米沢市に進出し家族葬ホールを2店舗開設 葬儀売上高は4年で42%増の4億8000万円

株式会社武蔵屋(山形県南陽市)

 株式会社武蔵屋(山形県南陽市)の2023年9月期の総売上高は7億8600万円となり、4年前に比べ11%増えた。仏壇・仏具・墓石の売上高は減少したものの、葬儀売上高が42%増と大幅に増えた結果だ。そのいちばんの要因は、人口8万人の同県米沢市に進出して家族葬ホール2店舗を開設し、施行件数も順調に増えたことにある。こうした好業績の要因を、同社の柘植大輔副社長に聞いた。

株式会社武蔵屋の柘植大輔副社長

 御社は仏壇・仏具の販売からスタートし、1998年に葬儀事業、2005年に墓石事業に参入され、2019年には樹木葬事業を開始されて今日にいたっておいでです。御社の総売上高とそのうちの葬儀売上高について、コロナ禍前と直近の決算年度の数値をおしえてください。

柘植:当社は9月決算ですのでコロナ禍前は2019年9月期、直近は2023年9月期の数値でお話しします。2019年9月期は、総売上高は約7億700万円、そのうち葬儀売上高は約3億3700万円でした。2023年9月期は、総売上高は約7億8600万円、そのうち葬儀売上高は約4億8000万円となりました。

 つまり、仏壇・仏具・墓石の売上高は減少したものの、葬儀売上高は4年間で42%増と大幅に増えたことから総売上高も約11%増となっているわけですね。総売上高に占める葬儀売上高の構成比も48%から63%へと上昇して、葬儀がメインの事業となりましたが、葬儀の施行件数、平均単価はどのように推移していますか?

柘植:2019年9月期の施行件数は317件、単価は106万円であったものが、2023年9月期の施行件数は502件、単価は95万となりました。

 平均単価は多くの葬儀社がそうであるように、4年間で単価は10%ほどダウンしたけれども、施行件数は58%増と大幅に伸長したわけですね。以下では、葬儀売上高が4年間で42%増えた理由を、特に施行件数大幅伸長の要因を見ながらお聞きします。

施行件数58%増の要因:人口3万人の南陽市から8万人の米沢市に進出

 施行件数が4年間で58%増と増えた要因はなんでしょうか?

柘植:2019年9月期の施行件数317件の時は、南陽市で4ホールを構えて葬儀事業を行っていました。
 しかし、南陽市は人口3万人の市ですし、シェアも5割を超え、伸ばせるところまである程度いっていました。また、仏壇・墓石の売上も下がっていくことは目に見えていましたので、もっと人口の多い市に進出していかなければ厳しくなる状況でした。
 当社の創業は明治23(1890)年で、2020年は創業130周年に当たる年でした。そこで、創業130周年事業として人口8万人の米沢市に進出することを、かねてから計画しておりました。
 そして2019年5月に樹木葬霊園「むさしメモリアルパーク通町」を開園して米沢市に初進出し、翌2020年5月に家族葬ホールの「ラシーナ金池」をオープンして、米沢市で葬儀事業も開始しました。2021年11月には2ホール目の家族葬ホール「ラシーナ米沢」を開設しました。
 施行件数が4年間で58%に増えたのは、こうして、米沢市で家族葬ホールを2店舗出店したのがいちばんの要因です。

 ラシーナ金池とラシーナ米沢の施行件数はどのくらいでしょうか?

柘植:ラシーナ金池1ホールだけの初年度は65件、ラシーナ米沢が加わって2ホールとなった2年度目は110件です。

 米沢市に初進出のわりには順調ですね。その要因はなんだとお考えですか?

柘植:ひとつは、米沢市内にはそれまで家族葬専用ホールはなく、ラシーナ金池が米沢市内で初の家族葬ホールであったことです。そこで当社も「米沢市で初めての家族葬ホール」との宣伝を行い、それが話題にもなって、初年度からご利用いただけたのではないかと思います。

 米沢市では初となる家族葬専用ホールの出店を、よく決断されましたね。

柘植:2019年に米沢市の葬儀市場を調査したところ、市内の葬儀で訃報を新聞に掲載しない割合が半数以上になっていました。訃報を新聞に掲載しない遺族の多くは、親族以外の会葬者を呼ばずに家族葬で施行していると推測され、家族葬のニーズがあると予測できました。
 ラシーナ金池は当社にとっても初の家族葬専用ホールですが、調査結果と昨今の時流を見て家族葬ホールへ転換しました。

 米沢市で家族葬ホールが好調な2つめの要因はなんでしょう?

柘植:先ほどお話しましたように、ラシーナ金池をオープンする1年前に樹木葬霊園を開園して米沢市に進出したのですが、米沢市初の樹木葬霊園ということでヒットしました。そのことにより当社の認知度が上がり、ラシーナ金池の利用につながったこともあると思います。
 その後、ラシーナの利用から樹木葬の購入に至るという相乗効果も生まれるようになりました。

 ちなみに「ラシーナ」とはどういう意味でしょうか?

柘植:「ラシーナ」は当社の造語です。家族葬ホールの名称は社員公募により40数点の案が集まり、その中から選びました。お葬儀のお手伝いをさせていただいていると、「亡くなった故人らしい葬式だったね」とか、「あの家族らしいお葬式だったね」などと、ほめ言葉として「らしい」というお話をお聞きすることが多くあります。そこで当社としても、「その方らしい」「そのご家族らしい」葬儀のお手伝いをしたいという思いを込こめ、「ラシーナ」という造語にしたのです。

 コロナの影響はどうだったのでしょうか?

柘植:実は、米沢市での家族葬ホールの1店舗目としては、ラシーナ米沢を新築で建てる予定でいたのですが、建築許可が出た時点でコロナ禍が始まりました。そのため、減築したほうがよいだろうと判断して、設計図面を引き直したため、工期が大幅に遅れることになってしまいました。
 そこで住宅メーカーのモデルハウスを家族葬式場にリフォームして、2020年5月にラシーナ金池を先行して開設し、半年後の同年11月にラシーナ米沢をオープンすることになりました。
 このように、コロナ禍によって出店・建築計画の大幅な変更を余儀なくされましたが、コロナ禍によって葬儀は小規模化し、家族だけという方々も増えましたので、減築したり当社として初めて家族葬ホールを出店したことは、結果としてコロナ禍にうまく対応できたと考えております。

 今後のホールの出店計画は?

柘植:今年5月に、米沢市3店舗目の「ラシーナ徳町」をオープンする予定です。

小さな家族葬用ホールである「ラシーナ金池」の外観。
樹木葬霊園である「むさしメモリアルパーク通町」(山形県米沢市)。
家族葬用の式場「ラシーナ米沢」の外観。

本記事はweb用の短縮版です。全編版は本誌にてお楽しみください。

葬儀
2024.04.16