施行単価が前年同期比123%と大幅にアップしたのは、葬儀の大切さをお客様に改めて訴えた結果である

名古屋市を本拠地とする(株)三輪本店の葬儀施行単価は、コロナ禍が始まった2021年1月期は、前期比1割近いダウンを余儀なくされたものの、22年1月期は同102%とプラスに転じた。さらに、今期に入って22年2月~4月までの平均単価は、同123%と大幅にアップし、コロナ禍前の単価に戻った。その結果、22年2月~4月の売上高は、前年同期比110%で推移している。
単価が大幅にアップした要因は、葬儀市場全体に広がっている低価格葬儀には追随せず、「葬儀の大切さをお客様に改めて訴えた」ことなどにある。そこで、コロナ禍が始まってから現在までの施行件数、単価の推移とその要因を中心に、葬儀事業責任者の山田眞義取締役に詳しくお聞きした。

株式会社三輪本店(愛知県名古屋市)

株式会社三輪本店 取締役 山田眞義氏

2021年1月期 “低価格葬儀旋風”に振り回されて単価が1割近くダウン

では、決算期毎に、施行件数と単価の変動要因を中心にお聞きします。まず、21年1月期についてですが、施行件数が前期比103%と伸びている要因からお聞かせください。

山田:コロナが始まり、当初は何をしたらいいのか、本当に右往左往の状態でしたが、まずは感染対策をしっかり行うことから始めました。
感染対策を行ったのは、名古屋市内では一番早かったのではないかと思います。それが可能だったのは、ご存じのように、当社のグループには社会福祉法人、医療法人もありますので、感染対策情報を非常に速く入手することが出来たからです。
具体的には、非接触というところにこだわり、サーマルカメラ、自動手指消毒器は、コロナが始まってすぐの2月の段階で21会館全館に導入しました。翌3月には、ドアノブなどの人の手が触れる箇所にウイルス抗菌シートを張るなど、感染対策をしっかり行いました。

それは早かったですね。

山田:はい。感染対策をしっかり行っただけではお客様には分かりませんので、「感染対策に積極的に取り組んでいますので、安心してご利用いただけます」ということを、新聞折り込みチラシや「のぼり」などで訴えました。
また、いろいろな物品を安く売る「マルシェ」を斎場の駐車場で行いました。マルシェに来たお客様に、感染対策の「のぼり」を見ていただき、さらには館内にご案内して、感染対策をしっかり行っていることを見ていただきました。
当時は、周りの葬儀社でそこまで感染対策を行っているところはなかったこともあり、当社はしっかり感染対策を行っていることをお客様に認知いただけたことが、施行件数103%となった一番の要因と考えております。

感染症対策をチラシで訴求
感染症対策を訴求する「のぼり」

30万~40万円の葬儀は行わない

片や単価は、前期比91%と1割近くダウンした要因は何でしょうか。

山田:低価格葬儀が広がってきた影響が大きいです。葬儀紹介会社の1、2番手が低価格を訴求しており、地元の大手互助会もその2社を活用しています。また、大手専門葬儀社も「式場費込みで33万円で出来ます」ということをTVCMで頻繁に流すようになって、愛知県では低価格葬儀が広がりました。
それに対して当社は、敢えてそれらの低価格葬儀はやりませんでした。今でもやっておりません。
そのために、単価がダウンしてしまいました。

もう少し具体的にご説明いただけますか。

山田:当社は、葬儀紹介会社や大手専門葬儀社が訴求している30万円~40万円のプランは用意していません。
しかし、市場では、30万円~40万円の葬儀を訴求しているところが多いですから、そういうものを希望するお客様も多いわけです。
そういう、ともかく低価格なものをというお客様には、直葬的な安価なプランは当社でも用意していますので、そちらをお勧めしてしまっていました。その結果、単価が余計に落ちてしまったということです。

言葉は良くありませんが、低価格葬儀旋風に振り回されたということですね。

2022年1月期 葬儀の大切さを訴えたことにより単価は前期比プラスに転じる

次に、22年1月期についてお聞きします。21年1月期では前期比91%だった単価は、同102%と一気にプラスに転じました。この要因は何でしょうか。

山田:21年1月期に単価ダウンした要因は、先ほどお話ししましたように、30万円~40万円のプランを用意していないことにあるわけですが、しかし、当社には低価格葬儀を行う考えはありません。
そこで、まもなく創業100年になる葬儀社でもあり、今一度、葬儀というものの大切さを訴えていくことにしました。
具体的には、まず、受注に入る前に、全担当者から、喪主様に次のようなことをお伝えさせていただくようにしました。
1つは、コロナ禍では、病院や高齢者施設でお亡くなりになる方は、ご家族などと面接ができずに寂しい最後であったということ。
2つ目は、亡くなったお祖父ちゃんやお祖母ちゃん、お父さんやお母さんに、生まれた時、七五三、入学式、卒業式、成人式、結婚式など様々な儀式をやってもらったけれども、最後の故人の儀式は、子供や孫たちがやってあげるものだということです。

全担当者がそういう話ができるように、マニュアルを作られたのですか。

山田:幹部が、「こういうお話を、こういう流れで話しましょう」というものを文書でつくり、全社員に配布して勉強会を行いました。
受注の前に全担当者からお伝えするだけでなく、ポスターを作って会館に掲示してお客様の目に入るようにもしました。

記事の全文は月刊仏事 7月号に掲載されています

掲載記事

葬儀
2022.07.14