特別企画『遺品整理のいま』前編 キーパーズ有限会社 代表取締役 吉田 太一氏

遺品整理業のパイオニア キーパーズ有限会社

代表取締役 吉田太一氏

業界のトップにお話を伺い、明日の事業につながるヒントを探す「TOP Point of View 供養業界トップインタビュー」。遺品整理業のパイオニア、キーパーズ有限会社代表取締役の吉田太一氏。業界の第一人者である吉田氏に遺品整理の意義をはじめ、孤立死・多死社会など、これからの時代の向き合い方を、弊社代表取締役社長COOの小林史生が伺った。

新しい仕事を生み出し、そしてトップであり続ける素地は何なのか。「キーパーズはこうして生まれ、成長した」

日本初の遺品整理サービス

小林:遺品整理の会社を設立されて今年で20周年を迎えられますが、遺品整理の仕事を始めた経緯を教えてください。

吉田:私が30歳のころ、大阪で引っ越しセンターを経営していましたが、人と同じことをしても面白くないので、少し変わったことをしたいと常に考えていました。
やがて、引っ越しで不要な物が出るのに、なぜ引っ越し屋さんがリサイクルショップをやっていないのか、ということに気がつきました。そして、第三者を巻き込んでリサイクルショップを運営することで、お客様も引っ越し屋さんも誰も損をしない仕組みができると考え、全国初となる「ひっこしやさんのリサイクルショップ」を始め、関西ではよくテレビ取材を受けていました。
それから8年たったある日、二人の女性から見積もりのご依頼があり私が訪問しました。依頼内容は東京と横浜に荷物を運ぶ仕事でした。しかし、配送するもの以外にもたくさんの家財が有ったので、どうされるのかとお聞きすると、これからリサイクルショップや便利屋を探して荷物を処理していくとのことだったのです。そこで私が「全部私がお手伝いしましょうか?」と話すと、女性二人はびっくりして「全部やってくれるなんて神様に見える」とおっしゃったのです。私のほうが“神様に見える”なんて言われて、一瞬この方は何を言っているのだろうかと戸惑いました。その後お話を聞くと亡くなった父親の遺品だったということがわかりました。
遠方に住んでいる遺族が、一人住まいだった父親の遺品の整理をすることが大変な作業なんだということに気づいたのです。私はその後、会社へ帰り遺品を専門に片づける会社を探してみたのですが、そのような会社はなかったので、日本初の遺品整理の専門の会社を創ろうと考えたのです。

小林:お客様との出会いから遺品整理サービスが始まったんですね。

吉田:そうですね。その時私が見積もりに行ってなければこのサービスを考えていなかったかもしれませんね。その後私はご遺族に対して困っていること全てを請け負うサービスでないといけないと考えてサービスの内容を作っていきました。また、ただの便利屋さんやゴミ屋さん、リサイクルショップとは違う遺品整理専門会社でなければならないわけですので何が違うのかを明確にしなければならないという強い意識はありましたね。
さらに遺品とはなにかを考えたのです。遺品とは故人の生活を支えていた家財道具です。人は亡くなると故人となりますが、家財道具はマイナスイメージのある遺品と言われます。物としては何も変わらないのに…。ペットだったら、飼い主を亡くして可哀想だからと引き取り手がすぐに見つかるかもしれません。でも、故人の家財道具だったら気持ち悪がられることも多いのが実情です。しかし、遺族の遺品なら大切にできるけど、他人の遺品は気持ち悪い。有名人の遺品だったらお金を出してでも欲しい人がいる。同じ物でもイメージは全く違いますよね。人の感覚はいい加減なものです。出来れば遺品のイメージを良いように変えたいと思っています。
また、遺品は故人の生き様を物語っているといえます。現場に行くと会ったこともない故人の趣味や嗜好などが遺品の遺された部屋を片付けているとわかるのです。ですので、遺品整理は最後の最後に故人の生き様を消し去る作業だといえるのです。

社員教育について

小林:社員教育について、具体的にどのように行われていますか?

吉田:基本的にはほったらかし経営です(笑)。私がなにかを教えるというよりは、みんな生きるために働いているので、自分で考えて行動することが大事だと思っています。
あとは、ご遺族が私たちを育ててくださいますね。本当に困った時の心からの「ありがとう」の言葉は、人から頼られているということ、自分の存在価値が認められている、ということが実感できる貴重な経験になります。誰かの役に立てる仕事ができると、もっとこうしたいという気持ちが自然と湧いてきます。現場を経験すると社員の気持ちに変化が出てくるように感じています。

小林:吉田社長は本の執筆やメディア出演でご自身の思いを語られることが多いと思いますが、会社設立当初は一般の方に認知されるまでにご苦労があったと思いますが、いかがですか?

吉田:求人では困りましたね。聞いたこともない遺品整理会社ということで最初は求人が全く来なかったんです。大手求人広告に掲載した時には面接に来た人から、ここは何をする会社なのかとか、採用通知を出しても逆に考えさせてくださいと言われるような状況でした。
創業一年からテレビ取材や出演依頼は多くて、その番組を見た人からの求人の応募が多かったのですが、こちらの都合良いタイミングでテレビに出られるわけではないので、無料で出来るブログを知り現場での現状や私の考えを配信し始めました。1年程ブログを書き続けた結果、まったく求人は来なかったのですが、有名ブログとなり数社の出版社の方から連絡があり、書籍として出版することになりました。出版後、すぐにアマゾンで4位になるほど注目されベストセラーと言われるようになって私もびっくりしました。
その後、いろいろな出版社から執筆依頼されて十数冊の自著を出版することになりました、自分でも不思議な気もしますが、現在も日本ペンクラブという作家の会にも入っているのです。その数年後から本の読者の方々が求人募集に来てくれるようになりました。読者の方は私に共感して来てくれるので、思いの近い人たちが会社に集まりますよね。それが顧客満足度の高さに繋がっていると思っています。実は、キーパーズのスタッフは全員、元々私の本の読者さんたちなんです。

月刊仏事 2月号に掲載されています

掲載記事

特集 終活
2022.02.03