株式会社広済堂ホールディングスと東京博善株式会社による記者会見の前半部では、まず広済堂ホールディングスの常盤誠社長、東京博善の野口龍馬社長による“説明の場”が設けられた。種々のデータを駆使し、「火葬料9万円」の妥当性から、上場企業傘下にある民営企業が火葬事業を営んでいることの難しさまでが語られた。1時間以上におよんだ会見の一部始終を全3記事に分けてリポート、今回はそのパート2。(構成:有馬ゆえ)

火葬待ち日数は少なく 火葬料も妥当だとの主張
記者会見はまず、広済堂HD社長の常盤氏による趣旨説明から開始された。東京博善が墓埋法をはじめとする法や条例を遵守していること、東京都が目指す安定的な火葬体制の確保に全面協力する旨を述べた。小池都知事の方針通り、12月4日に東京博善は東京都から火葬料金や火葬件数などに関する質問状を受領しており、12月19日にも回答。さらなる調査にも協力していくと説明した。
続いて東京博善社長の野口氏が、大手経営コンサルティングのA・T・カーニー株式会社の調査結果をもとに、東京都の火葬場を取り巻く環境と東京博善の取り組みを報告した。
報告された最初のトピックは、東京都内の火葬場における火葬能力について。政令指定都市で、年間の火葬場の稼働率を比較すると、横浜市が99%、大阪市が96%、仙台市が62%、福岡市が49%なのに対して、東京都は64%。東京都では年間の火葬実績数が他都市に比べて圧倒的に多いが、その理由は火葬が可能な数もまた高いためだとした。都内の斎場だけを比較すると、稼働率は公営斎場が66〜98%なのに対し、民営斎場では43〜70%という数字だという。
続いて、都内と他自治体における「火葬待ち日数」を比較すると、稼働率が90%以上の公営斎場は、季節や時間帯を問わず火葬待ち日数が8日以上になるケースが多い一方で、稼働率が80%未満の都内の斎場は、冬場など繁忙期であっても、ピーク時間帯をずらせば火葬待ち日数が比較的短くて済むと述べた。
「東京都の死亡人口は2065年にピークを迎えると想定されていますが、現在の都内の火葬能力では、一部の地域では課題があると分析されています」(野口氏)
火葬能力の高い23区内では多くの斎場で需要を上回ることができる一方、23区外では需要のひっ迫が予想されるという。つまり、東京博善の斎場がほとんどを占める23区内は、火葬能力が高いということだろう。
次のトピックは、その火葬にかかるコストについて。東京博善と他の民営斎場、都内外の公営斎場について、東京博善の実数データや各自治体の公開情報、独自のヒアリングをもとに算出し、比較している。ただし公営斎場の場合、民間企業が支払うべき固定資産税や法人税などの租税公課はそもそもコストにならず、またオペレーションコスト以外のコストは本来は斎場ではなく自治体などのコストとして計上されている。
その結果、東京博善はオペレーションコストの面でも設備投資の面でも低水準の数字に。トータルコストは、東京博善は8万円という価格になり、他の斎場でも同程度のコストが発生していると推定した。
レポートでは、斎場ごとの火葬料金は自治体の設定した利用者負担率の設定によって決まるが、東京都では公営斎場は利用者負担率が高いと指摘。一方で民営斎場は税金による補填はないとしている。
「レポートによれば、利用者が負担する火葬料金が低い公営斎場では、実際にかかるコストをまかなうことはできず、公的補助が不可欠になっているという分析です」(野口氏)
東京博善ではトータルコストが8万円、火葬料金は9万円だが、公営の臨海斎場では推計9万1000円のコストに対して4万4000円の火葬料金。臨海斎場の場合、その差額は公的補助によるものだと考えられるとする。すなわち、東京博善の火葬費が9万円という数字になるのは、そもそも民営斎場には公営斎場よりも斎場としてかかるコストが高く、また火葬料金そのものに対する税金による補填もないことを背景にしているということなのだろう。

上場企業子会社として 会計は適切に管理・公開
続いて野口氏は、東京博善の取り組みについて説明した。
同社では、自社の火葬サービスが重要な社会インフラであるという認識のもと、その公益性と永続性を確保するため、主に3点の項目について取り組んできたという。
その1点目は、火葬事業の透明性確保のための行政への収支報告等と、行政施策への全面協力をすること。東京博善では、これまでも6区の保健所からの求めに応じ、火葬事業に関する収支の報告と、その内容についての説明、質問に対する回答を行ってきた。今後も、東京都特別区および
6区の保健所を含む行政機関への情報開示、そして行政施策に対する全面的な協力をするとした。また、火葬の実施数や火葬炉の予約状況は、ウェブ上での公開を通して透明性をより高めていく予定だという。
2点目は、火葬事業に関する公益性、財務独立担保のために会計分離をすることだ。東京博善では、火葬事業を「公益事業」、それ以外の式場や施設内で提供するサービスを「収益事業」として会計を管理し、公益事業の財務独立性を担保。会計分離の一環として、収益事業の収支状況を公益事業に影響させない方針をとっている。また、火葬事業から得た利益は親会社には配当せず、特別修繕積立金、葬祭公益事業損失準備金として、将来の火葬場の建て替えや公益事業のために内部留保。会計全般においては、上場企業である広済堂HDの子会社として監査法人の監査を適切に受け、収益に関しても広済堂HDの決算説明資料等に記載していると説明した。
3点目は、永続的な火葬サービス提供のための設備投資を実施すること。東京博善では、安定した火葬サービスの提供を維持するために、計画的な設備投資をしている。火葬炉の安定稼働のため、10年以上先を見据えた設備更新計画を策定し、実行。火葬炉の修繕等に限定した積み立ても行っているとした。
最後に野口氏は、永続的な火葬サービス提供の一環として、民間企業ならではの企業努力も行っていると強調した。
「弊社では、都内の火葬能力が逼迫する冬場は、営業時間の延長や休日営業をすることで、サービス提供が滞りのないよう努めています。また災害時、非常時においても行政と連携し、他の斎場、火葬場が稼働できない場合、その稼働を受け入れる備えをしたり、東京博善だけでなくグループの従業員にも代替要員として火葬場を運営実施できるような訓練も実施しています」(野口氏)
経営コンサルティング企業という第三者のレポートを用いながら、東京博善という民営企業が置かれた状況を説明した野口氏。ここから読み取れる東京博善側の主張は3点に要約されよう。
まず、実質的に公的補助を受けられない状態で民営企業として斎場を運営する上で、9万円という火葬料金が妥当であること。次に、火葬で得た利益は親会社には配当しておらず、持続的に火葬事業を継続させるためにのみ使用していること。最後に、その会計状況は監査法人による監査を受け、自治体にも報告しているため客観的に見て適正であるということだ。
→パート1では「中国資本問題」に揺れる首都東京の火葬事業者の歴史について詳報
→パート3では「公営化」から「区民葬禁止」まで質疑応答の様子を詳報



