きます。社員からは時々、「やめてください」と言われることもあるのですが(笑)、私は本当に現場が好きなんですよ。お客様とお話しをすることで、いろいろな情報を教えていただけることも多いですし、本当に面白いです。
「私たちが本来しなければいけないこと」を見失わないように
小林:今後の供養業界、終活業界における木村社長のお考えを聞かせいただけますでしょうか?
木村:仏様の世界はこれから先もなくなることは絶対にありませんが、形は変わる可能性があります。お仏壇でいえば、モダンなお仏壇が出てきたり、お墓も和墓から洋墓が出てきたりもしました。これは時代の流れなので、無理やり止められるものではありませんし、無理やりそちらにいく必要もありません。日々の変化に一喜一憂して自分たちの気持ちまで奪われてしまうと、私たちが本来しなければいけないことを見失ってしまうかもしれません。なので、最前線を意識しつつも、ちょうどいい塩梅のところを常に意識しながら、お客様に対してお手伝いできることを考えていくことが大切だと思っています。