特別企画『遺品整理のいま』後編 キーパーズ有限会社 代表取締役 吉田 太一 氏

遺品整理業のパイオニア キーパーズ有限会社

代表取締役 吉田太一氏

業界のトップにお話を伺い、明日の事業につながるヒントを探す「TOP Point of View 供養業界トップインタビュー」。遺品整理業のパイオニア、キーパーズ有限会社代表取締役の吉田太一氏。業界の第一人者である吉田氏に遺品整理の意義をはじめ、孤立死・多死社会など、これからの時代の向き合い方を、前篇に引き続き弊社代表取締役社長COOの小林史生が伺った。

これからの遺品整理業界や供養業界の意義、そしてこれからの日本人の生き方とは?「これからの日本と、吉田代表のメッセージ」

多死社会と「個」の時代について

小林:孤立死や空き家など、いまの社会が抱える様々な問題についてはどのようにお考えでしょうか。

吉田:時代によって生活スタイルは変わるのが当然です。昔は家業を継ぐとか長男だから何か任されるなど、慣習によって煩わしいことが当たり前にあって、その煩わしさを我慢する方が生きやすい社会でした。でも、今は考え方や生活スタイルの変化によって煩わしさを我慢しても何もメリットがない時代となったのです。いまの人が欲を追求していくと昔のような生活スタイルは否定されます。一人で生活する人が多い時代だから、人間関係も昔みたいにこだわらなくても生きていけます。
でも実際に、私たちがお手伝いさせて頂く遺品整理の中でも部屋で孤立死される方は年間400件程います。また孤立死というと高齢者が自宅で一人で亡くなるイメージがあるかもしれませんが、年齢は年々低下していて、50代の孤立死も増えています。65歳以上になると自他ともに高齢者としての認識に変わりますが、その手前の世代が危ない。仕事場では人間関係はあるが、プライベートで友人がいないという方が非常に多いです。
生活はワンルームマンションやコンビニ飯の充実によって快適になり、携帯やPCでネットを介して繋がりがあるように錯覚してしまう。企業側も一人の方が便利で快適だというサービスや商品を促進しているので、社会構造は今後さらに変化していきます。結婚している方が「変わっているね」なんて言われる時代になるかもしれません。今の20代、30代の若い世代でも、両親が一人っ子で自分も一人っ子の場合、未婚のままだと将来親が亡くなったら本当に身内のいない一人となります。そうなると誰にも葬儀や遺品整理の手配すらしてもらえないのです。身内がいないのである程度の年齢になったら自分の最期の手配は第三者に依頼しておかないと死ねないということになるのです。
また宅建士の資格も取って不動産業も行っておりますが、全国の遺品となった実家の空き家が激増している実態を目の当たりにして驚いています。子供に資産を遺すために35年のローンで買った不動産が、子供は住まない、売れない、貸せないという“負動産”になってしまっているということも多く、相続で頭を抱えるご遺族も激増するでしょう。人口が減少に転じ、需要と供給のバランスが崩れるとこうなることは不思議なことではないのですが、不動産の相続が発生する可能性のある方は、事前に調べておいたほうがいいでしょう。

小林:確かにそうですね。危険ですが、煩わしい方向に戻るより楽な方に向かうのが自然な流れといえますね。

供養における「遺品整理業」の役割

小林:遺品整理会社の役割とはなんでしょうか。

吉田:身内が亡くなった際に遺族はある一定の期間、喪に服して故人を悼み自身の身を慎むとされていました。時代が変わってもその感覚は残っており、遺族は慎重に言葉を選びながら発言をし、行動しないといけない時期があります。そのような時期に故人の生き様であり遺品の整理を行う時、便利屋さんやゴミ屋さんでなく遺品整理専門会社のキーパーズに依頼したことによって、ご遺族が親せきやご近所さんから「遺品整理もちゃんとやってあげたんだね。故人も喜んでいるんじゃない。」と言ってもらえるような存在意義のあるような会社であり続けないといけないと思っています。

これからの時代の生き方

吉田:このような社会の変化に対して、どうやって対応していくか。どう生きていくか。どのようにリスク回避していくかを一人一人が考えなくてはいけません。社会の危険信号がいまの孤立死だと思います。
私は仕事で孤立死の現場を目の当たりにしたとき、亡くなられた方から「自分みたいになるなよ。こうなったら駄目だと伝えてくれ」というメッセージを伝えてくれと言われているように感じています。死んでしまえば自分ではわからないでしょうが、最期は人に迷惑をかけるような死に方は出来るだけ避けたいですよね。だから、たとえ一人でもいいから友達といえる人間関係を保つようにしてほしいと思うのです。結局、自分が今後どう生きるのかを、一度でもいいから立ち止まって考えるきっかけになればと思い、講演などを通して発信しています。

月刊終活 2月号に掲載されています

掲載記事

特集 終活
2023.02.10