谷中樹陵 久遠·長明寺樹木葬 (東京都台東区)
江戸情緒あふれる街並みが広がり、今や国内外を問わず多くの観光客を魅了する寺町「谷中」。ここに、都心とは思えない美しい自然に囲まれた樹木葬のお墓がある。かつては蛍の名所であったことから「蛍沢の寺」と呼ばれていたという日蓮宗 長明寺が運営する墓苑だ。山手線内という恵まれた立地と、心安らぐ豊かな緑。ふたつの大きな特色を持つ谷中樹陵 久遠·長明寺 樹木葬を訪れ、ほかにはない魅力的な樹木葬を体感した。
古き良き寺町の面影を遺す谷中
「谷根千」の愛称で呼ばれ、今や都内でも有数の観光地となった谷中。多くの買い物客や観光客でにぎわう谷中銀座の入り口「夕やけだんだん」を降りると、すぐ左手に見えてくるのが日蓮宗寺院の長明寺。JR日暮里駅から徒歩5分というアクセスのよさも魅力のひとつだ。
谷中には数多くの寺院が建ち並んでいる。長明寺は1609(慶長14)年、関ケ原の戦いの戦死者を弔うために開山したといわれる、水戸徳川家ゆかりの寺院だ。水戸藩第2代·徳川光圀公より寄進された三十番神像は、今も本堂内に大切に祀られている。
東京中心部にあるとは思えないほど緑豊かな広々とした敷地を有し、山門をくぐると見事なしだれ桜が目に入る。春になると美しく咲きほこるしだれ桜は鮮やかに本堂を彩り、長明寺を幻想的な空間に演出する。参道を進むと、本堂の奥にある長明寺のシンボルツリーである樹齢600年を超えるタブノキの存在感に圧倒される。
樹齢600年のタブノキがシンボルツリー
谷中樹陵 久遠は長明寺の本堂の裏側に、タブノキを囲むようにしてつくられた樹木葬墓地である。「跡継ぎがいない」「維持費をかけたくない」「自分らしいお墓で眠りたい」など、私たちの生活環境やお墓に対する価値観は近年、大きく変化している。さまざまなお墓への希望を実現するべく、谷中樹陵 久遠では現在、7種類のお墓を提供している。
タブノキの根元に広がる円柱型の墓石。これが1人用、2人用のお墓「縁」だ。氏名と没年月が彫刻されたシンプルなデザイン。その周りには2人用の「調」がある。こちらは四角いプレート型の樹木葬で、おもに夫婦2人向けのお墓になっている。
家族向け、4人まで埋葬できる樹木葬墓には、「樹」と「聖」、そして新しく作られた「菩提」「心」の4種類がある。
「樹」は「縁」と同じ円柱型のお墓だ。パウダー状にされた遺骨を専用の骨袋に入れて、底が土につながったカロートに納めることで、お骨が自然に還ることができるようになっている。
もっとも大きく、長方形の墓石が立てかけられるように配置してあるのが「聖」。家族で同じ墓に埋葬してほしいという希望を叶えるタイプだ。
「菩提」は墓石の上部が反った形状で、もっとも新しく作られた区画。著名な左官職人である挾土秀平氏が手がけた壁面デザインをもとにそう名付けられている。納骨には輪島塗の骨箱を使っている。
プレート型やブック型の「聖」「菩提」「調」では、墓石に故人への想いや、人生の一部を表す唯一無二の彫刻を施すことができるのが特徴だ。デザイナーやスタッフが、デザイン提案の部分からじっくりつきあってくれるので、さまざまな思い出と向き合いながら、納得がいくまでこだわることができる。愛犬や趣味の楽器、家族が描いた似顔絵など、自分が大切に思う何かを表現したデザインは、そこに眠る人の人生や想いを私たちに繋いでくれるようでもある。
タブノキの根元の一角には、植栽の緑が透けてみえるガラスの墓石を祀った区画「心」もある。スタイリッシュな雰囲気を持ちながら、まわりの自然にも溶け込むように馴染んでおり、宗教色を一切感じさせない現代的なスタイルだ。
タブの大木の対角に位置するひときわ日当たりのよい場所には、合同供養墓「和」がある。この墓苑内にあるどのお墓も、登録者のうち最後の方が納骨されてから13年が経った後この「和」に合祀され、長明寺の手で永代にわたり供養される。家族墓の改装を考えている方、そしてたくさんの人に囲まれて眠りたいという方に選ばれているお墓でもあるのだ。
そのほか、ペット専用の供養碑もある。愛するペットも家族の一員としてそばにいてほしいというニーズに応え、故人の眠る区画から非常に近い場所に設置されている。