葬儀本体売上高はコロナ禍前に比べ9%減に留まる。今後は葬儀以外の事業にも注力する

株式会社オレンジライフ(和歌山県有田川町)

和歌山県有田町を本拠地する株式会社オレンジライフの葬儀本体(花、料理、返礼品は含まず)の2022年5月期の売上高は、4億8,000万円でコロナ禍前に比べ9%減に留まった。施行件数は3%増であったことに加え、単価も11%減に留まっており、その一番の要因は、今年1月に新家族葬ブランド「これからのお葬式」を投入したことにある。
同社はまた、「長い目で見ると、葬儀事業は減少していくので、葬儀以外の事業が必要」との認識から2つの事業を始めている。「カフェ&ビアバー」と「有田ラボ」事業だ。葬儀本体の業績推移や葬儀以外の2つの事業戦略を中心に、上野山栄作社長兼CEOにお聞きした。

上野山栄作社長兼CEO

まず、御社の葬儀事業は、コロナ禍前に比べ、コロナ禍後はどのように変わったか、その概要についてお聞かせください。

上野山:葬儀業界全体は、コロナ禍前から低価格に流れてきましたが、当社は、競合もさほどなくシェア率が高いことから、当社の施策によって低価格に流れるのを止めることができていました。
ところが、コロナ禍になってからは、一気に低価格に流れるようになってきました。それは、コロナ禍を理由に秘密に済ますお葬式が増えたもので、顧客ニーズはやはり多くの参列は望まないということを実感しました。
そして儀礼文化を理由に今までの地域コミュニケーションを重んじるばかりではなく、小規模・低価格ニーズにもしっかりと対応しなければならないと、考えを方向転換したからでもあります。

そうした施策変更は、どのような形で行っていらっしゃるのですか。

上野山:コロナ禍になってから、施策を検討・決定する組織を変えました。従来は、全て部長クラスの会議で検討・決定していたのですが、それをリーダークラスの会議に変え、月2回開催するようにしました。
市場、現場に近い人たちに会議に参画してもらい、よりお客様ニーズに沿ったことを行うとか、行ってみて駄目ならすぐに変更するといった機動的な組織にしました。
この会議で臨機応変に価格やプランを変更したり、後ほどお話しする新しい葬儀ブランドを投入することなどを決めました。

同社の主力会館

「フューネラル吉備」&本社の外観
「フューネラル保田」の外観
「シェア有田」の外観

売上高はコロナ禍前に比べ9%減に留まった要因
新家族葬ブランドが5ヵ月で35%を占める

では、葬儀事業のコロナ禍前とコロナ禍後の売上高と、その内訳である施行件数、単価の推移についてお聞かせ下さい。

上野山:コロナ禍前は2019年5月期、コロナ禍後は直近の2022年5月期の数値で申し上げます。葬儀本体だけの数値で、花、料理、返礼品などは含んでおりません。
売上高は、コロナ禍前が5億3,000万円であったのに対し、22年5月期は4億8,000万円でコロナ禍前に比べ9%減でした。
施行件数と単価の内訳別では、施行件数は、コロナ禍前は525件に対し、22年5月期は540件で3%増でした。単価は、コロナ禍前は100万円だったのに対し、22年5月期は89万円で11%減でした。

22年5月期の売上高がコロナ禍前に比べ9%減だったのは、単価ダウンによるものですね。でも、単価11%減というのは、業界平均より少ないですね。

「ジャスト葬儀価格」など3つのジャストが特徴

次に、施行件数と単価の増減要因についてお聞きします。まず、施行件数はコロナ禍前に比べ3%増えている要因は何でしょうか。

上野山:当社はシェアが高いので、件数は簡単には増えません。3%増えたのは多分、死亡者数が増えたからだと思います。

では、単価は11%減にとどまった要因は何でしょうか。

上野山:葬儀ブランドは、従来は「フューネラル」(一般葬)と「SHARE」(家族葬)の2つでしたが、今年1月に「これからのお葬式」(一般葬と家族葬の中間的な葬儀)ブランドを新たに開始しました。単価ダウンが比較的少なく済んでいるのは、この新ブランドを開始したことが一番の要因です。

「これからのお葬式」は、どのような内容でしょうか。

上野山:冒頭で申し上げましたように、葬儀文化を継承しつつも、お客さんの希望を実現する葬儀を提案しますというもので、主な特徴は「3つのジャスト」です。
1つ目は「ジャスト葬儀価格」です。葬儀規模を抑えたい方には、低価格プランもご用意しましたということです。
2つ目は「ジャストサービス」です。過剰なサービスを好まないお客さんにはご自身で出来ることは行っていただき、出来るだけ低価格でできるようにしました。
3つ目は、「ジャスト参加人数」です。家族葬をお好みの方でも地方では地域コミュニティも存在しますので、ご近所やご友人と一緒に家族葬+αを行っていただけるというものです。

従来の家族葬「SHARE」との違いは何でしょうか。

上野山:親族と故人と親しかった友人などが参列するということでは同じですが、「SHARE」は招待制であり、招待する人は限られます。これに対し、「これからのお葬式」は、ご近所やご友人など参列したい人は参列できることにしています。
ですから、「これからのお葬式」は一応家族葬とは言っていますが、ほかの地域の一般葬とあまり変わりません。
費用は、「SHARE」と「これからのお葬式」はさほど変わりません。

「これからのお葬式TAKUMI」の外観

「これからのお葬式」の参列者数は30人~50人

「これからのお葬式」を投入されたのは、招待者から会費を徴収するという日本で初めての葬儀スタイルである「SHARE」が思ったほど受け入れないということもあるのでしょうか。

上野山:「SHARE」は非常に評判良く受け入れられました。ただ、会費制は顧客のニーズとは違っていました。当初は、頑張って勧めたのですが、望まれるお客さんは予想したほどいませんでした。
でも、祭壇のお花は、親戚の方も参加してグレードアップしたものをシェアするという考え方には、賛同いただける方もいらっしゃいます。

「これからのお葬式」を今年1月に投入され、5月決算までですと約5ヵ月間ということになりますが、売れ行きはいかがでしょうか。

上野山:施行件数で言いますと、コロナ禍前は一般葬が7割、家族葬「SHARE」が3割でした。これが、22年5月期では一般葬と家族葬が完全に逆転して3割対7割になりました。
家族葬の内訳では、「SHARE」と「これからのお葬式」が半々の3.5割になっています。

「これからのお葬式」は5ヵ月で3.5割を占めるようになったということは、御社が勧めているということもあるでしょうが、お客さんに受け入れられたということですね。先ほど、単価がコロナ禍前に比べ11%減にとどまっている一番の要因は、「これからのお葬式」を投入したことにあるとおっしゃられましたが、どういうことでしょうか。

上野山:参列者数は、「SHARE」は20人位までですが、「これからのお葬式」は30人から50人位までいらっしゃいます。ですから、家族葬といっても、「これからのお葬式」の単価は高く、これが全体の単価ダウンを抑制してくれているということです。

記事の全文は月刊仏事 9月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2022.09.20