美鈴極楽墓園(広島県広島市)
代表取締役 田坂親博氏
600区画以上の販売で約90%が大島石特級。国内で類を見ない“青みかげの聖地”の和風霊園
美鈴極楽墓園の総区画は約800区画。現在は第3期を販売中だが、これまでに販売した区画数は600区画を超える。その約90%は大島石特級が占める。他が庵治石である。美しい青みかげ石が整然と並ぶ光景は、まさに“青みかげの聖地”といわんばかりの悠然とした雰囲気を醸し出している。
建墓数の約9割を生前建墓が占め、在庫は持たないため良材の確保と石材加工で、平均納期は約半年はかかるという。中には1年かかる事例もある。「広島では『大島石』でお墓をつくるのが夢」といわれる環境で、異次元のサクセスストーリーを実現させている。
同園の指定石材店で株式会社ライフライン広島の田坂親博社長は、「お客様には実際に建っているお墓を見てもらって、予算や石の目合いなど好みに合わせて見積もりをし、納得いただいてから生産に入ります」と。
さらに「大島石にしても庵治石にしても、お客様には一生懸命に説明します。自分が惚れている石ですし、何でも同じだと思いますが、モノを売るのに自分がそのモノを消化し理解していないと、説明もウソになってしまいますよね」とも。
国内加工の大島石と庵治石を15年以上、販売してきた経験から裏付けられた言葉といえよう。田坂社長の大島石と庵治石への思い入れは相当だ。
しかし、田坂社長の墓石販売は美鈴極楽墓園が初めて。大島石や庵治石の名前は知っていたが、石のこともお墓のことも殆ど素人同然だった。ある意味、そのことがこだわり続けることのできた要因といえそうだ。
大島石と庵治石だけを扱っていれば、この2石種に関しては自然に目利きになれる
田坂社長自身もかなりの目利きだが、同時にお客様の目も肥えてきているという。「お客様は大金を出してお墓を買います。周りの霊園を幾つも見て、石の目合いなど、違いがよくわかっておられます。手を抜くとはできません」と力説する。幸い扱っている石種が大島石と庵治石だけなので、自ずと目利きになれますとも。
そのため、品質にはこだわりがある。霊園に建っているのはすべて大島石と庵治石。お客様はもとより業者さんが見ても恥ずかしくないという自負がある。製品の仕入れはすべて庵治石産地の讃岐石材加工協同組合から。熟練した職人の加工技術に絶大な信頼を持っている証だ。
そのため大島石にしても、庵治石にしても山を指定しての発注はしない。その時に採れる良材を使用する。あくまでも石材の品質と熟練した職人の国内加工にこだわっている。見学に来られた産地の業者や石材店関係者も「これだけの石を揃えるのは大変だ」とか、「二度とできない」、「真似はできない」等々、高い評価をしてくれるという。
また同園で特筆したいのが、全体の雰囲気が「和風」に統一されていることだ。大島石と庵治石を取り扱う霊園らしく高級感に溢れている。あずまやには大島石の重厚なテーブルが鎮座し、そのテーブルから眺める落差のある人工滝の石組みも全て大島石といったこだわりようだ。墓園内の所々の植栽も和風に徹し、落ち着いた雰囲気の中でお墓参りができる。
同園のお客様は近隣住宅街の方々だけではなく、遠方からも車で来園する人も多い。平均で1〜2時間は滞在するので、「いつもきれいで、ゆっくりお参りできる」と評判だという。
広島市内でも民間霊園が10数カ所の激戦区。その状況下で大島石と庵治石のみのお墓に驚嘆
美鈴極楽墓園の周辺には民間霊園が10数カ所あり、中には数千区画という大規模霊園もある。広島市内でも激戦区の地域として知られている。そんな状況下で国産材、国内加工に特化した墓園としての存在感は大きい。
最近は広島でも、樹木葬や永代供養墓など簡易的なお墓が話題になる傾向にあり、それにつれて供養に対する意識の希薄化も顕著だという。田坂社長は「墓地、お墓は財産であるという考え方。その雰囲気づくりのお手伝いをしていきたい。ご先祖様を敬うことによって、自分が守られている。お墓参りをすることで徳を積む。お墓がお骨を入れる場所だけでは寂しいですよね」と、しみじみと語る。その歯止めのためにも同園の役割は大きといえよう。
実はこの考えは、5年前に亡くなられた同園の共同創設者の中川美幸さんの思想でもある。現在の霊園業界でも誇れる美鈴極楽墓園の姿は、二人の二人三脚の賜といえるだろう。
その後も大島石と庵治石、そして石材の品質と熟練した職人の国内加工にこだわってきた田坂社長。今後の見通しについて、「団塊の世代のお客様が増えてくるでしょう。日本で最高の石といわれ気品のある大島石、庵治石を自信を持ってお勧めしたいと思います。『日本の石』『日本の職人』、商売だけではなく、日本の伝統と文化を考え、お客様にはお墓を通じて絆や供養のあり方、命の尊厳を考える一助になれば幸い」と語る。また団塊に世代の人は、伝統や文化に理解や共鳴してくれるので説明のしがいあるとも。
今後、石材業界では中国など国際情勢の動向が見通せない状況下で、外国産石材の供給も危惧されるだろう。その意味でも近い将来、“国産石材回帰”への展望が開けることを期待したい。