2030年に創業200周年を迎える若林佛具製作所が思い描くビジョンと果たすべきミッション

株式会社若林佛具製作所(京都府京都市) 若林智幸 氏

今年で創業193周年を迎える仏壇・仏具メーカーの老舗、株式会社若林佛具製作所。家庭用仏壇や寺院用仏具の製造販売に加えて文化財や歴史的建造物の修理、ネット販売やオリジナル製品の開発など幅広い事業を展開している。7年後の200周年に向けたビジョンや今後の展望について、同社6代目社長の若林智幸氏に話を伺った。

株式会社若林佛具製作所 代表取締役社長 若林 智幸氏

既存事業と並行しながら文化財修理に新規参入

若林佛具製作所は「お客さま、従業員、職人を大切にすること」「工芸の技術を育て、次世代へ継承すること」「手を合わせるという心と文化を守ること」の3つをミッションとしている。そしてそのミッションを果たすため、200周年を迎える2030年に向けて以下のビジョンを掲げている。

「日本一寺院のあらゆる要望に応える会社」
「日本一手を合わせる場所を提供する会社」
「日本一職人工芸技術を提供する会社」
「日本一文化財修理を施工する会社」
そして世界へ向けての戦略を!

これらのビジョンに向けて同社が近年力を入れている分野のひとつが、10年ほど前に新規参入した「文化財修理」だ。新規参入した理由として、「時代の変化とともに既存の仕事だけでは厳しいと感じるようになった」と若林さんは語る。
「家庭用仏壇や寺院用仏具の製造販売は弊社を支える事業のひとつです。ですが、最近では受注が伸び悩むように。そこで、国宝・重要文化財や歴史的建造物の金具や漆・箔、彩色などの修理に裾野を広げていくことにしました。現段階では寺院関係の仕事が割合として多いですが、将来的には追い越すだろうと予想しています」

文化財修理の納入例 左:知恩院御影堂/右:二条城唐門

オリジナル製品で現代のニーズに応えていく

若林佛具製作所はオリジナル製品の開発にも力を入れている。
「人々の価値観やライフスタイルが多様化する中、現代の居住空間に対して自然と馴染み、溶け込む仏壇仏具へのニーズが高まっています。弊社がネット販売を展開する上で、価格競争に巻き込まれることなく、かつ消費者のニーズに応えていくためには、オリジナル製品の開発が不可欠でした」
現代のニーズに合った新しい仏壇のかたちを模索する試みとして、同社は外部のクリエイターとのコラボレーション作品を次々と開発している。2018年にはプロダクトデザイナーの清水慶太氏と協業し、「手を合わせよう」をコンセプトにした現代の暮らしに寄り添う新しいかたちの仏壇シリーズ「KAKEHASHI SERIES」を発表。2021年には秋山かおり氏がデザインを手がけた「COYUI SERIES」が誕生した。
その他、同社は新しいかたちのオリジナル盆提灯や盆飾り、火を使わないディフューザータイプのお線香「hito/toki」を販売している。オリジナル製品はいずれもECサイトと実店舗の両方で扱っている他、全品卸販売にも対応している。「今年も新たなデザイナーと次の製品を開発中です。今後も良質なオリジナル製品の提供に尽力していきますので、弊社の商品のお取り扱いを希望される仏壇仏具店さまがいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください」

KAKEHASHI SERIES の上置仏壇「OMOKAGE
COYUI SERIE 仏壇「MEGURI」
三つ足型の盆提灯「AGASATO」
火を使わないディフューザータイプのお線香「hito/toki」

著名なデザイナーと連携して海外展開を目指す

2030年に向け、同社は海外展開に向けた事業も走らせている。具体的には、パリを拠点として活動する著名なデザイナーであるロナン&エルワン・ブルレック(Ronan&Erwan Bouroullec)と協業し、海外の展示会への継続的な出品を目指しているという。
「私が社長に就任した9年前より、京都の製品や技術を海外で紹介したいという思いがずっとありました。これまでも日本から海外の展示会に出ていった同業他社はあります。しかし単年度での出展が多く、継続する例は少数です。そこでまず、単年度で終わらないような製品としての継続的なビジョンを持つ必要性を実感しました。また、現地のデザイナーに京都の技術を知っていただいた上で、現地で販売できるような製品を作る必要があると考えました。今回ありがたいことにご一緒させていただけることになりましたが、しばらくコロナ禍でストップしていた流れを元に戻しつつ、具体的な戦略を立てていきます」

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

記事の全文は月刊終活 3月号に掲載されています

掲載記事

仏壇
2023.03.22